あまり話題にならないけれど、クルマを運転する際に気になるのが後方の視界。駐車場でバックをする時、車線変更をする時など、安全運転には欠かせないのが後方の視界。
しかーし、最近はリアスタイルのよいクルマは多いものの、リアウィンドウが小さなクルマも多くバックしていたらぶつけてしまったなんて事態もある。
そこで今回は後方視界のいいクルマ、そして悪いクルマを集めました。果たして詳細はいかに!?
文:永田恵一/写真:池之平昌信、茂呂幸正、ベストカー編集部
■後方視界のいいクルマ3選
クルマを買う時にはあまり気にしないが、悪いと日常的なことなので気になって仕方ないポイントの1つが後方視界である。
当記事では駐車や進路変更の際の安全確認を守るためにも大切な後方視界のいいクルマと、後方視界の悪いクルマを挙げながら、後方視界の悪いクルマが増えている理由なども考えてみたい。
まずは後方視界のいいクルマから見ていこう。
【ポルシェ911】
2ドアのスポーツカーやスーパーカーはCピラーが太く、リアスポイラーに代表されるエアロパーツや付加物が付いているといったケースが多い。
そのため後方視界は絶望的というのが大体の相場である。その中で望外といっていいくらい後方視界がいいスポーツカーとして挙げたいのがポルシェ911。

理由としてはまずスポーツカーとしてはリアウインドウが大きいため、ルームミラー越しの後方視界が良好である。2つ目にスポーツカーとしてはリアのサイドウインドウが大きいこと。
斜め後方の視界がスポーツカーの中では群を抜くのも特筆したい。そしてリアにあるエンジンルームの高さも低く、クルマの後端を掴みやすい点も駐車の際にはありがたい。
ポルシェ911は以前からこのクラスのスポーツカーとしては「高い日常性を持つスポーツカー」とよく言われるが、後方視界のよさも911の日常性の高さを強く後押ししているように思う。
【WRX STI】
スポーツモデルのアイコンの1つでもある大型リアスポイラーは、言葉を聞いただけで「付いていると後方視界が悪そう」と思う人が多いと思う。
その中でも大きなスポイラーが代名詞のスバルWRXは、リアスポイラー付きでも後方視界が損なわれないのが嬉しいポイントでもある。
というのも現行WRXの大型リアスポイラーはトランクリッドからスポイラー本体までの高さがあるおかげで、ルームミラーを通して見える後方視界を遮っていないためである。
速く、安全に走るための機能と後方視界を見事に両立しているのはスバルらしいこだわりで、すばらしい。
【スズキスペーシア】
ハイトワゴン、スーパーハイトワゴンといった軽自動車はもともとのサイズが小さい上にクォーターウインドウ(リアドア後方側面のガラス)もあるため、真後ろの後方視界は抜群。
駐車の際などに重要な斜め後方の視界も有利な車型だ。その中で特に後方視界のいいクルマとして真っ先に挙げたいのがスペーシアだ。
理由としてはクォーターウインドウが特に大きく斜め後方の視界がいいのに加え、駐車の際に真後ろに子どもがいないかを確認するのに使える後方視界支援ミラーが装備されるなど配慮が細かい。
バックモニターのみならず、確実な目視もできて安全に駐車しやすい。
■「もう少し後ろが見えてもいいじゃん!!」なクルマ3選
【トヨタC-HR】
SUV人気によるSUVの多様化でクーペ的なSUVも増えているが、クーペ的なSUVはクォーターウインドウが小さいこともあり、後方視界は芳しくないクルマが多い。
その中でも後方視界が特に悪いのが人気のC-HRだ。C-HRの後方視界の悪さの理由はリアウインドウが寝ておりルームミラー越しの後方視界がSUVとしては非常に狭い。
またクォーターウインドウがないため斜め後方の視界が劣悪で、駐車の際にちょっと気を使うことが挙げられる。まあC-HRの後方視界は絶望的というほど悪いわけでない。
とはいえバックモニターがないと不安というオーナーも多いはず。C-HRは走りやスタイルにも気を配っているので、もうちょっと後方視界にも配慮が欲しいところだ。
【ランサーエボリューションX】
後方視界のいいクルマに入選したスバルWRX。その唯一無二のライバルだったランサーエボリューションⅩは、対照的に後方視界が悪い。
ランサーエボリューションⅩの後方視界が悪いのは大型リアスポイラーのせいである。
ランサーエボリューションⅩの大型リアスポイラーはトランクリッドからの高さがそれほど高くない。さらに、スポイラー本体の前後長が長いのだ。
これがルームミラー越しの後方視界を遮ってしまい、後続車の車種が日中でも判断が難しい。きっと性能優先であの形状になったのだろうが、速いクルマだけに後続が見えないというのもちょっと怖い!?
【ランボルギーニアヴェンタドール】
ランボルギーニに後方視界を期待するのは間違っているのは百も承知だが、その中でもちょっと考え物なのがV12エンジンを搭載するランボルギーニアヴェンタドールだ。
アヴェンタドールはルームミラー越しの真後ろの後方視界は最低限確保されており、バックモニターがあるのでカウンタックのようにシザードアを開けて後ろを目視しながら駐車する必要もない。
では何が困るかというと斜め後方の視界が劣悪な点だ。具体的にはCピラーの太さやウエストラインが高いのだ。

挙句に左ハンドルであるため、加速区間が短く左から右へ合流する箱根ターンパイクの駐車場出口や首都高のランプなどではいくらミラーを見ても、首を振っても右後方を確認するのは絶望的。
最後の手段として窓を開けて後続車の走行音でも後方を確認しないと怖い(大げさではなく怖い)。そのためアヴェンタドールに乗る際にはぜひ文字通り助手をしてくれる人が助手席にほしい。
■後方視界が悪いクルマが生まれる背景
大きな理由は空気抵抗の低減と、流麗なスタイルを求めるという2つの要因により、Cピラーが寝がちになり、ルームミラーを通して見えるリアウインドウ越しの後方視界が狭くなる。
寝がちなCピラーの影響でリアクォーターウインドウが狭くなったり、C-HRのようにリアクォーターウィンドウを着けられないことまであるためだろう。
後方視界は安全のための重要な要素であるため優先的に確保して欲しいところだが、空気抵抗低減やスタイルとの折り合いがあるのも事実ではある。
ならば、後方視界の悪いクルマの場合にはテスラ(もしくはバスなど大型車)のように、バックモニターをミラーやディスプレイなどに投影する機能も増えてほしい。