■爆発的にヒットした先代ノートの功績
開発者は「先代型でe-POWER比率が75%前後に達したから、新型ではNAエンジンを廃止した」というが、逆の見方をすれば約25%はNAエンジンが占めていた。
ノート全体の登録台数が1か月平均で1万台とすれば、e-POWERは7500台、NAエンジンは2500台だ。そうなると2021年1月の登録台数は約7500台だから、仮に新型ノートにNAエンジンが用意されていれば、1万台に達した可能性もある。
開発者は「新型ノートの高品質は、価格が200万円を超えるe-POWERのみだから実現できた。150万~160万円のNAエンジン車があると、ここまで上質な造り込みは困難だ。e-POWERとNAエンジン車で、インパネを作り変える必要も生じる」という。
いわゆる選択と集中で、e-POWERのみにしたが、コンパクトカーでは低価格車を求めるユーザーも多い。NAエンジンを用意しないと販売面では不利になる。
また2017年や2018年と今では、ノートの置かれた状況も違う。当時はコンパクトカーのティーダが廃止され、キューブも設計が古く、5ナンバーセダンのブルーバードシルフィは3ナンバー車のシルフィに発展していた。
上質な5ナンバー車を好むユーザーにとって、NAエンジンのノートでは物足りない印象があり、乗り替えるコンパクトな日産車が見つからずに困っていた。
その時、ノートにe-POWERが追加された。e-POWERなら走りが滑らかで動力性能も高い。アクセルペダルだけで速度を自由に調節できる新鮮さも味わえる。「これなら乗り替えてもいい」という反応があり、先代ノートはe-POWERの設定により売れ行きを伸ばした。
ただし現時点では、先代ノートe-POWERが好調に売れてから、3~4年しか経過していない。まだ乗り替え時期に来ていないわけだ。加えて2020年にはコンパクトSUVのキックスも発売され、軽自動車では2019年にデイズ、2020年にはルークスも新型になっている。
販売店からは「ノートのNAエンジン車を使っていたお客様で、予算が限られる場合、同程度の価格で購入可能なデイズやルークスに乗り替えられている」という話も聞かれる。
マーチでは魅力が乏しいが、デイズとルークスなら車内も広く、内装も上質で先進的な衝突被害軽減ブレーキやプロパイロットも用意される。軽自動車ではあるが、先代ノートのユーザーが乗り替えても満足できる。つまりデイズとルークスも、新型ノートにとって、販売面ではライバルだ。
このほか前述の通り2020年2月にヤリスと現行フィットが登場したことも、ノートの売れ行きに影響を与えた。
■プロパイロットはXグレードのみのオプション設定
ノートの商品力については、オプションの選びにくさもある。ヤリスやフィットでは、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどの運転支援機能は標準装着されるが、ノートのプロパイロットはオプション設定だ。
しかもプロパイロットを選べるグレードはXのみで、複数の装備を一緒に装着するセットオプションに含まれるから、プロパイロットを付けると価格が42万200円の上乗せになってしまう。
ヘッドランプも標準装着されるのはハロゲンで、LEDは、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を防ぐアダプティブ機能を含めて9万9000円だ。この2つのオプションをX(218万6800円)に加えると、総額は270万6000円に達する。
ヤリスハイブリッドZ(229万5000円)に同程度の装備をオプションで加えた場合は、総額が約246万円だ。フィットe:HEVホーム(206万8000円)の場合は、装備を同等にして約238万円になる。270万円を超えるノートXは、機能は充実するが選びにくい。
そのためにプロパイロットは人気の高い装備なのに、ノートでは装着比率が41%に留まる。
今後ノートの売れ行きが落ち着くと、プロパイロットやLEDヘッドランプなど、人気の装備を標準装着して価格を250万円前後に抑えた特別仕様車を設定するだろう。そうなるとノートの売れ行きは今以上に活性化するだろう。
ノートはNAエンジンを用意しないもものの、加速性能、静粛性、走行安定性、乗り心地、質感の優れた魅力的なコンパクトカーだ。これからも価格を含めて、商品力を進化させてほしいものだ。
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