レクサスの今と今後の行方 国産セダン冬の時代をどう乗り越える?

■クリーンで先進的なイメージを押し出すがセダンでは苦戦

2018年販売開始のESは2021年の上海モーターショーでに改良型が公開された
2018年販売開始のESは2021年の上海モーターショーでに改良型が公開された

 このレクサスは2012年に「ニューチャプター」宣言を出し、次のステップに上がることを表明した。

 この時期にはエンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッド車を中心に、ブランド戦略を推し進めるようになっている。電動化技術を積極的に採用することによってクリーンで先進的なイメージを確立しようとしたのだ。

 この姿勢は世界中で高く評価された。レクサスのクルマは群を抜いて静かだし、実用燃費もいい。だが、その一方で欧米の老舗プレミアムカーメーカーの作品と比べると、軽快感やスポーティ感は今一歩と見られたのも事実である。

 2015年、レクサスは日本で誕生10年の節目を迎えた。この時期より少し前からセダンとクロスオーバーSUVの比率は逆転し、セダンのLSやHSは脇役に追いやられている。その後、LSをモデルチェンジし、ESも日本市場に送り込んだ。

 が、スポーティ度の高かったGSや下のクラスを受け持つHSはカタログから落とされた。だからセダンは巻き返しできず、今に至っている。

レクサスIS。セダン人気が低迷する中、スポーティさを強調したISも例外ではない
レクサスIS。セダン人気が低迷する中、スポーティさを強調したISも例外ではない

 フラッグシップのLSだけでなくクーペのLCやRCも月平均の販売台数はふた桁だ。基本設計が古く、モデル末期のLX(ランドクルーザー200ベース)とほとんど変わらない販売台数なのだから、セダンにとっては冬の時代だと言えるだろう。

 が、このまま手を拱いているわけじゃない。2020年秋にはLSを筆頭に、ISやRCをマイナーチェンジして走りの質感を高めた。

 また、2021年4月に開催された上海モーターショー2021には改良型のESを参考出品している。エレガントなデザインをさらに進化させ、ハンドリングや乗り心地も向上させているという。もちろん、先進予防安全技術もてんこ盛りだ。

■EV時代の到来でレクサスの行く先は?

2015年にフルモデルチェンジしたLS
2015年にフルモデルチェンジしたLS

 ここ数年、レクサスは、商品向上に熱心に取り組んでいる。トヨタブランドのカローラやカムリ、クラウンなどはTNGAプラットフォームを採用したこともあり、一気に走りの実力を高めてきた。トヨタ車とレクサス車の差は急激に縮まってきたのである。

 トヨタ車は一段とコントパフォーマンスが高く感じられるようになった。これとは逆にレクサスのセダンは割高感が強まったし、メルセデスベンツやBMWとの差が広がったようにも感じられる。レクサスのセダンは正念場を迎えたといえるだろう。

 今のままではヨーロッパのプレミアムセダンほどの魅力をユーザーは感じ取れない。最高品質を目指すレクサスなのだから、トヨタブランドのようなコスト第一主義を改め、少し生産コストはかさんでもデジタル時代にふさわしい良質なクルマづくりをする必要があると思う。

 LS以外のセダンも品質向上と安全性の向上に努めないと真のプレミアムブランドにはならない。もちろん、走りと快適性だけでなく先進予防安全技術もトヨタ車の一歩も二歩も先を行くべきだ。

 世界中の国々がハイブリッド車を含むエンジン搭載車の販売禁止を打ち出してきたのも懸念材料だ。多くの先進国が、2030年までに内燃機関の販売を禁止すると言っている。ゼロエミッションのEV(電気自動車)を優遇する戦略をとる国が増え、EV専門メーカーに生まれ変わると宣言するメーカーも少なくない。

 多くの国が脱炭素社会を目指し、多くの自動車メーカーがEVへのシフトを鮮明に打ち出してきたのだ。この潮流に対し、レクサスがどのような方針で臨み、対処していくのか興味深い。

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