■ターゲットユーザーはいったい誰か?
では、軽EVのターゲットユーザーはどういった人か? 結論から言えば、個人ではなく法人だろう。
まず、個人ユースの場合、日本で最も普及しているEVであるリーフからのダウンサイジングは考えにくい。なぜならば、リーフ所有者の世帯年収はかなり高く、生活に余裕があるなかでEVという選択肢を考えるユーザー層だからだ。そのため、リーフ所有者はアリアへのアップグレードを検討する人が多いと思われる。
むろん、セレブ層のなかには、アリアと軽EV、またはテスラモデルSやモデル3と軽EVの複数所有といったケースも考えられるが、これは少数派だろう。
また、コンパクトカーからダウンサイジングでも、一般的な軽を飛び越えて軽EVという人がどれほどいるのか疑問が残る。そして、既存の軽ユーザーにとっても、軽EVはあくまでも「軽クラスのEV」であって、軽自動車という見方をしない人が多くなるのではないだろうか。
結局、軽EVの個人ユーザー層は、今から10年以上前のi-MiEV登場初期と同じような、先進的な技術をいち早く体感したいという「アーリーアダプター」(初期採用層)が主流になると思う。
ただし、i-MiEV登場初期はEVの選択肢がほとんどなかったが、現在は価格に幅があるとはいえ欧州メーカー各社のEVシフトで多彩なEVが次々と登場し、また国内でもトヨタbZ4Xとスバルソルテラが2022年央に発売予定のほか、アウトランダーなど各種の新型プラグインハイブリッド車が登場するという次世代電動車花盛り。このなかで、軽EVの個人ユースがどこまで増えるか見通すことは難しい。
■法人にとっては「待ってました! 」
一方、軽EVが出たらすぐにでも買いたいと思っている企業は多い。その理由は、ESG投資への対策だ。
ESG投資とは、従来の財務情報だけではなく、エンバイロンメント(環境)、ソーシャル(社会)、ガバナンス(統治、理念)も考慮した投資のことだ。SDGs(持続可能な開発目標)と合わせて検討されることが多い。
2010年代後半からグローバルでESG投資への関心が急激に高まっており、その影響もありテスラの株価が一気に上がった。そうしたなか、社有車のEV化を検討している企業が多く、電力などインフラ関連企業で作るコンソーシアムでは自動車メーカーと軽EV商用車の量産に向けた意見交換も行われている状況だ。
このように、市場環境を俯瞰してみると、日産+三菱は法人需要がある程度見込まれるうえで、ルノー日産三菱アライアンスのなかで、海外展開も視野に入れた「軽クラス」という名目の小型EVを世に送り出すことになる。
果たして日産+三菱の軽EVは日本国内で何台売れるのか? 2022年度初頭の発売後、その動向をしっかりウォッチしていきたい。
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