■高齢化社会でこそ光る存在感
実用性重視の軽自動車スーパーハイトワゴンと、登録車の5ナンバー格ミニバン以外で、上質な移動空間をもたらすミニバンは、アルファード/ヴェルファイア、エルグランドとオデッセイしか残っていない。
経済成長が見込めない今日において、実用性重視のスーパーハイトワゴンや5ナンバー格ミニバンがまず人気を集めている状況はともかくも、贅沢な空間を味わいたい人には、アルファード/ヴェルファイアのようなミニバンが、ストレッチリムジンに替わる存在として高く評価されている実態がある。
またトヨタは、グランエースという、アルファード/ヴェルファイアを超える大きさのミニバンも投入した。
いっぽうで、上質さは求めながら、アルファード/ヴェルファイアでは大きすぎると感じている消費者もあるはずだ。顧客層としては、高齢になりながらもゆとりある暮らしをしながら、孫の送り迎えなどを手伝う元気な人々がいるのではないか。
その世代は、初代オデッセイを経験した人も多いだろう。実際、私の亡き父も、70歳を超えて孫の送り迎えをオデッセイでしていた。
夫婦共働き世帯が増え、子供の習い事などへの送迎に手が回らない両親に代わり、愛車のオデッセイで送って行き、待つ間は読書をし、帰りにはファーストフード店などに立ち寄って孫と楽しいひと時を過ごす。そういう日々を私は見てきた。
たとえばそのような暮らしのなかに、オデッセイは、選択肢のひとつとなるのではないだろうか。またそうした体験を子供たちがすることで、ミニバンの快適さを覚え、自らが運転する時代にミニバンが候補となる可能性は残る。
■オデッセイにしかない魅力
そうした需要を想像しながら、マイナーチェンジを受けたオデッセイを見れば、室内の上質さや高級感を特徴のひとつとしている。アルファード/ヴェルファイアに通じるような、2列目の座席のロングスライドを採り入れ、リムジン感覚で移動することもできる。
また、初代からオデッセイの特徴のひとつとなるのが、3列目の座席を使わないときには折りたたんで床下へ収納できることだ。
荷室を広く使え、左右へ後席を跳ね上げる他社の方式に比べ、重たい座席を床下に収納することで重心が低くなり、走行安定性を損なわずにすむ。背の高いミニバンとはいえ、ふらつきにくく安心して運転できるのが、初代オデッセイからの利点だ。
これに、ホンダセンシングが加われば、高齢者にも安心して運転できるのではないか。
3列目の座席もそれほど窮屈な思いをせずに座っていられるのも、オデッセイのよさといえる。
オデッセイには、市場から消えていった競合ミニバンと違った特徴があり、そのうえでアルファード/ヴェルファイアにも通じるような上質な室内の雰囲気をマイナーチェンジで手に入れたといえるだろう。
それを知る消費者は、まだ限られているのではないか。従来の競合と違った素養を持つオデッセイの魅力をもっと発信すべきだ。
■3代目が凋落のトリガーを引いた!?
それでも、オデッセイがここまで販売に苦しむ要因はどこにあったのか。一番は、3代目で車高を下げ、ミニバン最大の特徴を失ったことだろう。
3代目のオデッセイは、ミニバンでも走りがよいことを目指し、車高を約10cmも低くした。見るからに精悍なミニバンとなったが、それならステーションワゴンでいいのではないか。しかし当時は販売が好調だった。
初代~2代目までのオデッセイ人気と、奇抜さが受けたからだろう。しかし、4代目も同じ路線でモデルチェンジし、販売は落ちた。そして現行の5代目となって、再び車高を戻している。
ハイブリッド車の導入も遅かった。現行の5代目となって3年が過ぎた2016年にようやく選択肢を加えた。競合だったエスティマは、初代プリウスに次ぐ第2弾として2001年に採用している。時代の読み違いがホンダにあった。
そしていまの若い世代にとって、オデッセイという車名が、そもそも頭に浮かばない状態となっているのではないか。これではミニバンが売れないというだけでなく、オデッセイという名前自体が選択肢に入ってこないことになる。
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