■宿敵登場!! 自らの過去と対峙していくボンド
『スペクター』の前作、シリーズ最高傑作とも言われる『007スカイフォール』(12)で自らの過去と向き合ったジェームズ・ボンドが、引き続き過去に追いかけられるというストーリー。
彼を地の果てまでも追いかけようとするのが、タイトルにもなっている秘密組織スペクターの首領ブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)。実はふたりの間には複雑で深い因縁があったという設定で、ボンドは新任のM(レイフ・ファインズ)の命令を無視し、ひとりでこの巨大組織に立ち向かって行く。
そんな孤立無援のボンドをバックアップしてくれるのはお馴染みのQ(ベン・ウィショー)とマネーペニー(ナオミ・ハリス)たち。
009のために作ったというプロトタイプのアストンマーティンDB10を(結果的に)ボンドに譲り、マネーペニーは上司のMに内緒でさまざまな情報を流してくれる。この辺のチームワークはシリーズものならではの面白さだ。
そのDB10は(字幕では)何と5億5000万円! もちろんスパイカーとしてカスタマイズされているからこそのお値段なのだろうが、思った以上にお高い印象ではある。
3.2秒で時速100キロに加速可能で完全防弾、さらにさまざまな機能を搭載したこのゴージャスな車が真価を発揮するのは深夜のローマ市街地。
好きな音楽から、火炎放射器やマシンガン、さらには「ARI」のスイッチを押すと車の座席のまま外に飛び出しパラシュートで落下出来るという、いたれりつくせりの機能をボンドは、敵に追われて車を走らせつつ実践して行く。
この設定のおかげで、スリルと笑いがミックスされたカーチェイスシーンになっているのだが、最後は川にドボン。5億5000万円が……いや、本当にもったない。
ちなみに、このアストンマーティンはシリーズで初めての映画のために作られたオリジナル。10台生産され、撮影に8台、プロモーション用に2台使われ、そのうちの1台はオークションに出品。
何でも243万4500ユーロで落札されたという。今のレートで日本円に換算すると驚愕の3億1500万円! 一体誰が手に入れたのでしょうか。
■数々の名車・高級車を使って繰り広げられるカーチェイス
そんなDB10を追いかけるのは、ボンドを狙う殺し屋Mrヒンクス(デビッド・バウティスタ)。彼が駆るのは、最近流行の柿色っぽいジャガーC-X75だ。バチカン市国のサンピエトロ大聖堂に向かう大通りを疾走し、テレべ川の河川敷に入ってもフルスロットルで爆走する。
こちらのジャガーも実は市販されたものではなく、数台のプロトタイプしか生産されなかったレアアイテム。ということはつまり、本作最大のカーアクションの主役2台ともに、どちらもこのシーンでしかお目にかかれないことになる。車ファンは、そのつもりでご堪能くださいませ。
その他の登場車をあげると、雪のスイス山岳地帯で展開する車とヘリのチェイスではレンジローバー スポーツSVRとディフェンダー・ビッグフィットが大活躍。こちらを運転するのは敵キャラで、ヘリがボンド。
アフリカの砂漠地帯でボンドと、今回のボンドガール、マドレーヌ・スワン(レア・セドゥー)を出迎えるのは、ボンド曰く「1948年ロールスロイス、シルバーレイス」という美しいクラシックカー。
その車が、地平線の彼方から徐々に近づいてくるシーンは、まるで『アラビアのロレンス』のオマー・シャリフ登場シーン。美しく優雅かつミステリアスで、監督のサム・メンデスの遊び心なのだと思う。
ボンド映画のお約束のひとつ、世界各地を謎解明のために走り回ったのち、ロンドンに戻って来たボンドが乗るのは、MI6の公用車であるジャガーXJ。この車に乱暴に突っ込んでくるのは、真っ黒に塗り替えられたトヨタのハイラックス。
そして、最後の最後に登場するのは、あのアストンマーティンDB5。前作で木っ端みじんにされ、ステアリングだけは残ったと言われた車が、(おそらく)Qの手で見事に甦り、ボンドが再びハンドルを握るのだ。
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