■「200万円前後のちょうどいいクルマ」にフィットしたライズ
そうなると気になるのは、ほかの車種の動向だ。2020年6月における小型/普通車登録台数ランキングの上位を見ると、1位がライズで1万2823台、2位はヤリスの1万967台、3位はカローラシリーズで9311台、4位はフィットの9016台と続く。
これらの納期を販売店に尋ねると、フィットとヤリスハイブリッドは約2カ月、カローラセダン&ツーリングとヤリスのノーマルエンジンは約3カ月だった。ヤリスではノーマルエンジンの納期がハイブリッドよりも長い。
それでもライズの4カ月に比べれば短く、ヤリス、カローラシリーズ、フィットの需要は落ち着いてきた。そうなると今でも受注の多いライズが、小型/普通車の1位を守る可能性もある。
ライズが高い人気を得た背景には、コンパクトSUVというカテゴリーもある。日本の道路環境にはコンパクトな車種が適しており、最近は安全装備や環境性能の向上でクルマの価格も全般的に高まった。ライズも2WDで売れ筋の「G」が189万5000円、上級の「Z」は206万円だ。「C-HR」は1.2Lターボの「2WD・S-T」が240万円、「G-T」は266万5000円に達する。
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従って「200万円前後のクルマが欲しい」という選び方をすると、今はライズがちょうどいい選択だ。しかも流行しているSUVで外観もカッコイイ。ボディの上側はワゴン風の形状だから、後席にも大人が座れて荷室容量も相応に得られる。「コンパクトカーのヤリスやフィットは、実用的で買い得だけど、面白さが乏しい」と感じたユーザーもライズなら満足できる。
■日産の送り出した刺客「キックス」は価格設定の高さが気になる
それならほかのコンパクトSUVはどうなのか。2020年6月に発売された日産「キックス」の受注台数は未定だが、販売店によると「納期は長く2020年7月中旬の契約で納車できるのは12月から2020年1月。ボディカラーによっては2020年2~3月」という。キックスはタイ生産の輸入車だから、生産枠に入らない仕様を注文すると納期が伸びる場合が多い。
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それでもキックスはハイブリッドのe-POWER専用車だから、Xの価格は275万9900円と高い。「Xツートーンインテリアエディション」は286万9900円だ。駆動方式は2WDのみで、ライズの価格を70~90万円上まわる。エクストレイルの2Lノーマルエンジン車と比べても20万円安い程度だから、キックスの登録台数がライズを抜くことは考えにくい。
ただし今後、200~220万円の価格帯にキックスの1.5Lノーマルエンジン搭載車を設定すれば、状況が変わる可能性もある。日産車で最も人気の高い「ノート e-POWER・X」(205万9200円)と同等の価格で、キックスのノーマルエンジン車が買えるとユーザーも増えるだろう。
ちなみにキックスの前身とされる「ジューク」の価格も、1.5Lノーマルエンジンを搭載する2WDが200~220万円だった。ジュークからの乗り替えを考えても、キックスがノーマルエンジンを加えるか否かで売れ行きは大きく変わる。
日産はキックスをe-POWERのみにした理由として「ノートではe-POWERが圧倒的に売れており、開発コストを抑える目的もあって、キックスはe-POWERに限定した」と説明する。
確かにノートではe-POWERの比率が70~80%に達するが、そこには生産を終えた「ティーダ」「ジューク」「デュアリス」、設計の古くなった「キューブ」などからの乗り替え需要も含まれるからだ。これらの車種はいずれもノートより上級に位置付けられ「普通のノートでは物足りないが、e-POWERなら満足できる」と考えるユーザーも多い。しかもノートならe-POWERの価格が200万円少々だから、好調な売れ行きに至った。
しかしキックスの価格は、前述の通り270万円を超える。エクストレイルに近い設定だから、割安なノーマルエンジンを加えない限り、売れ行きがライズを超えるのは難しい。
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