■セフィーロの不沈に見る「ブランドを継続させる難しさ」
ティアナが実質的な後継モデルにはなったわけですが、それでもとにかく「セフィーロ」というブランドが3代限りで消滅してしまった理由。
それは、根本的には「セダンが売れない時代になったから」という、いつもの理由なのでしょう。
老いも若きも「車といえばとりあえずセダン!」という時代は確かにありました。
しかしそれが終わってしまったならば、似たようなセダンを何種類もラインナップしておく理由はありません。車種を統合して整理するというのが、経営的には当然の判断となります。
しかし今回、痛感したのは「ブランドを継続させることの難しさ」についてでした。
さまざまな“ブランド”が各自動車メーカーから登場し、そして消滅していますが、今現在、健全な形でそこそこ長続きしているブランドは、果たしていくつあるでしょうか?
日産の「スカイライン」やトヨタの「カローラ」はかなり長く続いていますが、それは決して健全な形ではなく、「メーカーが無理やり名前を残している」という気がしないでもありません。
自然な形でそこそこ長く続き、なおかつ常に人気車種であり続けているのは、日産でいうと「エクストレイル」、トヨタなら「ハリアー」、スバルは「インプレッサ」、スズキだと「スイフト」ぐらいでしょうか?
もちろん他にもあるかもしれませんが、話が長くなるのでそこは深追いしません。
上記で挙げたような「長続きするブランド」と、「割とすぐに無くなってしまうブランド」の違いはどこにあるのでしょうか?
その答えは――といっても筆者が考えた仮説にすぎませんが――下記の式で表すことができるはずです。
・ブランド存続=(良ハード+エモさ)×継続
「ハードウェアの出来が良い」というのはブランドが存続するための必要条件ですが、絶対条件ではありません。
その証拠に、2代目、3代目の日産セフィーロは後席居住空間が改善され、走行安定性も向上しましたが、今となっては「ほとんどの人が覚えてすらいない車」と化しています。
ハードの出来が良いことに加え、人間のエモーション(感情、興奮、喜怒哀楽)をかきたてる要素も備えたときに初めて、その車は人の心を引きつける存在になります。2代目、3代目のセフィーロは、ここが大きく欠けていました。
ただ、これでもまだ十分ではありません。その証拠に、日産セフィーロは初代においてエモーション面では大成功し、ハードウェアも決して悪いモノではありませんでしたが、それでも、初代から数えて2世代後には消滅しています。
結局は、「ハードウェアが良い+エモーション成分も高い」というステキな融合体を数世代(最低でも3世代?)にわたって継続できたときに初めて、作り手からもユーザーからも「捨てがたい」「失くしてはならない」「次はさらに愛される存在に育てたい」と本気で思われる“ブランド”が、この世に誕生するのでしょう。
日産セフィーロは「継続」という部分に難があったためブランドにはなり得ず、その名前はアッサリ捨てられました。
しかしそれを責めるのは――つまり、2代目でセフィーロをFFのおやじセダンに転向させたことについて日産を非難するのは、筋違いというものでしょう。ビジネスのため、売上のためには、仕方のない話だったはずです。
というか、そもそも「ブランドを作る」というのは非常に難しい作業です。「ブランド構築なんてできなくて当たり前」「車名なんてコロコロ変わるのが当然」ぐらいに考えておくのが、もしかしたら現実的なのかもしれません。
■日産 セフィーロ(初代)主要諸元
・全長×全幅×全高:4690mm×1695mm×1375mm
・ホイールベース:2670mm
・車重:1320kg
・エンジン:直列6気筒DOHC、1998cc
・最高出力:155ps/6400rpm
・最大トルク:18.8kg-m/5200rpm
・燃費:8.3km/L(10モード)
・価格:236万2000円(88年式スポーツツーリング 4AT)
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