■欧州での発表から1年以上……日本導入に時間がかかった要因は?
それにしても新型ゴルフ、なぜこれほど導入に時間が掛かったのか。考えられる最大の理由は世界的なコロナ禍によるものだ。特に欧州では厳しいロックダウンが相次ぎ、調達や生産のスケジュールが大幅に狂ったことは想像に難くない。
そしてもうひとつの理由と目されるのが、仕向け適合作業の難航だろう。新型ゴルフの最も大きな進化のポイントはデジタライズにあり、ナビやエンターテインメント、空調や各種設定などは「イノビジョン」と呼ばれるセンターのタッチパネルモニターに統合。階層の深いコマンドも含めて、AIボイスコントロールが担う領域が広げられている。
要はメルセデスでいうところの「MBUX」、BMWでいうところの「インテリジェントパーソナルアシスタンス」がVWにも採用されたということだが、固有名詞を含む地図連動などもあり、この日本語環境構築が相当に手間であることは想像に難くない。
一方で、今後のVWの新型車はこの新型ゴルフと同じ電子アーキテクチャーを使うことは間違いなく、システムをきちんと走らせられるか否かはほかのモデルの展開にも関わってくる。
実際、僕も新型ゴルフが路上テストを行う姿は昨春頃から頻繁に見掛けており、近頃はエンブレムなどのカモフラージュもなく丸裸で走る姿を目撃した。発売に向けての具体的な動きが始まったということは、こういった関係者の労が日の目を見る、その目処が立ったということだろう。
■気になるグレード展開や進化など8代目「ゴルフ」の注目点とは!?
新型ゴルフのグレード展開はベーシックな「スタイル」、装備充実の「アクティブ」、スポーティな「Rライン」の3つとなる。
搭載されるエンジンは、スタイルが1L 3気筒直噴ターボ、アクティブとRラインは1.5L 4気筒直噴ターボ。いずれも48Vマイルドハイブリッドシステムが組み込まれた「eTSI」となる。組み合わせられるミッションは恐らく7速DSGとなるだろう。
エンジン本体は1Lが『Tクロス』に、1.5Lが『ポロRライン』に搭載され、すでに日本でも展開されているものがベースだ。マイルドハイブリッドシステムはベルトドリブンのスタータージェネレーターが低速域のパワーアシストや高速域でのコースティングにも積極的に関与する仕組みで、約10%の燃費改善効果が期待できるとVWは発表している。ちなみに1.5Lの側には気筒休止システムも採用されているのが特徴だ。
新型ゴルフのプラットフォームは最新世代の『MQB』で、グリーンハウスをみればおわかりのとおり、基本的には7代目の車台を熟成している。さかのぼれば5代目から6代目へのフルモデルチェンジがこれに相当するものだった。ゆえに、寸法や重量的なところも7代目と大差ないところに収まるはずだ。
海外での試乗会で乗ることができたのは、アクティブやRラインに相当する1.5 eTSI搭載モデルだったが、動力性能についてはまったく申し分ない。スタータージェネレーターの連携は至極スムーズで、コースティングからの再始動時もまったく違和感を伝えてこなかった。ちなみに新型ゴルフは全車電動ブレーキブースターを採用している。
このモーターアシストの塩梅と、Tクロスの動力性能を脳内で組み合わせながら推するに、1.0 eTSIの走りは7代目の1.2L 4気筒のそれにほど近いところに達していると思う。
ちなみにマイルドハイブリッドなしの1.0 TSIは0〜100km/h加速は10.2秒、最高速は202km/hと発表されているが、1.0 eTSIはこれにモーターアシストが加わるぶん、発進からの加速も快活になるだろう。3気筒ゆえの雑味については4気筒に遜色なしとは言わずとも、そもそもこのエンジンはバランサーレスながら振動をしっかり封じた設計となっている。仕上がりは未知数ながら悲観することはないはずだ。
ハンドリングなどのダイナミクスについては、可変ダンパーとESP、電子制御LSDを連携させてアジリティとの高次元での両立を目指した新しいシャシー制御技術「ドライビングダイナミクスマネジャー」の採用がポイントとなるが、こちらが搭載される可能性があるのはRラインということになるだろう。
ライドフィールについては正直なところ、上出来だった前型のゴルフから長足の進歩は感じられなかったが、1年半の時を経て熟成が進んでいる可能性も充分考えられる。
ADASについても車車間通信などが日本仕様に反映されるかは不明だが、アダプティブクルーズコントロールとアクティブレーンキープアシストの応答精度は大幅に向上、ドライブサポートの快適性は確実に高められている。
日本での価格はまったく不明ながら、ADASやインフォテインメントなどの装備更新、マイルドハイブリッド化、欧州価格などを鑑みれば、260万円余だった前型のスタートプライスと同等以下になることはかなり難しいだろう。エントリーモデルとなる『1.0 eTSIスタイル』が300万円という一線にどれだけ寄せられるかがポイントとなりそうだ。
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