なぜトヨタ圧勝!? 日本の登録車市場で完全独占体制に入っている事情

■日産やホンダが軽にシフトし、シェアを落とす中で伏兵あらわる!!

 ここまで軽自動車が売れると、販売店も登録車の販売促進に力を入れにくく、売れ行きを下げた。2020年におけるホンダの登録台数は、2010年の60%に過ぎない。ホンダの販売総数が減る中で、軽自動車比率が増えたから、登録車は激減した。これもトヨタ車のシェアが高まった理由だ。

 日産も同様で、2010年の国内販売に占める軽自動車比率は23%だったが、2020年には『デイズ』や『ルークス』が好調で43%に達した。そうなると登録車の売れ行きは下がり、2020年の日産の登録台数は、2010年の53%まで下がった。日産はこの10年間に国内販売総数を下げて、2020年は2010年の73%だ。この中で軽自動車比率が23%から43%に増えたため、登録車は半減した。

 2020年と2010年を比べると、ほかのメーカーも売れ行きを下げた。マツダでは2020年の登録台数は2010年の81%で、スカイアクティブ技術+魂動デザインの時代に入ってから売れ行きを下げている。三菱も2020年の登録台数は2010年の40%と激しく落ち込んだ。

 このような状態だから、2020年のトヨタの登録台数自体は、2010年に比べて10万台以上減ったのに、登録車市場のシェアは2010年の48%から51%に増えた。

 ただし、すべての日本車メーカーが登録車を減らしたわけではない。2020年におけるスバルの登録台数は、2010年に比べて7%増えた。その代わりスバルでは軽自動車が減った。2010年の時点では、『ステラ』など一部の軽自動車はスバルが自社生産して約10万台を届け出したが、2020年はすべてダイハツ製のOEM車になって約2万台となった。

 スズキの動向も注目される。2010年の登録台数は5万8000台だったが、2020年は10万7000台だから2倍近くまで増えた。スバルの登録台数となる8万5000台を上まわる。

 スズキは軽自動車税の増税などによって軽自動車規格の将来に危機感を抱き、2015年に発表した中期経営計画では、登録台数を10万台以上に増やす目的を掲げた。これを2016年には達成して、それ以来、スズキの登録台数は2020年を含めて10万台を上まわる。

 ダイハツはトヨタの完全子会社になったこともあって、軽自動車に力を入れるが、それでも2020年には5万6000台を登録した。2010年の5800台に比べると、約10倍に増えた。

トヨタ『ルーミー』のガチ対抗車であるスズキ『ソリオ』が2020年フルモデルチェンジ。堅調に売れており、スズキの登録車のシェアUPに貢献した
トヨタ『ルーミー』のガチ対抗車であるスズキ『ソリオ』が2020年フルモデルチェンジ。堅調に売れており、スズキの登録車のシェアUPに貢献した

■トヨタ一強がもたらす国内市場の弱体化……このままでいいのか!?

 以上のようにかつて登録車が中心だったホンダと日産は軽自動車比率を高め、逆に軽自動車が主力のスズキとダイハツは登録車に力を入れる。そしてこれらのメーカーの登録台数をトータルで見ると、スズキやダイハツの伸びよりもホンダや日産の落ち込みが大きいから、トヨタのシェアが増えた。

 そして2020年のメーカー別新車販売順位は、1位がトヨタ、2位は史上初でスズキが勝ち取った。3位はホンダ、4位はダイハツ、5位は日産と続く。

 さらに直近となる2021年1~2月の累計では、ダイハツがホンダを抜いて3位に浮上した。今の国内販売は、トヨタ/スズキ/ダイハツ/ホンダ/日産/マツダ/スバル/三菱の順番だ。スズキとダイハツが軽自動車を中心に据えつつ、登録車にも力を入れて2位と3位に喰い込んだ。

 つまりホンダと日産は、今さらながら粗利の少ない軽自動車人気に振り回されて登録台数を下げたのに、スズキとダイハツは冷静に対処して、登録台数と国内販売総数を上乗せしてきた。

 この差は国内市場に対する分析力と商品開発力の違いに基づくが、ユーザーにとって、登録車市場におけるホンダと日産の弱体化はマイナスに作用する。国内で売られる登録車の商品力や車種数が悪影響を受けるからだ。

日本国内で言えば軽自動車の老舗スズキ。しかしクルマのグローバル化の中、軽の枠にとらわれない小型車の開発を進めてきた結果、日本国内でもスズキの登録車が着実に浸透しつつある
日本国内で言えば軽自動車の老舗スズキ。しかしクルマのグローバル化の中、軽の枠にとらわれない小型車の開発を進めてきた結果、日本国内でもスズキの登録車が着実に浸透しつつある

 ホンダの場合、軽自動車の届け出台数に、『フィット』と『フリード』の登録台数を加えると、2020年に国内で売られたホンダ車の70%を超えてしまう。ほかのホンダの登録車は、『ヴェゼル』も含めて残りの30%に片付けられるので、開発と販売に力が入らない。例えば『アコード』は、北米で登場してから2年半も経過して日本で発売され、それまでは安全性の劣る旧型を売っていた。日本のメーカーがこのような商品開発をすることになってしまう。

 日産からは、今後は国内販売に力を入れる趣旨の話も聞かれるが、北米で『ローグ』を発表したのに日本仕様の『エクストレイル』は旧型の状態が続く。トヨタの一強が長引くと、他メーカーの登録車開発も滞りやすくなる。

日産は2021年秋に、エクストレイルの新型を国内に投入予定だ。従来のハイブリットからe-POWERへ進化させ、販売好調なトヨタSUVの牙城に挑む!!
日産は2021年秋に、エクストレイルの新型を国内に投入予定だ。従来のハイブリットからe-POWERへ進化させ、販売好調なトヨタSUVの牙城に挑む!!

 そしてこの状態は、トヨタにとってもプラスにならない。競争関係が薄れ、緊張感も弱まるからだ。かつてホンダや日産がミニバンを次々とヒットさせた時代には、トヨタはホンダ『ストリーム』に『ウィッシュ』、日産『エルグランド』には『アルファード』、ホンダ『モビリオ』には『シエンタ』という具合に、次々と対抗車種を送り込んだ。

 その結果、ミニバン市場は活性化して、ホンダはミニバンの低床技術を必死に進化させた。ホンダはトヨタに鍛えられたのだ。それが今はトヨタは登録車、他メーカーは軽自動車という区分ができて、お互いの競争関係と緊張感が薄れた。国内販売も低迷が続く。

 今のままでは、事態はますます悪化する。ホンダと日産は、国内で売る登録車に本気で取り組んで欲しい。

【画像ギャラリー】トヨタ強し!! 2021年2月の国内販売ベスト10車はコチラ!!

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