■タフトは『ハスラーキラー』として開発されたわけではない!?
購入者のなかには、この2台で悩んだ末にどちらかを選んだ人もいることだろう。
ただし、同じ軽クロスオーバーSUVとはいえ、タフトはハスラーの対抗として企画したわけではない旨を開発陣は述べていた。
その言葉どおり、より尖ったキャラクターの持ち主であり、個性的な内外装デザインや大型ガラスルーフの「スカイフィールトップ」、操る楽しさを重視した走りの味付けなど、タフトにしかないものをいくつも身につけている。
かたやハスラーは、すでに確立した立ち位置を大切に、現行型ももともとSUVというよりパイクカーに近いデザインを踏襲しつつ、室内空間の広さや利便性や走りの質感を高めて、より欠点らしい欠点のない幅広い層にとってとっつきやすいクルマになった。
むしろハスラーのほうが、あまりに従来型と似ていて新鮮味がないことから売れゆきを危惧する声もあったが、いまのところまだ充分にこのデザインは通用すると見てよさそうだ。
■目標販売台数達成率は高いが……
そこで引き合いに出したいのが、月販目標台数だ。発売時点でハスラーは6000台、タフトは4000台。これを実際の販売台数との差ではなく、達成率をパーセンテージで見ると、実はタフトのほうが概ね高いことがわかる。
月販目標台数というのは、これぐらい売りたいという希望の数字というより、従来の実績や、その車種の素性に合わせて、妥当な数字を綿密に検討して設定するものだ。その点ではタフトは、もともとハスラーの3分の2を見込んでいたわけで、けっして状況は悪いわけではない。
目標台数の達成度からすると、むしろ上出来といってよい状況だ。とはいえ、発売から1年もたたずに早くも下降気味の傾向が見て取れるのは、たしかに看過できないところ。
ダイハツとしてもDNGA第3弾となるタフトのことを、今後の主力商品となるひとつの柱と認識しており、出た当初から中途半端なイメージのあったキャストアクティバが、販売的にもずっとパッとしなかったのとはわけが違って、タフトはそれなりに売れてくれないとダイハツとしてもよろしくない。
これがさらにジリ貧になるようではなんらか手を打つ必要が出てくる。
■認知度を上げることが再浮上のカギ
かといって、できることも限られるわけで、廉価版を出すなどタフトの個性が薄まるようなことをするのはもってのほかだと思うが、ひとつ気になるのは燃費公表値だ。軽自動車ユーザーはお金にシビア。この2台では価格差はほぼないが、燃費に小さくない差がある。
WLTCモードで、ハスラーの2WD車は自然吸気が25.0km/L、ターボが22.6km/Lであるのに対し、タフトは同20.5km/Lと20.2km/L。ターボ同士でも差は小さくないうえ、自然吸気がターボとほぼ同じ数値というのはイメージからしてよろしくない。
それは、せっかくダイハツが開発したD-CVTが、販売価格を下げるためなどの事情によりターボのみに採用されたことも影響しているわけだが、現状では2割近くもの差があるハスラーに対して、もう少し見劣りする印象がなくなるほうがよいことには違いない。
あとは、もっとタフトの認知度を高めることだ。コロナ禍の影響もあってか、それほどクルマに詳しくない人でハスラーは知っていてもタフトは知らないという人が意外と多い気がする。知っていれば買ったものも、知らなければ買ってもらえるはずもなく、それではもったいない。
せっかくこんなに面白いクルマを送り出したのだから、ダイハツはもっとタフトの存在を世に広く知らせるための手段を、何か講じたほうがよいのかもしれない。
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