新型コロナウイルスによる感染拡大の影響から、2021年秋に開催予定だった東京モーターショーは中止が決断された(自工会の豊田章男会長により2021年4月22日とかなり早いタイミングで発表。次回は2023年開催を予定)。
パンデミックという非常事態であることを考えれば致し方ないだろう。だが、コロナ危機をきっかけに社会は急ピッチで変化しており、感染終息後、従来と同じようにモーターショーが開催され続けるとは限らない。
近年は市場構造の変化が進み、大規模な展示会そのものが成立しにくい環境になっている。今後は新しい展示会のあり方が模索されることになるだろう。
文/加谷珪一
写真/NewsPress、日刊自動車新聞/共同通信イメージズ、TOYOTA、Adobe Stock、ベストカー編集部
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■世界5大モーターショーのひとつ
東京モーターショーの歴史は古く、第1回が開催されたのは戦後間もない1954年である。1974年のオイルショック以降は隔年開催となっているが、国内最大級のイベントとして自動車業界関係者以外にも広く認知されている。日本が自動車大国として成長すると、東京モーターショーはフランクフルトやデトロイトと並ぶ世界5大モーターショーと認識されるようになり、各社は東京モーターショーに合わせて新製品を投入するようになった。
自動車業界に限らず、グローバルに製品を展開する業界では、国際見本市(国際展示会)が開かれることが多い。航空機業界でもパリ航空ショーなど著名な見本市が定期的に開催されており、一般人も含め、多くの来場者を集めている。グローバルな製造業と見本市がセットになっているのは、各国のメーカーがそれぞれ個別に新製品を発表するよりも、国際的なイベントに合わせた方が圧倒的に効率がよいからである。
見本市が開催されていれば、メーカー関係者やメディア関係者が一堂に会するので、多数の商談や会合、取材を同時並行で進められる。メディア側も大きなイベントがあると、まとまった人数の記者を派遣できるので効率が良く、各社の新製品が誌面に取り上げられる確率も高くなる。
つまり自動車産業にとってモーターショーはなくてはならない存在であり、今回の中止は業界全体にとって大きな痛手といってよい。多くの関係者が、早くコロナが終息し、以前と同じようにモーターショーを開催できるようになって欲しいと考えている。
だが、日本経済が完全復活した時、東京モーターショーが以前とまったく同じ位置付けで開催を継続できるとは限らない。その理由は、近年、急ピッチで進む産業構造の転換によって、大規模な国際見本市そのものが成立しにくくなっているからである。
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