■ライバル車ソリオにあってルーミーにないもの
“トヨタ一強時代”などと呼ばれる最近では、トヨタ系ディーラーのセールスマンに話を聞くと、まずライバルメーカー車のクルマと商談でぶつかることはなくなったとのことである。
ただし、「ルーミーですと、スズキのソリオとぶつかることが多いですね。値引き競争では自信があるのですが、たまにソリオに注文を持っていかれることがあります。値引きで負けるのではなく、クルマの魅力で負けるのです」と語ってくれた。
ソリオにあって、ルーミーにないもの、それは“ハイブリッド”というおまじない。ソリオは先代モデルではストロングタイプまでラインナップしていたのだが、現行モデルではマイルドハイブリッドのみとなっているが、新車購入の上で、ハイブリッドというおまじないの効果は大きいようである。
ルーミーはターボもあるが、NAとともに1000ccエンジンを搭載しており、ソリオの1.2Lエンジンのみに対して、自動車税の安さでアドバンテージがあるのだが、ハイブリッドの存在でかき消されることも多いようだ。
ルーミーよりも、ヤリスクロス登場までビッグヒット状態であった、やはりダイハツ(ロッキー)からのOEMとなる、コンパクトクロスオーバーのライズとともに、人気車で販売実績もすごいのだが、それでも「ハイブリッドがないからなあ」ということで、契約までにいたらないこともあるとセールスマンから聞いたことがある。
それでは、ハイブリッドもないダイハツからのOEMであるルーミーが、月販で1万台を超える時もあるほど人気車であり続けられる背景についてみていこう。
■コンパクトMPVの元祖はルーミーではない
ルーミーのような、後部サイドドアにスライド式を採用するコンパクトMPV(ミニバンのような3列シートではない多目的車)というコンセプトはスズキが2010年に2代目(ワゴンRの拡大版ではなく、オリジナルデザイン採用では初代)となるソリオで具現化し発売されている。
前述したとおりルーミー系が登場するまでは、ライバルもなくヒット街道をひた走っていた。
つまり、ルーミー系はいわゆる“二番煎じ”モデルと言ってもいい存在なのだが、不思議なことに、ルーミーが登場して初めて「こんな便利そうなモデルが出たんだ」と気がつくひとが意外なほど多い。
つまり、ソリオのころでは目に留まらなかったが、トヨタがソリオの対抗馬として世に送り出し、テレビコマーシャルを頻繁にオンエアするなど、宣伝活動を活発化したことで初めて、その存在に消費者の多くが気づいてルーミーがヒットモデルの座を奪ってしまったということは否定ができない。
ダウンサイズ需要というものが目立つ昨今でこそ、“仕事をリタイアして高齢にもなったから、クラウンからワゴンR”といった乗り換えも珍しくなくなってきている。
しかしそれでも、スズキやダイハツなど、軽自動車がメインのブランドに対し、コンパクトモデルから大型セダンまで幅広くラインナップをそろえる総合ブランドしか興味がないというユーザー層が一定層存在する。
ホンダN-BOXのビッグヒットや、日産のデイズやルークスといった軽自動車がよく売れるのも、「総合ブランドがラインナップするなら」とのことで、いままで軽自動車に縁遠かった人が選んで乗ることも影響しているのである。
一方で、スズキやダイハツの軽自動車などを乗り継ぐひとも一定数おり、そのようなひとはトヨタや日産といった総合メーカーのモデルには興味がないひとも目立つ。
つまり、ルーミーが年間10万台以上販売しても、ソリオはコンスタントに月販目標を上回る販売台数を維持できるのは、お互いのブランドに馴染まないユーザーが一定数存在することがあるといってもいいだろう。
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