■街なかを走る新エネルギー車は主に公共輸送機関や業務車両が中心
そのようななか、中国政府は2020年6月に、新たに2021年1月より“低燃費車”というカテゴリーを設けることを発表した。そしてこの低燃費車にHEV(ハイブリッド車)が含まれると報道されている。
これでHEVは優遇を受けられることになり、HEVでは強みを見せる日本車勢への“追い風”になるのではないかともいわれているが……。
「日本メーカーの複雑なシステムではなく、すでに欧州サプライヤーやエンジニアリング会社と中国メーカーが組んで、シンプルなものを積極採用する動きを見せており、日本車には必ずしも追い風とはならないとの話が当初は出ていたのですが…」と事情通は話す。
さらに「その後2020年の年末近くになると、中央政府のほうで少し風向きが変わってきたというのです。“日本車の複雑なハイブリッドシステムも侮れないぞ”と……。
数年先には「THSを搭載した中国車なんかが出てくるかもしれませんよ」と事情通は話を締めた。何が何でも、環境負荷低減車の普及を進めるための中央政府の柔軟さは、日本政府も見習うべき点ではなかろうか。
思うように新エネルギー車が普及していない様子は、街なかを走るクルマを見ても明らか。北京や上海、広州など、オートショー取材で訪れた時には、必ず定点ポイントで走っているクルマの様子を筆者は見ている。
新エネルギー車は緑のグラデーションのかかった専用ナンバープレートがついているのだが、意外なほど個人保有車では少ない。タクシーや路線バスは、新エネルギー車への転換が急速に進んでいるのがわかる。
そして、それ以外の新エネルギー車(おもにBEV)は、例えば広州では外装色の白いセダンが目立つ。これはライドシェア車両となるのである。上海あたりでも、地元上海汽車の新エネルギー車のセダンはライドシェア用として使われていることが多かった。
商用車では日本でいうところの、軽バンやハイエースバンクラスの車両はBEV化が進んでいる。要は街なかを走る新エネルギー車は公共輸送機関や業務車両が目立つのである。
ただ、大型、中型などサイズを問わずトラック系はいまだに内燃機関車が多く、抜きんでて電動化が進んでいないように見えるが、今後トラックについては、FCEV(燃料電池車)をメインに新エネルギー車の普及促進を進めていくようである。
■市街地の大気汚染は確実に減少へと向かっている
個人保有の乗用車で目立つ新エネルギー車は、欧州高級ブランドのPHEVやBEVなどが多いのも特徴的。
市場が大きいこともあるのか、新車が2019年では、年間2500万台以上売れているのだが、それでも街なかでは年式の古いクルマも目立っており、代替えがなかなか進んでいないのも、新エネルギー車が少なく見えるのを助長しているようである。
とはいえ、いままでの内燃機関車の環境性能改善に、新エネルギー車の積極導入は効果を発揮している。10年ほど前の広州市では晴天であっても、空はスモッグにより“明るいくもり”くらいにしかならず、すぐ先の風景も霞んで見えることが多く、市内のスモッグ問題は深刻であった。
しかし、数年前から晴天の日は青空が広がるようになった。市街地の様子も大きく変わり、路線バスのBEV化が進んだこともあり、クルマ由来の騒音というものが東京より格段に少なくなり、比較的大声で話す、中国のひとたちの話声のほうが目立ってきたと言ってもいい過ぎではなくなっている。
中国政府としては、環境問題よりは原油輸入量を抑えるほうが主目的であるとも聞いたが、新エネルギー車普及促進は、いまでは内陸部まで広く進み、大気汚染などが劇的に減っていることは間違いない。
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