白色のLEDが主流? トンネル内のオレンジ色の照明はなぜ減っているのか?

トンネル照明用ランプの「白色」への進化

32W Hf 蛍光ランプ2灯用プレス形トンネル照明器具。適正照度制御機能付き(PHOTO/首都高速道路)
32W Hf 蛍光ランプ2灯用プレス形トンネル照明器具。適正照度制御機能付き(PHOTO/首都高速道路)

 高速道路のトンネルを照らす照明の色も技術と環境の変化によって次第に変わり始めた。

 まずは1999(平成11)年にナトリウムランプに代わって使われ始めたのが、Hf (高周波点灯専用形)蛍光灯ランプ。光の色も我々が馴染みのある昼光色の蛍光灯に近い青白いようなものだ。

 総合効率はナトリウムランプから約10%向上した一方で耐用期間が1万2000時間(1年半弱:500日)と高圧ナトリウムランプに比べ短いことが難点だった。

 高速道路会社によれば、2000(平成12)年頃には排ガスが1960~1970年代に比べてクリーンになり、オレンジ色のナトリウムランプでなくても不都合はあまり生じなくなり、光がオレンジ色の場合、前述のように赤系統の色が見にくくなる欠点もあったが、蛍光ランプは自然光に近づいたので様々な色の車両でも視認性が改善されたという。

セラミックメタルハライドランプ追跡照明器具(PHOTO/首都高速道路)
セラミックメタルハライドランプ追跡照明器具(PHOTO/首都高速道路)

 技術の進化はさらに続いていく。2009(平成21)年には「セラミックメタルハライドランプ」がトンネル入り口に使われるようになった。

 発光管をセラミック製にして総合効率を25%高めて消費電力を約半分に抑え、耐用期間は2万4000時間(3年弱:1000日)まで延びた。

 なにより、トンネル内を走る車両などが自然光に近い昼間色で視認できるようになったことで、トンネルの内外で視覚に違和感を覚えることを抑えられるようになった。

LED照明の寿命は約9万時間、10年弱という長寿命(PHOTO/首都高速道路)
LED照明の寿命は約9万時間、10年弱という長寿命(PHOTO/首都高速道路)

 さらに2012年頃にはLEDランプの採用が始まった。国土交通省が道路トンネルへLED(正確にはモジュール)による照明を導入するガイドラインを定めたのは、2011(平成23)年のこと。

 当時はLEDの導入はトンネルの中間部(基本照明)のみとされていた。トンネル外部との明暗の差にドライバーの目を慣れさせるために、基本照明の10倍程度の明るさを必要とする出入口部分については採用が見送られていたが、LEDの高出力化が可能になったことから、2015(平成27)年の改訂では出入口部の照明もLED導入の対象となった。

 なお、NEXCO中日本によれば、100%LED採用のトンネルの代表例として挙げられるのは、新東名高速道路の浜松いなさJCT~豊田東JCTとのことだ。

 LEDの総合効率はオレンジ色のナトリウムランプから75%向上、同じ明るさであれば消費電力は約30%で済むとされ、耐用期間は9万時間(10年弱:3750日)と性能は飛躍的に向上した。

 トンネル内部の照明はドライバーの目を慣らせるために入口部を明るく設定しているので、白色の明るいLEDランプであれば調光もしやすいとのことだ。

■トンネル内各照明の寿命
●低圧ナトリウム灯:寿命約9000時間(約1年)/橙黄色
●高圧ナトリウム灯:寿命約2万4000時間(約3年)/橙白色
●Hf蛍光灯:寿命約1万2000時間(1年半弱、500日)/白色
●セラミックメタルハライド灯:2万4000時間(3年弱、1000日)/温白色
●LED灯:寿命約9万時間(10年弱、3750日)/昼白色

白色光が採用されてきた理由

 ところで、前述のHf蛍光灯とセラミックメタルハライド灯の色調はともに「白色」とされているが、実際に見るとやや黄色がかっているのは、明・暗の急激な変化で起こる「ブラックホール現象」などを抑えるためだ。

 この現象は、昼間に自動車の運転者が照明設備の不十分なトンネルに接近しながらトンネル内を見ると、トンネル出口が見えないような長いトンネルではトンネル内の暗さが強く感じられ、トンネルが“暗黒の穴”に見えることを指す。

 このような視覚的な違和感によって、ドライバーがトンネル内の障害物の有無やトンネル内の状況などを知覚することができなくなるとのこと。これを抑えるために、昼間時にトンネル内でも自然光に近い昼光色が求められた。

 首都高速道路では高架部に高圧ナトリウムランプと水銀ランプが使われ、トンネル部は主に蛍光灯とナトリウムランプを使用している。

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