■新型車という“客寄せパンダ”を積極的に投入
ただ、これだけがトヨタ一強を顕在化させたわけではない。新型車も積極的に市場投入していたのである。コロナ禍直前にはヤリスを正式発売し、コロナ禍のなかでもハリアーやヤリスクロスといった新型車を発売し、発売早々から長期の納期遅延を招くほどの大ヒットモデルとなった。
燃料電池車である新型ミライや、GRヤリス、RAV4 PHVなどの話題性の高いモデルも投入し、RAV4 PHVは前述したプチ贅沢需要もあり、発売時には年内販売予定分があっという間に売り切れとなった。
ディーラーにとって新型車の存在は“人寄せパンダ”効果が期待できる。新型車があるとショールームを訪れやすくなり、来店客が期待できるのである。
そのため、ディーラーでは朝のミーティングなどで、「ほかのクルマを見にきているお客様もいるから、新型車にこだわらず積極的にアプローチするように」とマネージャーからハッパをかけることもあると聞いている。
全店併売の影響は大きいのだが、話題の新型車を積極的に市場投入したことも、アルファードを年間で10万台強(2020年度)売ってしまったことには少なからず貢献しているはずである。
年度末決算セール終了直後に、トヨタ系以外のディーラーへ行くと、「トヨタさんに対しては、金利を下げるぐらいしか対抗できない」とか、「うちじゃとてもじゃないけど、アルファードのようなクルマを月販平均で1万台売ることはできない」など、ギブアップ宣言のようなコメントが多数聞かれた。
■トヨタの一強化は今年度さらに浮き彫りに
しかし、いまのトヨタ一強状態は2021年度(2021年4月から2022年3月)に入ってから、さらに先鋭化していきそうなのである。
前述したように“人寄せパンダ”の存在については、すでに7月末に新型アクアが、そして8月下旬には新型ランドクルーザーがデビュー予定となっている。
スペックなどの情報だけが先行し、新型アクアがどのようなエクステリアやインテリアを採用するかについては、はっきりしていないが、「すでにヤリスにハイブリッドがあることを考えると、ヤリスとキャラクターの被らないやや上級イメージが与えられると売りやすい」といった期待の声も販売現場からは聞こえてくる。
現行アクアは2011年12月にデビューしているので、すでに10年目を迎えている。
アクアは、いまではレンタカーやカーシェアリングなどのフリート販売がメインとなっているようだが、2020年度の年間販売台数は4万8115台(月販平均約4000台)で、登録車のみでの通称名(車名)別販売ランキングでは15位に入っており、量販モデルとしての実力をいまもなお見せつけている。
モデルレンジが長いので、現行アクアをすでに数台乗り継いでいる個人ユーザーもおり、いまも現行型に乗るユーザーもかなり多くいるので、予約受注段階で、すでにこのようなアクアユーザーからの乗り換え需要により、予約受注が積み上がるのは必至。
そのため、発売直後から納期遅延が長期化する可能性が充分高いともいわれている。「次期型はないのでは?」ともいわれていたなかでの新型登場となるので、量販モデルでありながら話題性も充分に高い。
新型ランドクルーザーは、2020年5月から全店併売化により扱うようになったトヨタ系ディーラーでは、「ランクルは、そんなに簡単に売れるクルマではないですが、新型がデビューすれば集客効果は充分に期待できます」とはセールスマンの話。
結局は、以前専売だったトヨタ店がメインとなって売っていくのだろうが、それにプラスアルファでほかの販売チャンネルでも新型ランドクルーザーを販売していくので、納期遅延発生は想定して購入プランを立てる必要があるだろう(発売前から活発に動くこと)。
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