ヤリスHVがノートとフィットHVよりリッター6km以上も燃費がいい理由

■ヤリスHVが好燃費を叩き出せるワケ

ヤリスハイブリッドXのWLTCモード燃費は36.0km/Lと国産車NO.1。市街地モードは37.5km/L、郊外モードは40.2km/L、高速モードは33.4km/L。全てのモードでライバルを圧倒する
ヤリスハイブリッドXのWLTCモード燃費は36.0km/Lと国産車NO.1。市街地モードは37.5km/L、郊外モードは40.2km/L、高速モードは33.4km/L。全てのモードでライバルを圧倒する

 ヤリスハイブリッドが脅威の燃費をマークできる理由はいろいろある。まずはパワーユニットの燃費への追求ぶりが凄い。

 1.5Lエンジンでも3気筒としたことで、1気筒あたりのストロークが増えて熱効率を高めやすくなるだけでなく、軽負荷時にはアトキンソンサイクル(吸気バルブのタイミングを調整して、吸気量を抑える)がより有効に使えることになっていることも大きい。

 トヨタのダイナミックフォースエンジンは、F1GP参戦のノウハウまでフル導入して、徹底的に作り込まれている。

 ピストンの作り込みなど量産のコンパクトカーとしては信じられないほどの細工や仕上げが施されているのだ。ハイブリッド用に最適化した仕様は、3気筒エンジンとしては世界最高の41%の熱効率を誇る。

 よほどたくさん売れなければコスト面でも見合わないが、4気筒2Lエンジンと基本設計を共にしたモジュラーエンジンであり、なおかつ膨大な生産量によるスケールメリットでコストを吸収しているのだ。

ノートe-POWER、FのWLTCモード猿臂は29.5km/L。市街地モードは29.9km/L、郊外モードは32.6km/L、高速モードは27.6km/L。モーターのみの走行となり、走行感覚はほぼEVだ
ノートe-POWER、FのWLTCモード猿臂は29.5km/L。市街地モードは29.9km/L、郊外モードは32.6km/L、高速モードは27.6km/L。モーターのみの走行となり、走行感覚はほぼEVだ

 日産ノートも1.2Lの3気筒エンジンを採用しているが、こちらは基本設計が古く、まずまずの熱効率のエンジンを上手に制御して、モーターとPCUを改良することで燃費性能を高めている。車格的には1クラスは上となり、車重も200kg近く重いのだから、そもそも勝負にならない。

 日産は先代のノートe-Powerのヒットから、より上質で快適な電動車へとステップアップさせて価格を引き上げた。これはヤリスハイブリッドとのガチンコ勝負を避け、棲み分けを狙った作戦だ。とはいえ、燃費に特化した「燃費スペシャル」グレードのF(29.5km/L)を抜け目なく用意している。

 一方、ヤリスはハイブリッドでも1060kgという脅威の軽量ぶり。しかも走りを一切犠牲にしないTNGAプラットフォームによって達成している。クルマとしての素性の良さと、リダクションギア機構付きのTHSIIを専用開発したことで実現したものだ。

 同じ車格でもフィットは120kgも重く、常に2名の乗員を多く乗せているような状態だ。しかし燃費性能の違いは、そんな表面上のスペックだけが理由ではない。

フィットe:HEVベーシックのWLTCモード燃費は29.4km/L。市街地モードは30.2km/L、郊外モードは32.4km/L、高速モードは27.4km/L。高速モードのみエンジン走行となる
フィットe:HEVベーシックのWLTCモード燃費は29.4km/L。市街地モードは30.2km/L、郊外モードは32.4km/L、高速モードは27.4km/L。高速モードのみエンジン走行となる

■THSなら全てが好燃費という訳ではない

トヨタが次世代環境技術として開発、投入したのがTHS。世代を重ねるごとに改良が進み、登場から20年以上たった現在に至るまで燃費性能でこのシステムを凌駕するライバルは存在しない
トヨタが次世代環境技術として開発、投入したのがTHS。世代を重ねるごとに改良が進み、登場から20年以上たった現在に至るまで燃費性能でこのシステムを凌駕するライバルは存在しない

 高速走行時、THSはMG1(発電用モーター)が変速機としてエンジン回転と負荷を調整しながら発電機としても働き、その電力でMG2(駆動用モーター)を駆動して、エンジンの負荷を調整している。これが高速走行時にも好燃費を引き出せる秘訣だ。

 しかしTHSを採用していれば、どんなクルマでもたちまち超省燃費なエコカーに仕立てられるとは限らない。

 初代プリウスは冷房を使ってしまうと実燃費が低下してしまうため、12月に発売したというのは結構有名な話だ。

 当時、ガソリン車として省燃費を追求したコンパクトカーのヴィッツ(現在のヤリス)と実燃費では拮抗していたのだから、まだまだ制御もハードも今とは比べ物にならないほどベーシックなTHSだったのだ。

 そんな軽量コンパクトなガソリン車と大差ない燃費性能だったプリウスは、2代目で飛躍的に進化した。元々持っている素性の良さにエンジンの制御、バッテリーのマネージメントを煮詰め、モーターも出力アップ。

 車体の軽量化と空力性能の改善で、実燃費は確実に向上した。最終的にはニッケル水素バッテリーの搭載量を増やしてモーターのアシスト量を増やすことで実燃費をさらに高めたのだった。

 そして3代目からはエンジンを1.8Lに排気量アップ。高速燃費を高めるだけでなく、トルクアップで加速性能を高めて加速時間の短縮(燃料の加速増量の短縮につながる)を図るだけでなく、軽負荷時にはアトキンソンサイクルで実質的な排気量を減らすことで燃費悪化を抑えている。

 車重を100kg増やしても、空力性能とエンジン&モーターの効率アップで燃費を高められたのは、それだけTHSが熟成されたことの証ともいえた。

 ミニバンはそもそも大きく重く、乗員も比較的多い傾向にあるので、燃費性能面では不利なカテゴリーだ。

 さすがにアルファードのようなLサイズミニバンではTHSを採用したハイブリッドでも、リッター12km程度となる状況も珍しくなく、車両価格の差額を燃料代で回収することは難しい。

 それでもどんなシチュエーションでもガソリン車よりも安定して省燃費であることから、ハイブリッド車は人気が高かった。

 また初代ハリアーハイブリッドなどSUV向けには省燃費というだけでなく、パワフルな走りが魅力のハイブリッドという性格にも仕立て上げたこともあった。

 省燃費と走りという相反する条件をクリアするデバイスとしてもTHSを活用したのだ。

 先日、モデルチェンジを果たしたアクアもハイブリッド専用車としてデビューしたが、その内容はヴィッツのプラットフォームに二代目プリウスのパワーユニットを改良して搭載したものだった。

 それでもプリウスより軽量コンパクトな車体に、熟成されたパワーユニットを搭載して、リーズナブルで省燃費なハイブリッド車としたことで大ヒットしたのである。

次ページは : ■トヨタTHSに対抗する切り札を探し続けたライバルメーカー

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