改良アダに!? 初代は今の7倍売れたエルグランド
近年のLサイズミニバンで悩ましいのは、売れ行きを好調に保つには、背の高いボディに厚みのある派手なフロントマスクを組み合わせる必要があることだ。
発端は1997年に発売された初代エルグランドだった。存在感の強いフロントマスク、1900mmを超える全高による立派なボディ、後輪駆動による高い床と周囲を見降ろす乗車感覚、豪華な内装などによってヒット作になり、1999年に月平均で約4300台を登録した。
現在のエルグランドに比べて7~8倍の売れ行きを誇った。つまり初代エルグランドも、現在のアルファードも、ミニバンが好調に売れる条件は同じだ。
さらにいえばミドルサイズのセレナも、背が高くフロントマスクに存在感があり、視線は高い。そこにハイブリッドのe-POWERを加えた効果もあって堅調に売れている。
それなのにエルグランドは、現行型になって前輪駆動が採用され、全高を1900mm以下に抑えた。
さらに3列目の床と座面の間隔も不足して、膝の持ち上がった窮屈な座り方になりやすい。荷室の床が高く、背の高い荷物を積みにくい欠点もある。
その結果、売れ行きを下降させた。エルグランドが今後原点回帰のフルモデルチェンジを実施して、これらの欠点を解消させれば、現在よりも売れ行きを伸ばす余地が生まれる。
オデッセイにも同様のことが当てはまる。先ごろのマイナーチェンジでフロントマスクの魅力は増した。次期型では外観をさらに立派に見せて車内にも開放感を与え、安全装備を充実させれば、登録台数は増えるだろう。
アルファードには「王道」で勝てない難しさ
ただし、それだけでアルファードに販売面で対抗できるか、という話になると難しい。Lサイズミニバンで好調に売れる価値観は、前述の「立派で豪華で広くて快適」に集約される。
ほかの価値観を入り込ませる余地がないと、売れ筋路線を突き詰めた車種、つまりアルファードが今後も販売面の絶対王者として君臨するからだ。
最も分かりやすいのは背の高い軽自動車で、売れ筋のN-BOX、スペーシア、タントの価値観はすべて共通だ。この3車種にエアロパーツを装着したカスタムでは、内外装や主な機能は3車でほぼ共通化されている。
そうなると突き詰めたクルマ造りを行うN-BOXが好調に売れる絶対王者になり、ライバル車は販売台数で上まわれない。
販売店の力の入れ方もある。ホンダや日産は10年以上も前に系列を撤廃したから、トヨタ以上に車種間の販売格差が拡大した。
その結果、N-BOX+N-WGN+フィット+フリードの販売台数を合計すると、国内で売られるホンダ車の約70%に達する。日産もデイズ+ルークス+ノート+セレナを合計すると、国内で売られる日産車の66%になる。
アルファードも安泰ではない!? 鍵は“売りやすい車種”依存からの脱却
今のホンダと日産では、一部の軽自動車とコンパクトな車種だけで国内販売が成立しているから、仮にオデッセイやエルグランドが優れた商品に生まれ変わっても、好調に売るのは難しい。
単純な販売力ではなく「売りやすいフリードよりも、売りにくい(しかし1台当たりの粗利は多い)オデッセイを確実に販売する」という戦略を立てないと、台数を伸ばすのは難しい。
その点で系列化が厳格だった時代は、例えばホンダのベルノ店では、軽自動車を販売できなかった。専売車種のインテグラやプレリュードに力を入れ、スポーティカーのカテゴリーに強固な市場を築いた。1台当たりの粗利も高く保たれた。
つまりオデッセイやエルグランドを好調に売るには、少数の販売しやすい車種だけに依存する今の体質まで変えなければならない。全店が全車を扱う今、これは難しい課題だ。
そうなるとアルファードの高人気も、将来的には分からない。トヨタが全店/全車扱いに移行した以上、売れ筋が販売しやすい車種へ次第に偏っていく。
既にクラウンの売れ行きは大幅に下がり、今は先代型のモデル末期と同等の販売状況だ。
オデッセイやエルグランドに「立派で豪華で広くて快適」という要素が必要なのは確かだが、販売戦略が伴わないとアルファードに対抗するのは困難で、この点が最も大切な課題かも知れない。
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