クラウンだけが孤軍奮闘 ニッポンのFRセダンが凋落した理由

じっくり市場の変化に適合したクラウンと調和を図ったカローラ

ユーザー層が高齢化にシフトし過ぎて危機感を覚えたトヨタは、2003年の12代目をゼロクラウンと称し、抜本的な改革をしながらも魅力を大幅アップさせた

 それに対しトヨタのクラウンとカローラは、常に日本の消費者の思いに目を向け、耳を傾け、大切に育てられてきた歴史がある。

 クラウンは基本的に国内専用車であり、国内市場の状況に適合させやすかったといえる。それでも、優良顧客への配慮を重ねてきた結果、年を重ねるにしたがい所有者の年齢層が高くなり、存亡の危機を危惧した時代がある。

 それでも、いっぺんに方向転換するのではなく、慎重な動きをトヨタは見せた。アスリートと名付けた若い層向けの車種を加え、消費者動向を見極めようとした。

 その結果、より若い年齢層へ広がりを見せつつ、高年齢層でも若々しい気持ちを持つ人がアスリートを選ぶ動きをつかみ、現行のクラウンでは、あえてアスリートやロイヤルといった区分けをやめ、総合性能として走りの壮快さと上質な乗り心地を併せ持つクラウンとして開発された。

 そこには、総合性能を同時に高める技術の進歩や、開発手法の改善が含まれている。時間をかけ、じっくり市場の変化に適合したのが今のクラウンである。

2020年にクラウンは65周年となるが、保守的と思われているが、いろいろチャレンジングな試みをしてきた。しかしユーザーありきの姿勢は崩していない
2020年にクラウンは65周年となるが、保守的と思われているが、いろいろチャレンジングな試みをしてきた。しかしユーザーありきの姿勢は崩していない

 その成果として、販売台数でベスト50の中位に位置し、ベスト50に残る唯一の中型後輪駆動の4ドアセダンという結果がついてきた。

 カローラは、クラウンと対照的に世界戦略車=グローバルカーである。現行のカローラでいよいよ3ナンバー化したが、それでも、5ナンバー車から乗り換える際の不自由を少しでも減らそうと、国内向けにやや小柄な3ナンバー車という独自の車種として導入した。

 そこに、メーカーの目指す方向と消費者の思いの調和をはかろうとした意図が感じられる。

2006年から海外モデルは3ナンバーになったが、先代カローラまで5ナンバーサイズのボディを日本向けに販売。現行で3ナンバー化されたが大型化は極小レベル

クルマ界は非常に高度な産業

 クルマに限らず、どのような商品も販売増を目指している。しかし、ことに高額商品ほど永年愛用してきた優良顧客の思いをないがしろにしたら、衰退するだけだ。いっぽうで、同じものをただ作り続けても飽きられることはある。その塩梅が難しい。

 クルマは、必ずモデルチェンジをしながら顧客との距離感を保ち続ける商品だ。顧客との距離感は、モデルチェンジのたびに試される。そこに企業の都合を強く持ち込んだら、いずれ消費者の心変わりに足をすくわれることになる。

 自社の信念を貫きながら、同時に未来への展望を消費者へ十分に伝えるかたちで進化を新商品へ織り込む。非常に高度な産業であることを忘れてはならない。

現在FRセダンとして独り勝ち状態のクラウンだが、変化させ過ぎて失敗したこともある。自動車メーカーにとってフルモデルチェンジのさじ加減が難しい

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