新車未登録GT-Rがなぜオークションに!? ディーラーで未登録状態のクルマを納車できるのか

■収益の認識ができる「登録」

もし未登録の新車を引き渡してしまったら、売り上げが立たないことになる。これには収益計上を行えるタイミングに秘密がある(voyata@AdobeStock)
もし未登録の新車を引き渡してしまったら、売り上げが立たないことになる。これには収益計上を行えるタイミングに秘密がある(voyata@AdobeStock)

 販売店には、未登録の新車を引き渡せない理由がある。それは、販売が完了しないためである。これはどういうことか。

 販売店は「登録」を行わなければ、販売後の会計処理ができない。未登録の状態で買い手に引き渡してしまうと、売り上げが立たないことになる。一体ナゼなのか、説明していこう。

 クルマを販売した際に、販売店で収益計上を行えるタイミングは決まっている。

 それは、顧客から注文を受けた日でも、注文したクルマがラインオフしたタイミングでもない。運輸支局へ届け出を行い、ナンバープレートが交付された日、つまり「登録日」だ。この瞬間に、販売店の収益は会計上で処理される。これを収益の認識という。

 収益の認識には、明確な基準がある。公益財団法人 財務会計基準機構の企業会計基準委員会が規定する、基準第35項は「企業は約束した財又はサービスを顧客に移転することにより 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識する。」と表記されている。

 つまり、クルマの支配が、販売店から買主に移転する時は、車検証の所有者(使用者)に顧客の名前が入った時となる。この時点で、販売店は収益の認識ができるというわけだ。

 登録は、販売店にとって、最も重要な業務の一つだ。

 毎月、営業マンは、販売台数の目標に加えて、登録台数の目標があるのをご存じだろうか。登録目標に関しては、受注残から綿密に計画されるため、生産遅れなどが無い限り、未達成はNGだ。販売店もメーカーも、販売実績が確定する登録台数に注目している。

■もしも新車未登録で納車して欲しいと言われたら?

顧客から希望があっても未登録での納車は行われない(88studio@AdobeStock)
顧客から希望があっても未登録での納車は行われない(88studio@AdobeStock)

 メーカーは、登録されないクルマを作る気はない、ましてや販売店は、登録されないクルマを売っても、どうにもならない。

 仮に今、「公道を走らないから、ナンバーは不要だ。だから未登録で納車してくれ」と、顧客から希望があっても、残念ながら未登録での納車は行われないと思う。

 このようなオーダーでは、注文時には、税金などの諸経費をすべて計上し、納車時には必ず登録を行うことを了承してもらう。引き渡し後に、ユーザーがナンバー無しで保管する場合には、自ら一時抹消(もしくは永久抹消)をしてもらうのが、一般的な流れになるだろう。

 自動車販売と登録制度は、非常に密接なかかわりを持っている。販売店が顧客に未登録車を引き渡すことは、ありえないということを、理解いただけただろうか。

 未登録車は、登録済み未使用車とは大きく違う。一般市場に流通するべきクルマの形ではないだろう。筆者も長い間、ディーラーで営業マンをしていたが、未登録車を顧客に卸したなどという話は、見聞きしたことがない。

 今回のGT-Rは、約20年という時間が、何かのイタズラをし、レアな未登録車を生み出したと考えるほうが良さそうだ。

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