■特別仕様車には他グレードの販売促進効果も
それなのに効率の下がる限定にする理由は何か。
カローラツーリングは、2020年5月に、RAV4やハリアーと同様の直列4気筒2Lエンジン(M20A-FKS型)を搭載する「2000リミテッド」を500台限定で設定した。2021年4月にも、外観のアレンジを変えた2Lエンジンのアクティブライドを500台限定で発売している。
2Lエンジンを搭載するカローラツーリングの特別仕様車を500台限定で設定した理由をトヨタに尋ねると、以下のように返答した。「お客様に特別感を持っていただき、貴重な1台をお届けするため、量産ではなく台数限定とさせていただいた」。
トヨタの販売店に、カローラツーリングの特別仕様車を500台限定で設定したメリットを尋ねると以下のように返答した。
「カローラツーリングのアクティブライドは、4月2日に正式発売されたが、20日の時点でほぼ売り切れた。ここまで人気が高いと、もう少し多く生産してもいいと思うが、限定500台だから急いで購入されたお客様も多い。話題作りの効果もある。
2Lのアクティブライドを目当てに来店され、予算がオーバーするので(アクティブライドの価格は266万円)、1.8LのW×B(236万6000円)を購入されたお客様もいる」。
このように2Lのアクティブライドは、ほかのグレードの販売促進効果も生み出した。
ホンダの商品企画担当者は、以下のようにコメントした。
「販売台数を限定して特別仕様車などを設定する背景には、車種によってさまざまな事情がある。特別なエンジンやメカニズムを搭載した高性能車は、もともと大量生産は難しく、台数を限定することが多い。またお客様の数(市場の規模)に基づいて、生産台数を限る場合もある」。
例えばシビックタイプR、WRXのS208などは、価格も高く特別なスポーツカーに位置付けられる。ユーザーの数が限られ、なおかつ搭載されるメカニズムも大量生産できるものではないから、台数を限定して販売された。
■限定生産は安全性向上のための手段!?
特別仕様車ではないが、ホンダセンシングエリートを搭載するレジェンドも100台の限定生産だ。2021年3月4日に発売され、4月下旬時点で約70台が契約されたという。
高速道路上の渋滞(作動速度の上限は時速50km)では、いわゆる自動運転レベル3を可能にした。この時にインパネの高い位置に装着された車載モニター画面で、TVやDVDなどを鑑賞するなら支障はない。
また運転支援機能としても、ドライバーがステアリングホイールを保持しないハンズオフ制御を幅広い領域で実施できる。予めスイッチを入れておくと、先行車に追い付いた時の車線変更も自動で(ドライバーがステアリングホイールを保持しない状態で)行う。
ただし価格は1100万円で、契約は3年リースのみだ。販売店によると「リース料金は1カ月に約29万円」だから、3年間(36カ月)であれば1044万円に達する。これだけの金額を支払って、3年後には車両を返却せねばならない。
100台限定とした背景には、ホンダの「大量に売りたくない」意図があるようだ。ハンズオフを車線変更まで含めて長時間にわたり継続できる制御も含めて、ホンダセンシングエリートは未経験の技術だから、何が発生するかわからない。
例えば先般、北米で起こったテスラの死亡事故では、運転席にドライバーが座っていなかった可能性も指摘されている。動画サイトを見ると、運転席に誰も座らずに、テスラがオートパイロットによって走行している動画も掲載されている。
きわめて危険な誤った使い方だが、世の中には、このように利用するユーザーも存在するのだ。現在の技術では、ドライバーに運転を戻すこともあるから、すべてを車両に任せられる水準の自動運転ではない。前述の誤った使い方で交通事故が発生した場合も、責任はドライバーに生じる。
それでも上記のような使い方で人身事故の加害者になれば、メーカーが道義的な意味において、社会的な責任を問われることは充分に想定される。なぜなら限定された「条件付き」としながらも「自動運転車(限定領域)に適合する」とホンダが説明しているからだ。
従ってレジェンドのホンダセンシングエリートも、複数の安全機能を備える。万一故障が発生した時は、通信機能によってメーカー側が把握できる。
そして100台の限定販売であれば、最悪の場合、全車両の走行を停止させて回収することも可能だ。つまりレジェンドハイブリッドEXホンダセンシングエリートの100台限定は、システムの安全性を高める最終手段として機能する。
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