■三菱自動車「なぜ?なぜ?クルマづくり調査団」
こちらは小学生向けに作られているサイト。「クルマはこうやってつくられます」のページから「バーチャル工場見学(生産)」に行くと、トラックから積み下ろされた鉄の塊からエクリプスクロスが完成するまでの生産工程の8分2秒の動画が見られる。
この動画はなんといっても音が生々しい。ナレーション・BGM一切なし。工場内で実際に出ているパネルが切断される音、金属同士の擦れ合うキーキーという音、歯医者で歯を削られる音を100倍ぐらい増幅させたようなスポット溶接の高周波の音。ライン作業の時に鳴り響く電子音。とにかく臨場感がある。実際に自分が工場で働いたらこんな感じなんだろうな、というのが想像できる。
塗装も普通では見学できないところにカメラを設置して撮影しているカットもあるように見受けられ、できるだけいい映像を見てほしい、という気合いも感じられる
電池パックの組み付け作業(4分6秒あたり)の動画では、けたたましく鳴るアラーム音やメロディ音のなかで緊張感の高い作業が行われているのが見られる。
カメラワークも編集も非常に丁寧で、生産過程で出るプレスの音、ネジの締め付けの音、機械的なオルゴール音、警告音、一つ一つの作業の音が本当によく聞こえるので実際の工場見学よりも臨場感が高いかもしれない。
「工夫 作業者から一言」というコーナーの、実際にプレスや溶接、塗装の現場で働いている人が、自分の仕事のどんな点が難しいのか、自分の仕事にはどんな意味があるのかを語りかける動画もすごくよかった。
組立てライン担当で働く女性が登場して、バンパー作りの難しさをチームワークで乗り越える話を語るが、ダイバーシティの面でもとてもいい。検査の係の方も、一生懸命いいクルマを届けようという気持ちをカメラに向かって不器用だが真剣に伝えようとしていて、胸が熱くなる。
塗装ラインではほぼ全てをロボットが作業しているが、あえて人の手で作業するところを残し、技術・技能を確実に身につけ、海外や次世代に伝えていき、より良いクルマを作り続ける努力をしているという動画も説得力が強かった。
また、「もっとくわしく!」というコーナーがあり、「取り付ける部品を間違えることはありませんか?」「作業者が急にトイレに行きたくなったらラインを止めますか?」という囲みがあり、その答えを聞いて、なるほど! と思ってしまった。
小学生向けと対象年齢は低いものの、全体的にかなり力を入れて作っていることが伝わってきて、大人が見ても十分楽しめるものだった。
おススメ度 ★★★★★
臨場感 ★★★★★
情報量 ★★★★★
■日産「子ども探検隊」
日産自動車「こども探検隊」
「日産のクルマができるまで」(小学生向け動画)
日産のグローバルサイトから「日産のクルマづくり」「工場案内」を経て「日産子ども探検隊」に入ると、「日産のクルマができるまで」という5分29秒の動画が見られる。決して長い動画ではないのだが、内容と情報量が非常に濃い。
限られた時間のなかで、子供たちにクルマ作りの現場ではどんなにすごいことが行われているのかが、分かりやすく説明される。
工場には500台の溶接ロボットがあり、1台のクルマにつき3000か所を溶接する、とか、バンパー1つを作るのにたった50秒しかかからない、など大人が見ても「そうなんだすごい!」と素直に思えるような、具体的な数値と例が挙げられている。
また、「金属製のボディと樹脂製のバンパーは違う塗料で塗装するため、別々の場所で塗装を行なっていたが、新しい塗装工場では日産製のロボットでボディとバンパーを一緒に塗ることができるため、クルマのどの角度から見ても美しく見える塗装で仕上げられるようになった」など、クルマの品質の高さをさりげなくアピールするような内容にもなっていた。
モーターを作っている画像は日産だけでみられたし、新しい組立工場でのインテリジェントファクトリーの紹介もされており、先進技術を採用していることも伝わってくる。
パレットと最新式のロボットを活用し、一つのパレットでガソリン車、e-POWER車、BEV車を効率よく作ることできるインテリジェントファクトリーのコンセプトが説明され、全自動で正確にクルマを組み立てることができるとされる。
また完成車検査のシーンでは、資格を持った検査員だけが入ることを許される場所で、というナレーションと同時に検査員の顔が生体認証されている映像が映し出される。検査項目が700~1200もあるなど、実際の数字でも品質管理に力を入れていることが示される。
2人の女性が塗装の検査をしている映像もしっかり出ていて、ダイバーシティの観点からも素晴らしい。
動画もとてもよかったのだが、実はワタクシのハートに一番刺さったのが、「日産で働く人に聞いてみた」というコーナーにある「日産の「匠」に聞いてみた!」というページである。
エンジンやモーターを作る横浜工場には3000人以上が働いているが、そのなかでGT-Rのエンジンを作ることができる「匠」はわずか5人。そのうちの一人である市川裕之さんのインタビューがそれだ。
GT-Rのエンジンは、日産車で唯一、全て人の手で組み上げられている。それも一台につき一人の匠が全ての責任を持って仕上げている。なぜそうしているのか、どうしたら「匠」になれるのかなど、子供が夢を持てそうな質問にも答えてくれている。
記事の最後に、「工場見学にきたお客様から「私のGT-Rのエンジンはあなたがつくったんですね! ありがとう」と言われるとうれしいです、とコメントがあり、これにも胸が熱くなる。
ぜひ読んでみることをお薦めします。
おススメ度 ★★★★★
臨場感 ★★★★☆
情報量 ★★★★★
コメント
コメントの使い方