■ホンダ初代NSX
初代NSXは90年代を代表するスポーツカーとして、21世紀の今日でも高く評価されてるクルマだ。
まず、それまで大量生産のスポーツカーにしか手を出さなかった日本のメーカーが、初めて本格的な少量生産車に取り組んだ点に意義がある。
フェラーリ並の手造りとまではいかないが、当時の国産車の常識からするとNSXは実に手のかかった造り。量産車としては史上初といっていいアルミモノコックボディも、軽さと高剛性を両立させたきわめて品質の高いものだった。
また、スーパーカーといえば扱いづらく実用性皆無という常識を打破して、超高性能ながら人に優しいクルマを目指したのもホンダらしい。
たとえば、パワフルだがクルージング状態では驚くほど静かな室内は従来のスーパーカーとは一線を画すものだし、ハンドリングもまさに“オン・ザ・レール”そのものの扱いやすさ。素晴らしい能力を持ったサラブレッドだけれど、コイツは決して人に噛みついたりしない躾のよい名馬だったのだ。
これだけの高性能を、VTECとアルミボディというハイテクを駆使することで、「たった」3Lで実現した点も見事。レジェンド用C27Aをベースにボア・ストロークとも3mm拡大したC30Bは、リッターあたり94psの280ps/7300rpmを発揮。
コストに糸目をつけずにチタンコンロッドまで導入しただけあって、高回転パワーは現在のレベルでも快感だ。
こんなクルマが1990年にデビューしてるってのは、やっぱりちょっと驚きというよりほかにないといえますね。
■マツダ(FD3S型)RX-7
マツダはシャシー性能やハンドリング特性へこだわりが強いメーカーと認識されているが、そのルーツは歴代RX-7の開発/熟成にある。
ふつう国産車の場合、マイチェンでボディは変えても走りはあまりいじらないものだが、RX-7に関してはそれがまったく逆。
スポーツカーとしてベストなハンドリングを求めて、外観が変わらなくてもどんどん足まわりが改良されてゆくという伝統があった。
1991年に登場した三代目RX-7(FD3S)は、この“フットワーク重視”の伝統が生んだひとつの理想形として、今日でも高く評価されるスポーツカーだ。
初代、二代目と、足まわりを徹底的にいじりまわしたRX-7開発チームは、その蓄積したノウハウを思いきり三代目に注ぎ込んだ。
比類ない高剛性を実現しつつ徹底的に軽量化したボディ。オールアルミ製アームの4輪ダブルウィッシュボーン。駆動系の剛性をたかめるパワープラントフレームなどなど。
重量増を嫌って従来どおりの13Bを使いながらも、シーケンシャルツインターボ化によるパワーアップで、パワーウェイトレシオは5kg/psを切る俊足。まさに、「走りにこだわるミドル級」の面目躍如たる本格スポーツカーに仕上がっていたのである。
スポーツカーの神髄はミドル級にあり。俊敏な走りでこれを自ら証明したのが、この三代目RX-7の魅力だったのでございます。
■三菱GTO
バブルというのは恐ろしいもので、三菱ですらスーパースポーツに手を出してしまう。
1990年にデビューしたGTOは、ディアマンテのプラットフォームを使った横置きFFベースの4WD。それゆえ、たとえばNSXやR32GT-Rみたいなサラブレッドと比べると、レイアウトにかなりの制約がある。
それは、たとえばエンジンでいえば前後に遠く離れたターボレイアウトだし、225/50VR16のタイヤを収めるために広がった1840mmの車幅、そしてまた1700kgという車重。スポーツカーにとって不利な要素をいくつも持っている。
しかし、6G72型24バルブV6ツインターボは、そういったネガを全部ひっくり返してお釣りがくるほどにパワフルだった。
カタログパワーは自主規制の関係で280psだが、42.5kgmというトルクは当時国産最強。地の底から湧き出すようなとてつもないトルク、これがGTOの走りの特徴だった。
また、車重1.7トンという重量級だから走りに軽快感があるとは言い難いが、前45:後55の不等比トルク配分を採用した4WDシステムによって、スタビリティとハンドリングは意外なほど高次元で両立している。
のちに、中谷明彦選手によってGTOはスーパー耐久で大活躍するのだが、鈍重なイメージとは裏腹にそのポテンシャルは最初からかなり高かったわけだ。
三菱の持てるすべての技術を結集したスーパースポーツ4WD。エボより先にそれを体現していたのがGTOだったといえるかもしれませんね。
コメント
コメントの使い方