新型はノートもフィットも消滅!! MT車は滅んでしまうのか?

■EVにMT車がない理由はモーターの特性にある

クラッチとギアを操作するMTは内燃機関の出力特性に合わせて両手両足で操作する。脳の力を必要とする作業なのだ
クラッチとギアを操作するMTは内燃機関の出力特性に合わせて両手両足で操作する。脳の力を必要とする作業なのだ

 では、EVになるとMTはなぜいらなくなるのだろうか? EVの現行モデルにクラッチとトランスミッションが装備されているモデルはない。

 あのテスラでさえトランスミッションを装備していないのだ(例外的にポルシェタイカンはリアモーターに2速ギアを持つが)。その理由は、モーターはゼロ回転から最大トルクを発生させる、という特性があるから。

 また、EVはアイドリングさせる必要がない。このことでまずクラッチ機構が必要でなくなる。また、ゼロ回転から最大トルクを発生するということは、トランスミッションのローギアが必要なくなる。

 しかも高回転域までフォローするから固定したギア比でかなりの速度範囲をカバーできる。つまり5速ギアレベルのギア比が固定で設けられれば充分なのである。

 EV化は駆動系周りのシステムが簡素化される。これはメリットでありデメリットでもある。

 ではデメリットは何か? そこにはドライビングプレジャーがない、ということ。もちろんクラッチやトランスミッションを必要としない、ということだけではなく、現在のところ、モーターというデジタルハードウェアの代表的産物を動力源としているからだ。

 シロモノ家電などは詳細にコントロールされた出力特性が要求されるわけで、EVのモーターも同じ。速い加速、力強い回転力という素晴らしい面もあるが、内燃機関のようなエモーショナルで爆発的力感は薄い。高回転域で飛び込むように延びる加速力は、内燃機関でないと味わえない。

 クラッチとギアを操作するMTは、この内燃機関の出力特性に合わせて両手両足で操作する脳力作業。人間の脳をコンピューターに例えると、64ビットで処理して運転するのがMTで、PHEVなどの2ペダルは32ビット、EVだったら16ビットで充分かもしれない。

 そうMTは運転をスポーツしているのだと思うのだ。もっと崇高な言い方をすれば「運転は文化」と筆者は言いたい。自動車レースやラリーだけが自動車文化ではない。また往年の名車だけが文化でもない。運転を楽しむ文化を残したいものだ。

 それがMTでなきゃだめだ、とまでは言わないが、現在のEVの嗜好は白物家電的な便利品と同じような方向に走っているように見える。

■運転を文化と捉えるメーカーが日本にはまだある!

多くのモデルにMTモデルをラインアップしているマツダ。写真のCX-30もMTモデルが用意されている
多くのモデルにMTモデルをラインアップしているマツダ。写真のCX-30もMTモデルが用意されている

 さて、こんなご時世でもちゃんとMT車をラインナップしているメーカーがある。欧州では当たり前かもしれないが、クルマはATが普通の日本国内にMT車を用意するのは大変なこと。

 生産ラインにMT車を入れなくてはならず、生産工程が複雑になるだけでなく、数が売れるわけではないのでトランスミッションを含めたコストがハネ上がる。つまり利益も少ない。

 それでも多くのモデルにMTモデルをラインアップしているのがマツダだ。マツダはCX-8以外のほとんどのモデルにMT車をラインナップしている。

 「Be a driver.」というマツダのキャッチは「何よりも運転が好きな人でありたい。だから、自分たちが走らせて退屈だと思うクルマは絶対につくらない」というもの。だからMT車をラインナップする意味、わかりますね。ほかのメーカーと考え方がかなり異なるのだ。

 似ているのがスバルだ。ただ、スバルもMTは減少傾向にある。これには理由があり、スバルは「アイサイト」装着を全車種に拡大している。いわゆるADAS(運転支援システム)を軸にするとATの必然性がでてくるのだ。

 この点マツダはMT車にもACC+LKA(車線内中央維持ステアリング支援)を採用する等、可能な限りADASを取り入れながらMTを実現している。

 安全をカバーするADAS、そして自動運転を見据えると、ある程度クルマ任せにしなくてはならず、2ペダルのATやEV化の必然性が浮き上がってくるのだ。もし、このようなことが法制化されるとすれば、運転というクルマ文化の危機となるかもしれない。

次ページは : ■運転を楽しむドライバーが増えればMTは残り続ける

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