■初代タントは元祖スーパーハイトワゴンで大注目!
過去を振り返ると、初代タントはスーパーハイトワゴンの先駆けだった。2003年に発売され、全高が1700mmを超えるボディにより、広い室内が注目された。
2代目タントは2007年に発売され、左側にミラクルオープンドアを採用した。左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させ、前後両方ともに開くと開口幅がワイドに広がった。右側は前後に横開き式ドアを装着しており、左右非対称のボディであった。
3代目は2013年に登場して、左側は2代目と同じくピラー内蔵型のミラクルオープンドアだが、右側は通常のピラーを備えるスライドドアに発展した。
このようにタントは、初代モデルが1700mmを超える全高で注目され、2代目はミラクルオープンドア、3代目は右側をスライドドアに変更して使い勝手を向上させた。各世代がユーザーにとってメリットのわかりやすい進化を遂げてきた。
■現行モデルはセールポイントがわかりにくい!?
ところが2019年に発売された4代目の現行タントは、従来型のようなわかりやすい進化が見られない。4代目は右側もピラー内蔵型のミラクルオープンドアに進化するのか!? と期待したが、さすがにボディ剛性や衝突安全性を確保する上で無理だった。
そこで現行タントは、主力グレードの運転席に、540mmの長いスライド機能を採用した。子育て世代のユーザーが、助手席を予め前側にスライドさせて足元空間を広げておくと、ワイドなミラクルオープンドアを使ってベビーカーを抱えたまま車内に入れる。
その後、広いスペースで子供を後席のチャイルドシートに座らせる。さらに運転席を後方にスライドさせておけば、降車せずに運転席まで移動できるわけだ。このように現行型では、左側のミラクルオープンドアから乗車して、運転席に移る導線を確立させた。
ただしこれはわかりにくい地味な機能で、すべてのユーザーにとって必要ともいえない。そこでタントは売れゆきが伸び悩んだ。
■ライバル車の2モデルは売れるだけの理由がある
一方、ライバル車には売れる理由が多い。N-BOXは先代型で好調に売れる手応えを得たから、2017年に登場した現行型では、インパネなど内装の質を高めた。シートの座り心地も柔軟になり、乗り心地にもいい効果を与えている。
好調な販売を前提に多額の開発コストを費やして、車両全体の雰囲気も華やかになった。
さらに先進運転支援装備のホンダセンシングを採用して、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなども使えるようになった。このように内外装、乗り心地、静粛性、先進装備と幅広く充実させたから、2017年以降は、N-BOXが小型/普通車を含めた国内販売の総合1位になっている。
N-BOXが好調に売れた背景には、豊富な乗り替え需要もあった。ホンダでは、オデッセイからステップワゴン、さらにフリード、N-BOXという小さな車種に乗り替える流れが築かれ、N-BOXが好調に売れた。
その代わりミドルサイズ以上の小型/普通車は売れゆきを下げている。2020年には国内で売られたホンダ車の32%をN-BOXが占めて、軽自動車全体になると53%に達した。フィットとフリードまで加えると約70%だ。
要はホンダのなかでダウンサイジングが進んだ結果、最後に行き着いた車種がN-BOXであった。そのためにN-BOXが好調に売れても、価格の高いステップワゴンやオデッセイが低調だから、ホンダとしては嬉しくない。
販売店からは「N-BOXにはあまり力を入れていない」という話が聞かれ、N-BOXを3月決算期におけるキャンペーンの対象外にしている販売会社も多い。購入する時には相応の条件を提示するが、敢えて多く売ろうとはしていない。それでも大量に販売されて、タントに圧勝しているわけだ。
スズキのスペーシアは標準ボディとカスタムに加えて、SUV風の「スペーシア ギア」を用意したことが利いている。2020年の軽自動車届け出台数は、N-BOXに続く2位だが、タントとの台数差は1年を通じて1万台少々だ。
仮にスペーシアにギアがなかったら、タントが2位に入ったかも知れない。スズキはSUV人気を巧みに利用して、スペーシアの売れゆきを伸ばした。
コメント
コメントの使い方