■日産の強みとは? 再生への活路はEVと自動運転
以上のような車種構成とは別に、日産の強みはこの先どのように発揮されていくのが望ましいだろう。
鍵を握るのは、EVと自動運転だ。単にCASE(コネクティビティ/オートノマス=自動運転/シェアリング/エレクトリック)対策というだけでなく、2010年にリーフを発売し、また2019年「プロパイロット2.0」を世界に先駆けて市販した日産の優位性をより明確にする商品の方向性だ。
スカイラインの例でも触れたが、モーター走行になると力強いトルクによる加速性能と、振動や騒音のない上質さを両立することができ、スポーティかつ高級で高品質なクルマを生み出すことができる。軽EVのi-MiEVでさえ、軽自動車という粗さはなく、床下に搭載したバッテリーの重さもよい効果を生んで、高速道路での長距離移動でもゆったりした乗り心地と、静粛性により、登録車のコンパクトカー以上の快適さを感じられるのである。
そのうえで、日産は「初代リーフ」の発売前からフォーアールエナジー社を創立し、EV後のリチウムイオンバッテリーの再利用をすでに事業化している。実証研究などをしているメーカーはほかにもあっても、EVをここまで総合的に活用し尽くす事業計画を持っている自動車メーカーは日産だけなのだ。
一台ごとの商品性や、それらを集合させた車種構成で今後の自動車メーカーの事業を予測することはできない。クルマをいかに万人のために役立て尽くすか、そしてそれが地球環境や資源問題へも適切に関り、総合的に快適かつ安心して人々が暮らせる社会を構築していけるか。そこまでを視野に事業展開できるのは、世界で日産だけに見える。
技術の日産が、135年にわたってエンジン車が築いてきたのとは違う新しいクルマの価値を、EVと自動運転の技術を基にゼロから生み出し、体系づけられるかに未来はかかっている。
大きな赤字を出し厳しい経営状態に直面する日産だが、過去10年で培ってきた日産独自の資源を最大活用する視点で、内田誠社長だけでなく全社員が団結し、独自の目標へ向かって力を出し尽くせるなら、単に何台かの車種が削減され経営は大丈夫なのかと心配するのではない、日産の底力を発揮できると信じる。
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