■なかには残っているだけで価格が高騰した便乗商法的な旧車もある
だが、なかには「……なぜコレが高騰するの?」と首をかしげざるを得ない国産旧車もある。
たとえば、S15から数えて4代前のシルビアであるS110型日産 シルビアだ。
これの相場が今、180万~250万円ぐらいまで上がっているのだが、ハッキリ言ってこのクルマなどは、実力だけでいえば50万円以下ではないだろうか。
「これが好きな人もいる」「希少価値はある」という部分を勘案しても、せいぜい100万円ぐらいというのが妥当な線でしょうと、実父がコレに乗っていた筆者は思うのである。
またAE86のカローラレビンの相場が超絶高騰する理由はわかるが、1987年から1991年にかけて販売された「AE92レビン」が150万~240万円ほどで売られているというのには、今ひとつ納得がいかない。
もちろん悪いクルマではないし、これがお好きな人はどんどんお買いになれば良いとは思うが、存在としては「好きな人が数十万円で買って、コツコツ直しながら楽しむ」というのが似合うタイプなのだが、時代がそれを許さないようである。
さらに言えばZ32こと4代目の日産 フェアレディZも、その端正なフォルムにはいまだ大いなる価値があると筆者も確信しているが、それにしても平均価格が約190万円で、最高値のゾーンは300万円前後となる現在の相場は、ちょっと無駄に高いと思う。
もちろん名作ではあるが、今となっては「100万円台半ばぐらい」というプライス感が妥当ではないだろうか。
まぁS110シルビアや92レビン、Z32には厳しい見解を示してしまったが、S15シルビアやS2000などの高騰して然るべき名車に関しては、相場高騰の功罪における「功」もないわけではない。
そのクルマを10年や20年以上にわたって大事に乗ってきたオーナーにとっては、売却する・しないにかかわらず、大幅に高騰した中古車価格というのは「含み益」にほかならない。
またその車種の市場価格が上がったことで、30万円か50万円そこらの値段で売られていた時代と違い、そのクルマを「大切に扱いたい、キレイに維持してあげたい!」という気持ちも強まるはずだ。
■相場高騰がもたらす悪影響
だが相場高騰にはやはり「罪」の部分もある。
ひとつには、せっかく市場に存在しているそれぞれの車が、多くの人にとって「手が届かないモノ」「自分の生活には関係のないモノ」になってしまったということ。
これは、長い目で見た場合の「自動車文化の継承」という部分において、いささかダメージの大きい事実である。
そしてもうひとつの「罪」は、「高いモノが必ずしも良質ではないケースもある」ということだ。
もちろん大半の高額旧車は、しっかりとしたレストアが行われ、そのレストアを行った分の実費や利益を正当に反映した、正当なプライスで販売されている。
高額な旧車を見ると反射的に「どうせ販売店がぼったくってんだろ?」とつぶやく人もいるが、それは基本的には間違いである。人と部品と時間を使って古いクルマをレストアし、そのうえでビジネスとして正当な利益得ようとすれば、どうしたって販売価格はウン百万円にはなるのだ。
だが、なかには「安~く仕入れたボロい個体を、とりあえず見える部分だけそれなりにキレイにして、旧車ブームに便乗したプライスを付けて高~く売る」というケースがないわけではない。
そういった際どい商売をしている人にとっては、旧車の相場というのは上がれば上がるほどボロ儲けできるわけで、心の中では「もっと上がれ、もっと上がれ!」と思っているのかもしれない。
そういったさもしい人々にわざわざ巨額の利益を与えたくはないという意味で、旧車の相場ももう少し沈静化してくれるといいのだが……とは思うのである。
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