■合わせガラスを使うフロントウィンドウは脱出用ハンマーでは割れない!
これまで何回も書いているが、合わせガラスを使うフロントウィンドウは脱出用ハンマーでは割れないことを覚えておいてほしい。
主にフロントガラスに採用されている合わせガラスは、静粛性のために2枚以上の板ガラスに柔軟な樹脂を中間膜として接着したもので、ガラスが割れても中間膜によって破片の大部分が飛び散らずに容易に貫通されず、脱出ハンマーでは破砕することができない。
いずれの車種でもフロントガラスには必ず用いられ、他のガラス部にも用いられている車種もある。JISマークの付いた自動車用ガラスでは、JISマーク付近に“L”または“LP”の表記がある。
脱出用ハンマーで割ることができるのは、強化ガラスを採用しているサイドウィンドウやリアウィンドウだ。自動車用ガラスには衝突/横転時などで強度を確保可能な素材が採用されており、水没時に車両から脱出する際に破砕することになるサイドガラスに多く採用されているのが強化ガラスだ。
熱処理等によって強度が増強され、破損した際には細かい粒状になるために鋭利な破片が生じにくく、脱出用ハンマーを利用して破砕可能で、主に前席のドアガラス、サイド/リアガラスに使われている。なお、JISマークの付いた自動車用ガラスでは、JISマーク付近に“T”または“TP”の表記がある。
気を付けなければいけないのは、サイドウィンドウ=強化ガラスとは限らないことだ。
同センターの先の試験結果で公表された自動車メーカー8社へのアンケートの回答では、グレード別装備を含めて脱出用ハンマーで割ることができない合わせガラスをフロントウィンドウ以外のドアガラスにも採用しているメーカーが5社あり、5社それぞれ全車種数の6.7~23.1%で合わせガラスを採用していることがわかった。
愛車のサイドウィンドウに脱出ハンマーでは破砕することができない合わせガラスを採用しているかどうか、窓ガラスの表示マークの確認とともに、ディーラーに確認しておいたほうがいいだろう。
■高い信頼性を謳うレスキューマンIII
ここからは、前述の国民生活センターの試験で実施された、具体的な製品をいくつか見ていこう。
これまでにベストカーwebで紹介してきた代表的な脱出用ハンマーが、丸愛産業が生産販売する「レスキューマンIII」だ。日本の自動車メーカーのほとんどでディーラーオプション品などとして採用され、現時点で年間約11万個が販売されている実績をもつ。
「レスキューマンIII」の価格は2484円(メーカーによって価格変動あり)。重量は85kgと平均的だが、腕力の弱いユーザーでもガラスを破砕する力が加わりやすいように、先端にアルミダイキャスト材のおもりを追加している。
ハンマーのガラス破砕部は超硬合金製、シートベルトカッターはステンレス刃で構成され、グリップ部は自動車部品では幅広く使われている、強度や耐熱性の高いABS樹脂を採用した。
なによりレスキューマンIIIは1998年の発売から23年間を経ていることからも信頼性の高さについては疑う余地がないといえる。
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