ロータス ケータハム モーガン… 英国ライトウェイトスポーツ列伝

■英国が誇るライトウェイトスポーツメーカーの足跡

 英国には大手自動車メーカー以外にも、独自のライトウェイトスポーツカーを作るさまざまな規模のメーカーが存在していた。

 時代の荒波にもまれ、惜しくも姿を消したメーカーもあるが、どのメーカーもファンの記憶に深く刻まれる名車を生み出してきた。若かりし頃に、憧れた、またはその走りに魅了されていた、という読者も多いのではないだろうか。

 今回は、そんなライトウェイトスポーツカーを生み出し、歴史に名を刻んだ英国の代表的な7メーカーについて、足跡を振り返ってみたい。

●ロータス

 売れ残った中古のオースチンの改造から始まったロータスの歴史は、奇才コーリン・チャップマンの、「ひたすら軽く、ハンドリングに優れるスポーツカーを」という自身の理想を追求した歴史でもある。

 レーシングカーの開発から販売を手がけるかたわら、セブンなど市販車も販売を試みるなかで、1962年発表のエランで大きな成功を収める。

日本でも人気の高いエリーゼ、エキシージ、エヴォーラといったモデルを生み出したロータス
日本でも人気の高いエリーゼ、エキシージ、エヴォーラといったモデルを生み出したロータス

 さらに同じ時期にフォード・コーティナのチューニングでも名声を得る。F1でもタイトルを獲得するなど、市販車ではヨーロッパでも成功を収め、1970年代もエリート、エスプリが人気を博す。

 1982年にチャップマンが急逝するとロータスは低迷するが、1996年登場のエリーゼで復活をとげ、ライトウェイトスポーツカーメーカーであり続けている。

ロータス初のMR車、ヨーロッパ
ロータス初のMR車、ヨーロッパ

●ケータハム

 1959年にケータハムの地で開業したロータスディーラーが始まり。創業者のグラハム・ニアーンが自らロータス車を駆りモータースポーツに参戦したことでC・チャップマンとの親交が深まった縁から、1968年には「公道を走れるフォーミュラカー」として人気を博したセブンの独占販売権を取得。

 さらに1973年にロータスがセブンの生産終了を決めるや、ケータハムがその製造販売を引き継ぐことになった。21世紀に入り、投資家集団による買収劇などを経験したのち、今年4月に日本のVTホールディングスの子会社となった。

1960年代にはF1に出場していたセブン。公道を走るレーシングカーだ
1960年代にはF1に出場していたセブン。公道を走るレーシングカーだ

●MG

 1920年代半ばに創業した「モーリス・ガレージ」が始まり。当初は大手メーカーであるモーリスのスポーツ部門的位置づけで、レース、ラリーなどで名を残す。

 市販車では1955年のMGAでその名を一躍世界に知らしめ、英国スポーツカーのブームが起こったほどの成功を収め、続く1962年のMGBも19年の現役を務め52万台超が販売された長寿ヒット作となる。

MGの発祥年については諸説がある。写真は、1995年に登場したMGF
MGの発祥年については諸説がある。写真は、1995年に登場したMGF

 1993年には世界限定2000台のRV8で話題となり、1995年にはローバーが開発したミドシップ2シーターオープンのMGFを発売するなどしたが、21世紀に入ってほどなく業界再編の波に飲まれ、辛うじて名が残っている状況だ。

●トライアンフ

 現在は二輪メーカーとしてその名を残すが、1921年に進出した四輪でも、当初は高級車に特化した後スポーツカーでジャガーのライバルとしてしのぎを削った。

 1953年より始めたTRシリーズが有名でTR2からTR8まで進化し1981年まで生産した。一方で1960年代には戦闘機の名を冠したスピットファイアのような名作を送り出す。

 ブリティッシュレイランドのなかでも特別扱いされていたが末期は尻すぼみで、1981年にホンダ車をライセンス生産したアクレイムを送り出し、それが1984年にローバーに引き継がれると、トライアンフの四輪車は終焉を迎えた。現在商標を所有するBMW傘下での復活の噂が絶えない。

代表的2シータースポーツカーであるTRシリーズの7代目となるTR7。それまでの丸目デザインからがらりと変わった
代表的2シータースポーツカーであるTRシリーズの7代目となるTR7。それまでの丸目デザインからがらりと変わった

●オースチン

 1952年に発足したBMCのなかで主導的立場にあり、二度の大戦時には兵器から飛行機までも製造したオースチンが、当時エンジニア兼デザイナーとして活躍していたドナルド・ヒーリーとの間で契約をかわし、20年という期限つきで誕生した。

 合意期限の1972年までスポーツカーを生産することを取り決め、同門のMGとのバッジエンジニアリングを含め、排気量の大きいクラスを主に受け持った。

モーリスとオースチンの2つのブランドから販売されたミニ。革命的と言われ大ヒットした
モーリスとオースチンの2つのブランドから販売されたミニ。革命的と言われ大ヒットした

 その大半が輸出された北米ではテールドロップの美しいカーヴィースタイルが人々を魅了し、「アメリカの恋人」とまで呼ばれた。一方、下のクラスでは「フロッグアイ」や「カニ目」と呼ばれたスプライトが人気を博した。

「カニ目」で親しまれるヒーレー スプライト
「カニ目」で親しまれるヒーレー スプライト

●モーガン

 イギリスで数多生まれたブランドのなかでも異色の存在であり、今でもモーガン一族による経営を続ける純血のスポーツカーメーカーである。

 1909年にH・F・S・モーガンが3ホイーラーのスポーツカーを製作したのがはじまり。その後、1936年に4輪の4/4を発表。以降、ローバー製V8エンジンを搭載したプラス8などをラインナップしつつ、現在までほぼスタイルを変えず製造を続けてきた。

 2000年にはBMW製V8を搭載したエアロシリーズ。さらに2011年には現代風にリメイクした3ホイーラーを発表するなど新しいアプローチも見られる。

モーガンのクルマ作りの特徴として、木製フレームを用いる独自の手法が挙げられる。写真は3ホイーラー
モーガンのクルマ作りの特徴として、木製フレームを用いる独自の手法が挙げられる。写真は3ホイーラー

●TVR

 1947年に創業。社名は創業者トレバー・ウィルキンソンの名前「TREVOR」の子音3文字にちなむ。

 「スポーツカーは大馬力で軽量であればそれでよい」をモットーに、鋼管チューブラーフレームに軽いFRPボディを被せた軽量でハイパワーなFR車を手がけてきた。

 当初は受注生産で、経営陣や販売も不安定だったが、1986年発表のSシリーズが中興の祖に。以降、3代目グリフィス、キミーラ、サーブラウ、タスカン、タモーラなどを矢継ぎ早に送り出し、英国最大の独立したスポーツカーメーカーとなる。

 独特のデザインはもとより、1990年代には自社開発のV8エンジンを搭載したことも話題となったが、2006年に経営破綻。ところが2017年に新型車を発表した。

FRレイアウトを採用した2シーターオープンスポーツのグリフィス(2代目)
FRレイアウトを採用した2シーターオープンスポーツのグリフィス(2代目)

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