■軽自動車=スマートフォン? 若者にも受けるワケ そして今後求めらえる一手
そしてクルマの価格は、大雑把にいえば機能と部品点数で決まるから、内容が充実すれば価格も高まる。軽自動車のスーパーハイトワゴンが、「フィット」や「ヤリス」と同等の価格になっても当然だ。
軽好調に売れる背景には、今の若い人達の価値観もある。幼い時から自宅にミニバンがあり、スライドドアに親しんできた。また幼い時から携帯電話やスマートフォンに触れてきたから、コンパクトで高機能な商品を上質あるいは上級ととらえる傾向も見られる。
今の軽自動車とスマートフォンの価値観は極めて似ていて、若い人達を中心に受け入れやすい。スマートフォンは、機能が優れていれば価格が高くても購入される。軽自動車も同様で、もはや価格の安さと小さなサイズは結び付かない。
このほか子育てを終えて、ミニバンからコンパクトな車種に移るユーザーのダウンサイジング需要もある。背の高いミニバンに慣れているから、2列シートでも天井は下げたくない。便利なスライドドアも持ち続けたい。そこでコンパクトカーを検討すると、該当車種はトヨタ「シエンタ」「ルーミー/タンク」とスズキ「ソリオ」程度だ。
ところが軽自動車ならホンダ「N-BOX」、ダイハツ「タント」、スズキ「スペーシア」、日産「ルークス」など豊富にそろう。軽自動車にはスーパーハイトワゴンが豊富で、コンパクトカーよりも用途や好みに合った車種を見つけやすい。
以上のような経緯で、価格がコンパクトカーと同等かそれ以上になる軽自動車のスーパーハイトワゴンが好調に売れている。メーカーにとっても粗利の多い高価格車が売れると都合がいいから、ルーフの低い低価格車にはあまり力を入れない。しかしユーザー本位に考えると、もう少し特別仕様車を追加するなど低価格の軽自動車をアピールすべきだ。
先ほど1990年代後半まで、日本の平均所得はほぼ一貫して上昇傾向にあったと述べたが、それ以降は下落に転じている。直近では少し持ち直したが、今でも20年前の所得水準には戻っていない。
そのいっぽうでクルマの価格は、安全装備が充実してカテゴリーを問わずこの数年間は上昇傾向にある。ダウンサイジングは、所得の伸び悩みと車両価格の上昇で生まれた市場動向でもあり、改めて良品廉価を見直した軽自動車に力を入れると歓迎されるだろう。
初代アルトの登場から約40年、初代ワゴンRから30年弱、初代タントから20年弱、初代N-BOXから約10年が経過した今、コロナ禍による時代背景も受けて、改めて初代アルトのコンセプトが求められている。それこそミニバンのダウンサイジング版とは違う、軽自動車でなければ不可能なクルマ造りだ。
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