■ETC2.0装着の「メリット」とその実態とは
これらの、いわゆる「メリット」を検証してみよう。
まず双方向通信だが、国土交通省は、「1000km先の交通情報まで受け取れる」と胸を張る。
しかし実態としては、1000km先の交通情報を受け取ったところで、メリットのある人は多くはない。
逆に、ETC2.0&対応ナビを装着していると、高速道路を走行中、無闇やたらに遠隔地の交通情報が自動的に表示され、煩わしい。しかも、新しい情報を受け取るたびに「ポーン」というお知らせ音が鳴る。何かと思ってナビを見ると、国交省自慢の遠隔地の無意味な交通情報。しかもその内容は、ただ「順調」とかいったもので、個人的には、いつも腹を立てている。
私は、ETC2.0装着車でロングドライブをするたびに、「このお知らせをなんとか止められないか」と真剣に思う。しかしいまのところ、止め方を見つけられていない。
ETC2.0は、対応ナビを通じて、より詳細な交通情報を得られ、渋滞回避ルートも表示されるとなっているが、グーグルマップなどのスマホナビに比べたら、反応の速さ、案内の綿密さなど、あらゆる面で劣っている。
ETC2.0には、全国のSAPAに存在する「ITSスポット」に停車してナビを操作すると、ETC2.0を通じて付近の観光情報などが閲覧できるというメリットもあるのだが、実際にこれを使ってみると、噴飯ものである。
内容は驚くほど貧しく、しかも通信速度が猛烈に遅い。スマホを使い慣れた者なら誰でも、開いた口がふさがらなくなる。
■ETC2.0はすでに時代遅れ?役所が機能の更新に取り組まないワケとは?
いったいなぜこんなことになったのか?
理由は単純明快で、システムの設計が古いまま進化していないからだ。もちろん通信速度も。
国交省のITS計画が始まったのは1994年。ETC2.0の構想もその頃持ち上がった。それが2009年から徐々に実現していったわけだが、その少し前、2007年に恐るべきライバルが出現していた。
その名は「アイフォーン(iPhone)」である。
そして、ちょうどETC2.0の本格稼働あたりから、アイフォーンを含むスマホ全般が猛烈な勢いでポピュラーになり、物凄い勢いで進化していったことは、皆様ご存じのとおりだ。この進化ぶりを予想できた者は誰もいない。せいぜいスティーブ・ジョブスくらいでしょうか?
つまり、この点に関して国交省を責めるのは酷だが、ETC2.0の情報取得機能が、完全に置き去りにされていることは確かである。
続いてのメリットは、「圏央道2割引」である。これは、圏央道をよく利用するドライバーにとっては確実にメリットだ。
実は、ETC2.0の直近の利用率は、中型車以上に限ればなんと6割を超えていて、これが全体の利用率を押し上げている。
トラックは圏央道の利用頻度が高い。圏央道沿道には物流拠点も多数ある。大型車や特大車なら、経路によってはすぐに元が取れる。しかし、圏央道をあまり使わない乗用車のドライバーにはメリットはない。
ETC2.0を選ぶか否かは、今のところ、この一点にかかっている。圏央道をある程度利用するなら付けた方が得だし、使用しないなら付ける意味はない。
もうひとつ、高速道路の一時退出が可能というのもあるが、今のところ可能なのは、全国にわずか23か所の道の駅に立ち寄る場合のみ。しかもメリットは、ターミナルチャージに限れば、1回あたり150円+消費税だ。
ETC2.0は、通信料等はかからないが、スタンダードなETCと比べると、取り付け時の費用が約1万円違う。付け替えとなると、工賃を含めて3万円近くかかる。その差を取り返すことができるのは、ごくわずかなドライバーだけだろう。
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