■2代目DC5はマニアから酷評 中古車相場が初代より約100万円ほど安い
だがファンからは「肥大化してしまった」という旨の意見が続出。その結果として現在も、古い年式である初代DC2/DB8より、新しい年式であるDC5のほうが中古車価格は安いという状況になっている。
両車の具体的な数字を見てみよう。
●初代インテグラタイプR(DC2/DB8)
中古車相場:220万~889万円
平均価格:約282万円
●2代目インテグラ タイプR(DC5)
中古車相場:140万~350万円
平均価格:約180万円
見てのとおり、最高値同士で比べるとDC5のほうが540万円ほど安く、平均価格においてもDC5のほうが約100万円安い。
ただ、上記の数字は「889万円の初代インテグラR」というかなり特殊な1台の中古車が見た目の数字を釣り上げているだけで、実際の価格の開きはそこまでは大きくない。
標準的な諸条件の個体同士で比較し直すと、両者の相場はおおむね下記のとおりとなる。
●標準的なDC2/DB8の中古車相場:260万~440万円
●標準的なDC5の中古車相場:160万~340万円
もちろん何をもって“標準的”とするかは意見が分かれるところだろうが、両者の価格差は「おおむね100万円」であるというのが筆者の見立てだ。
2代目インテグラ タイプRであるDC5は、マニア筋から「重くなった」「曲がりにくくなった」「そのことを2Lエンジンでごまかしてる」等々と評価されてきたせいで、「初代よりおおむね100万円安」の相場に落ち着いているわけだ。
しかし今後、その相場はどうなっていくのだろうか? 現在の比較的手頃な水準をキープし続けるのか、それとも、ネオクラシック系MTスポーツの例に漏れず高騰していくのか?
……未来を正確に予測することなど不可能なわけだが、仮に「歴史に学ぶ」のであれば、2代目インテグラタイプRの中古車相場は今後、じりじり上昇していく可能性が高いと推測される。
その根拠となるのは「996型ポルシェ911の相場的歴史」だ。
ご承知のとおり、往年のポルシェ911はすべて空冷方式の水平対向エンジンを搭載していたが、1997年デビューの996型から水冷方式のフラットシックスに刷新された。
だがその996型の評判はまったく芳しくなかった。
「エンジンがつまらない」「乗り味が乗用車的」「インターミディエイトシャフトにガンを抱えている」等々の風評および事実にさらされたのが、初の水冷911となった996型であり、その不評っぷりはホンダ インテグラ タイプRの2代目であるDC5の比ではなかった。
その結果として996型ポルシェ911の中古車相場は、ポルシェ911という世界的な名車にあるまじき激安相場に陥っていたのだが、ここ最近……実は上昇に転じている。
その後のポルシェ911があまりにも(サイズ的に)大きくなり、あまりにも高度な各種制御が用いられるようになったことで、評価的には最悪に近かった996型が「今にしてみると小ぶりでいいサイズ感じゃない?」「余計な電子制御がなくていいよね」「最新の911と違って“使い切れるパワー”なのもうれしいじゃない!」というニュアンスでまさかの再評価を受け、その中古車相場もまさかの上昇に転じているのだ。
もちろん、これとまったく同じことがDC5型インテグラ タイプRにも起こる100%の保証はない。
だが2LのK20Aエンジンが「珠玉の自然吸気エンジン!」であることは間違いなく、デビュー時は「肥大化した」「曲がりにくくなった」とされたボディおよび車台も、その後のさらに肥大化されまくった車たちと比べれば「小ぶりでシャープなMT車」であることも確かだ。
……となれば、その中古車相場は周囲の電動化や自動化、サイズ的な肥大化が進めば進むほど――じりじりと上昇していくのが、おそらくは歴史の必然なのだ。
もちろん、オンボロな修復歴ありのDC5までが超高値になる未来はないはずだが(ないと信じたい……)、ノーマル基調の良質な個体に関しては、「初代よりもおおむね100万円安い今がチャンス!」と煽っても、決して間違いではない。
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