人気の高いSUVカテゴリーだが、メーカーはさらに魅力を高めるために商品を日々進化させている。国産SUVはハイブリッドやPHVといったバリエーションを増やすことで、燃費を向上するだけでなくモーターによって動力性能も向上させている。
しかし輸入車だって負けていない。今回はリーズナブルな価格で最新の国産SUVに負けない2台のSUVをご紹介しよう!
文/塩見 智、写真/ベストカー編集部、CITROEN、DS
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■国産車にはない魅力がある輸入SUV
前回、オススメ国産SUVをピックアップする記事を書いたが、今回はそれら売れ筋の国産SUVと迷うのに十分な実力と魅力をもった輸入SUVをピックアップしたい。
国内に自動車メーカーが多数存在し、国産車のラインアップが充実していて、国産車のシェアが他国では考えられないほど高い日本市場において、輸入車が台数で国産車を上回るのは難しい。そもそも販売店の数が国産車とは桁違いに少ないので、仮に同じ実力をもっていても国産車を台数で上回るのは難しい。
それでも長年にわたって輸入車が10%弱とはいえ一定のシェアを確保しているのは、変わり者がいるから……ではなく、国産車にはない魅力をもった輸入車が存在し、価格面で多少不利でも気に入ったクルマに乗りたいという層がいるからだ。
インポーターは日本車の弱い部分を埋められるようなモデルを選んで輸入するため、どうしても日本車がつくりなれていない、あるいはつくるのが苦手な高価格のプレミアムモデルの比率が高くなるのだが、バカ高けりゃよいのは当たり前。
ここでは私シオミが独断と偏見に基づき、“ならでは”の魅力をもったうえで、価格面でも国産SUVと勝負できる輸入SUV2モデルを選んだ。
まず、特に新しいモデルというわけではないのだが、どうしてもピックアップしたいのがシトロエンC5エアクロスSUVだ。ここ数年の間に乗ったなかで最も乗り心地のよいSUVだからだ。
かつてシトロエンといえば、他のメーカーとは異なる技術的アプローチが多く、それを好むマニアックなファンを抱えていた。
代表的なのがハイドロニューマチックサスペンション。内部がゴムで仕切られた球体に窒素ガスとオイルを封入し、窒素ガスに金属スプリングの、オイルにダンパーの役割をそれぞれもたせた変態サスペンションだ。
路面からの大小あらゆる入力を受け止めていなし、極上の乗り心地をもたらすとして評価が高かったが、コストがかかるため、合理化の名のもとに廃止された。
廃止以来、シトロエンは凡百のクルマ同様、金属スプリングと油圧ダンパーを用いた標準的サスペンション採用を余儀なくされていたが、2019年に日本導入されたC5エアクロスSUVには、ハイドロニューマチックサスを用いた往年のシトロエンを思わせるマジック・カーペット・ライドが備わっていた。
ハイドロが帰ってきた! だれもがそう考えた(若者を除く)。
実際には標準的サスペンションを採用するものの、そのダンパー内にセカンダリーダンパーを仕込み、ストロークが進むに連れてそのセカンダリーダンパーが機能し、バンプストッパーの効果を発揮するPHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)なる機構が採用されていたのだった。
揺れを否定せず、終始穏やかで角を丸めた乗り心地は、路面からの入力をできるだけ早く収束させることをよしとする主流の設計思想とは異なるため、必ずしも万人受けするとは限らないが、往年のハイドロシトロエンが好きだという変態、もといクルマ好きにはたまらなく懐かしい挙動のはずだ。
サスに加え、高密度のポリウレタンフォームを用いて開発したシートも快適性に貢献している。とにかく乗り心地至上主義のSUVなのだ。
エンジンは2リッター直4ディーゼルターボと1.6リッター直4ガソリンターボの2種類。より力強いのでディーゼルのほうがオススメだが、ガソリンもありっちゃあり。好みで選んで問題なし。全車に車線中央維持機能付きの全車速対応アダプティブ・クルーズ・コントロールが備わるなど、装備も抜かりない。
もう他のすべての我慢して乗り心地のためにシトロエンを選ぶ時代は終わった。普通に選んでまったく問題なし。価格は415万円から。
■芸術の国フランスが電気自動車を作るとこうなる!?
まったくの偶然だが、フランス車が続くことをお許し願いたい。電気自動車のDS3クロスバックE-TENSEも、国産SUVにない魅力をもっている。電気自動車なんかに興味はないという素振りを見せていた(ように私個人には見えた)フランス人も、実はちゃっかり開発していたのだ。
それもそのはずで、今後日本よりも燃費規制が厳しくなっていくEUのメーカーの場合、電気自動車をはじめとする電動車をもっていないと売るクルマがなくなってしまうのだから。
グループPSAの新世代プラットフォームであるCMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)を用いて開発されたモデルで、50kWhのリチウムイオンバッテリーを積む。
日産リーフには40kWhと62kWh版があるが、DS3はその中間の容量を載せてきた。一充電で走行可能な距離はカタログ上は320km(WLTCモード)。実質的にはその8掛けと考えて250km前後だろう。
パワーは十分あるが、発進時のトルク感は電気自動車のなかでは穏やかなほうだ。62kWh版をもってこられたらリーフのほうが速い。といっても同じような価格帯の内燃機関車よりはいかなる場面でもずっと力強いから問題なし。
上級のグランドシックが534万円、ベーシックなソーシックが499万円。418.99万円のリーフG40kWh版や499.84万円の同62kWh版と迷う価格設定だ。ただし内外装の華やかさ、仕立てのよさがリーフと決定的に異なる。はっきり言ってDS3の圧勝だ。
例えば内装に大真面目にアール・デコ調のデザインを取り入れている。センターコンソールのATセレクターの両脇にあるパワーウインドウのスイッチは、高級腕時計の文字盤などで見かけるクルドパリ(細かい菱模様の凹凸をつけることで、光の反射で見づらくなるのを防ぐ手法)のようなデザインだ。
同じようなスイッチが並んでいて、覚えるまでははっきり言って使いにくい。でもカッコいい。
ファブリックとナッパレザーを組み合わせた内装の質感が高く、同価格帯のクルマのなかではダントツの高級感がある。ジャージでコンビニまで乗るのがはばかられるくらいオシャレ。リーフは量産電気自動車のパイオニアだけあって優れた性能をもつが、色気がない。
これまで輸入電気自動車はおいそれとは手が出ない1000万円級のモデルしかなかったが、400万〜500万円の“買える”電気自動車の選択肢が登場したのは喜ばしい。