キャデラック新型EV発表!!「リリック」とは一体何者か?

■意外にもGMのEV投入は早かったが、様子見する間に出遅れてしまった

 まずは、GMの量産型EVの歴史を振り返っておきたい。

 「EVは規制ありき」、というイメージが長年に渡り、自動車産業界の中に根付いた。その筆頭は、1990年に施行された米カリフォルニア州環境局によるZEV(ゼロエミッションヴィークル)規制法だ。

 筆者は1980年代からアメリカでレース活動や取材活動をしているが、1990年代初頭を振り返ってみると、自動車メーカー各社はZEV規制に振り回されていたように思う。なにせ、規制の内容や方針が数年毎に変更されたり修正されたりで、各メーカーの開発者のその都度、頭を悩ませていた。

 当初のZEV法では、かなり早い段階でEVシフトを試みるも、当時のバッテリー技術などでは航続距離も限定的であり、バッテリーの劣化も早いなど技術的な制約が多かった。

 そうしたなか、GMはZEV法対応に一番乗りすべく『EV1』を発売するも、さまざまな課題を抱えるなかでGMが車両を回収して廃棄処分するという前代未聞の状況に陥る。これについては民間事業者がドキュメンタリー映画を制作してgmの姿勢を厳しく批評するなど、アメリカで大きな社会問題となり、結果的にgmはこれからしばらくの間、EV事案を封印してきた。

 ZEV法はその後、電動化ありきではなく、排気ガス規制という文脈で内燃機関エンジンのクリーン化の流れになっていく。ZEVに対する換算クレジットという考え方が強調されるようになる。

 量産型ZEVについてはEVよりも燃料電池車に注目が集まり、gmは当初は独自開発し、その後はホンダとの協業体制に移行していく。

 ZEV法におけるEVでは、例えばホンダは『フィットEV』を登場させるも、当時のホンダの伊東孝紳社長はロサンゼルスショーで「あくまでもZEVありきで、しかたなく……」とコメントしている。

 この時期、大手自動車メーカーとしてEVを発売していたのは、日産『リーフ』と三菱『i-MiEV』のみで、GMにEVはなくプラグインハイブリッド車の『VOLT』だけだった。

 またテスラは『モデルS』登場前で、ラインアップは『ロードスター』だけの小規模ベンチャーに過ぎなかった。

 こうして、大手自動車メーカーがEVを「規制ありきの特殊車両」というイメージでEVを遠巻きにするなか、テスラはEV専用メーカーとして着実に成長し、その結果として大手メーカーに先んじて、プレミアムEV市場の王者に君臨してしまった。

1990年のZEV規制法以降、GMは実験的にZEVを投入してきたが、他社の参入を様子見していた状態だった。ライバルが続々とEVを投入していく中、旗艦ブランドでのEV本格投入を決めた
1990年のZEV規制法以降、GMは実験的にZEVを投入してきたが、他社の参入を様子見していた状態だった。ライバルが続々とEVを投入していく中、旗艦ブランドでのEV本格投入を決めた

 欧州では2016年にフォルクスワーゲングループが事業戦略としてEVシフトを掲げ、さらに2010代後半になり、欧州でのCAFE(企業毎平均燃費)強化の影響を意識して、

 欧州メーカーがEVシフトに一気に動いた。

 また、世界的にカーボンニュートラルに対する意識が高まり、2020年代に入り投資案件を含めてEVシフトが急激に加速している状況だ。

■GMの反撃は「ハマー」の復活に始まり、「リリック」が続く!!

 こうした時代変化に対応するため、GMは2020年に車内の開発体制を大幅に見直し、

 EVについては中大型車向けEV専用プラットフォーム「アルティウム」を開発した。床下にリチウムイオン二次電池の大型電池パック、そして前後の車軸にモーターを配置してFWD、RWD、またはAWDの各グレードに振り分ける。

 こうした発想は、テスラを含めて近年のEV開発の定石となっているが、gmの場合、VOLTから協業している韓国LG化学との連携強化などにより、リチウムイオン二次電池のコスト低減などを狙う。

 アルティウムの量産第一号は、GMC『ハマーEV』となる。

 ハマーといえば、2000年代にgmの既存車体やエンジンを活用した「H2」や「H3」が人気となるもリーマンショックの影響で2009年にGMが経営破綻した際、廃止された販売チャネルだ。

 今回は、上級なSUV、ピックアップトラック、ミニバンを持つGMCブランドでのひとつのモデルとしてハマーをEVとして復活させた。ハマーの場合、大出力と大型電池パックを強調して、GMのEV本格参入を印象付けている。いわゆる、飛び道具という印象がある。

 一方、リリックの場合は、価格は最上グレードでハマーEVのほぼ半額に設定しており、

 GMとしてはテスラに対抗してプレミアムEV市場で大きなシェア獲得を狙う、販売台数増を狙う本気モードのEVだといえる。

「リリック」のリアスタイル。2mに迫る全幅と低めの全高により、クーペルックのクロスオーバーSUVとして伸びやかで魅力的なスタイルだ。日本上陸にも期待!
「リリック」のリアスタイル。2mに迫る全幅と低めの全高により、クーペルックのクロスオーバーSUVとして伸びやかで魅力的なスタイルだ。日本上陸にも期待!

 では改めて、リリックのスペックを見ていく。

 ボディ寸法は、全長4996×全幅1977×全高1623mm、ホイールベースは3094mm。モーターはひとつ(広報資料には搭載位置の記載はないがRWDと推測)で、最大出力は255kW(340hp)、最大トルクは440Nm。

 電池容量は100kWhで、満充電での航続距離は300マイル(約482km)以上。交流充電では19.2kW、また直流での急速充電では190kWに対応し、直流急速充電の場合で例えば10分間で76マイル(122㎞)走行可能だ。

 はたして、リリックはプレミアムEVの新常識となるか? リリック日本上陸に期待が高まる。

【画像ギャラリー】GMがEV市場に本格参入!新型EVキャデラック「リリック」発表で反撃開始だ!!

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