新型シビックが300万円を超えたホンダの事情

新型シビックに300万円を超える値付けをしたホンダの事情

 以上のようにシビックは、同じ価格帯で注目されるハリアー、CX-5、セレナ、レヴォーグに比べると割高感が伴う。その理由は、ホンダの価格に対する考え方に特徴があるからだ。

 ハリアー、CX-5、セレナ、レヴォーグは、いずれも国内市場に重点を置く。CX-5は海外でも好調に売られるが、マツダの国内販売を支える車種でもあり、ライバルの動向も踏まえて価格を割安に抑えた。そのためにセレナやレヴォーグを含めて、前述のライバル車は買い得に感じられ、売れ行きも伸びている。

 ところがシビックでは、ホンダの価格に対する考え方が異なる。従来の好調とはいえない売れ行きをベースに、日本国内だけで収支を合わせることを前提に価格を決めているからだ。

 つまり「海外でたくさん売られるから、日本ではあまり儲からなくても仕方がない」とは考えない。日本の販売台数が少なくても、生産や販売関連のコストを含めて、日本だけで儲けをしっかりと出せる価格にしている。そのために1台当たりの価格が高まった。

海外販売中心のCR-V、アコード、シビックなどの価格は割高になりやすい。割高な価格帯は、走行性能を筆頭に高い商品力を持つシビックの国内の売れ行きの障壁になりかねないだろう
海外販売中心のCR-V、アコード、シビックなどの価格は割高になりやすい。割高な価格帯は、走行性能を筆頭に高い商品力を持つシビックの国内の売れ行きの障壁になりかねないだろう

 従ってホンダ車の場合、国内販売台数の多い軽自動車やコンパクトな車種は割安で、海外販売が中心のCR-V、アコード、シビックなどは割高になりやすい。「日本のユーザーがどのように思うか」ではなく「メーカーにとって都合の良い方法は何か」を優先させるためだ。

 一番可衰想なのは、シビックとそのユーザーだろう。シビックはメーカーの都合によって一度廃止されたが、寄居工場で海外仕様の生産を再開することになり、国内販売を復活させた。しかし販売促進に力を入れず、セダンは再び廃止されている。新型はハッチバックのみだ。

 シビックは走行性能を筆頭に高い商品力を備えるが、価格は割高で、国内で売れ行きを伸ばす時の障壁になっている。日本のユーザーと、さまざまなカテゴリーのライバルが共存する国内市場を見据えた価格にすれば、シビックの商品力はさらに高く評価されるだろう。

 シビック「LX」の価格は、高くても、先代型のハッチバックと同じ294万8000円が上限になる。最も安価な「LX」が300万円を超えると、シビックの印象が大きく変わってしまうからだ。

 ライバル車の動向を考慮すると、「LX」の価格は280万円が妥当で、現状では40万円近く高い。今後は特別仕様車の追加などで、適正な価格に抑えた仕様を投入して欲しい。そうすればシビックは、共感を呼ぶクルマになる。

【画像ギャラリー】どう変わった?ホンダの旗艦11代目シビックをチェックする 33枚

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