■多人数で乗りたい個人ユーザーにはハイエースの方が人気
パーソナルユーザーの評価はどうか。グランエースなら、家族や友人を乗せて長距離ドライブを快適に楽しめる。外観の存在感もアルファード以上だ。
「一般のお客様は、グランエースを買いません。インパネの質感などは、アルファードやヴェルファイアが高いです。メッキパーツも多く使われています。そしてグランエースは、とにかく大き過ぎます。全長は5mを軽く超えて、全幅も約2mなので、普通の駐車場に入りません」
「一般的に、全長と全幅の大きなレクサスLSなどは、天井が低いです。逆に背の高いアルファードなどは、全長が5m以内です。すべてが大きなグランエースは扱いにくく、多人数で乗りたいお客様は、ハイエースワゴンを購入されます」
ハイエースの場合、乗車定員が10名のワゴンなら、グランドキャビンを除くと全長は4840mm、全幅は1880mmだ。全高は2105mmと高いが、全長はアルファード&ヴェルファイアよりも少し短く、全幅も若干広い程度に収まる。
ハイエースワゴンのエンジンは直列4気筒2.7Lのガソリンで、価格は「DX」が288万6000円、「GL」は311万6000円だ。
620万~650万円のグランエースに比べると大幅に安い。従って特別な豪華さを求めない限り、あるいはワンボックスボディの運転感覚に不満が生じない場合は、ハイエースワゴンが一般的な選択になる。
特に法人ユーザーがビジネスの目的で車両を買う時は、価格が重視される。運転のしやすさ、駐車場所でも有利なサイズを含めて、「多人数で乗りたいお客様は、ハイエースワゴンを購入されます」という販売店のコメントは納得できる。
そのためにハイエースワゴンは売れ行きも堅調で、2020年の月平均は約720台だ(商用車に属するバンを除く)。グランエースに比べると、10倍以上の台数が登録されている。
グランエースをドレスアップするカスタムパーツも登場しているが、いまひとつ人気を高められない。大柄なボディに加えて価格も高く、グランエースを購入してカスタムまで楽しむとすれば、相当な予算が必要だ。
一般的には中古車を買ってドレスアップを楽しむユーザーも多いが、グランエースは設計が新しいから、安価な中古車は存在しない。新車の販売台数も少ないから、数年後に求めやすい中古車が豊富に流通することも考えられない。そうなると必然的にカスタムパーツも登場しにくい。
■大量に売れなくてもグランエースの存在価値は大きい
以上のような事情から、グランエースが大量に売られることはないが、ミニバンの欠点を補う貴重な車種であることも事実だ。
先に述べた通り、Lサイズミニバンとして人気の高いアルファード&ヴェルファイアも、3列目のシートは格納性が重視されて座り心地は意外に安っぽい。
背もたれと座面は柔軟性が乏しく、床と座面の間隔も不足しているから、足を前方へ投げ出す座り方になってしまう。2列目のエグゼクティブパワーシートとは雲泥の差だ。
ほかの車種も含めて、ミニバンは多人数乗車の可能なクルマと認識されながら、実際に快適に座れるのは1/2列目の4名までだ。3列目は「荷室に装着された折り畳み式の補助席」という扱いになる。
そこがグランエースプレミアムなら、2/3列目の4名はエグゼクティブパワーシートに座れて、前席も相応に快適だ。6名全員が不満を感じることなくリラックスして移動できる。
つまり、ミニバンを「多人数が快適に移動できる普通免許で運転可能な乗用車」と定義したなら、そこに当てはまる本当の国産ミニバンは、グランエースのみという見方も成り立つ。
グランエースはほとんど売れていないが、ミニバン王国の日本には不可欠の車種だろう。少々大げさにいえば、センチュリーのような存在だ。
コメント
コメントの使い方