■身の丈を超えた拡大を目指した
2024年度から新中期経営計画「The Arc(橋渡し)」が発動しました。
3年で100万台の販売回復を目指し、初年度となる2024年度は弾みをつけるべく26万台増加の370万台を計画に置きました。しかし、計画どおりに販売は進みません。在庫は溜まり、値下げを繰り返すうちに計画は破綻に向かいます。
負のサイクルは突然起こったことではありません。2023年度下半期にはすでに悪化しており、投資家向け説明会の場で「本当に大丈夫なのか?」と何度も質疑が交わされました。
「我々の商品と技術には競争力がある。販売は巻き返せる」と根拠に乏しい自信を日産は示し続けてきたのです。
その最中にThe Arcの発表があり、「これは我々の基礎台数だ。3年間で100万台を増販し、2030年の長期ビジョンへ架け橋(Arc)としたい」と内田誠社長は強弁しました。身の丈を越えた拡大を目指したThe Arcは傷を深くしました。現在の日産の混乱は「人災」といって過言ではないのです。
日産は再びターンアラウンド(再建)に取り組むこととなります。
生産能力20%削減(100万台)、人員9000人削減(全体の約8%)の構造改革を2026年度までに実施することを表明しました。
この結果、固定費を3000億円削減、変動費を1000億円削減し、生産350万台でも健全なレベルのキャッシュフローと配当を実現できる体質を構築するとしました。
平たく言えば、生産台数が現状のままでも、営業利益率5%を生み出し、配当を提供できる企業体質を目指すということです。
恐らく構造改革費用2000億円、資産減損3000億円レベルを計上する公算が高いと筆者は見ており、大幅な最終赤字決算を迎えることは自明です。
その成果で、3000億円の固定費を削減する計画です。変動費1000億円は主力6モデルで平均2%の部品コストを削減する考えのようです。サプライヤーは苦難が待ち受けているのです。
生き残るためには避けて通れない痛みです。しかし、日産の経営陣は責任問題と会社がどこを目指していくのかを明確にする必要があります。ルノーから独立した後の2024年の中計は日産の実力を見定め、同社が目指す事業を合理的に再設計する最良のチャンスでした。
しかし、経営判断は真逆の拡大均衡に向かったのです。判断を誤った経営陣への指名責任、執行責任、監査責任を問わずしてこの痛みを受け入れることは、日産社員もステークホルダーも容易でないことでしょう。
25年前、瀕死の日産を再生させた剛腕ゴーンは、自らの挑戦を「日産リバイバル(復活)プラン」と表現し、見事に復活させました。
原発巣を発見できないなかで実施する今回の構造改革は、単なる延命措置にしか見えません。今後「日産サバイバル(延命)プラン」とでも呼ばれるのでしょうか。
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