ヤリスHVがノートとフィットHVよりリッター6km以上も燃費がいい理由

ヤリスHVがノートとフィットHVよりリッター6km以上も燃費がいい理由

 日本のコンパクトカー市場は、ヤリスの独走状態が続いている。2021年1~6月は未半期の自動車登録台数(日本自動車販売協会連合会の乗用車ブランド通称名順位)を見ると、トヨタ車が上位5台を独占、TOP10の内7台、TOP15でもその内10台をトヨタが占めている。

 NO.1のヤリスは11万9112台とヤリスクロスが含まれているが、ヤリス単体では6万3842台となり、2位のルーミー(7万7492台)に抜かれて2位になってしまうが、それにしてもノートは7位4万6879台、フィットは2万9686台の13位と、ヤリスの独走状態には変わりはない。

 トヨタ車はなぜここまで売れているのか? トヨタ車が売れている最大の理由はハイブリッド車の燃費のよさではないだろうか。WLTCモード燃費TOP10の内、7台がトヨタ車なのだ。

 トヨタ、日産、ホンダのコンパクトカーのハイブリッドのWLTCモード燃費を比較してみると、ヤリスハイブリッドが36.0km/L、日産ノートe-POWERが29.5km/L、ホンダフィットe:HEVが29.4km/Lと、ヤリスハイブリッドがノート、フィットに6.5~6.6km/Lもの大差をつけているのだ。

 そこで、なぜここまでトヨタのハイブリッドは燃費がいいのか? ヤリス、ノート、フィットの3台を比較し、解説していきたい。

文/高根英幸
写真/トヨタ、日産、ホンダ、ベストカー編集部、ベストカーweb編集部

【画像ギャラリー】日本車の最新燃費トップ10に見る、トヨタハイブリッドの凄さとライバルにある差は何なのか?


■トヨタのハイブリッドはなぜこんなに燃費がいいのか?

36.0km/Lと国内最高の低燃費となるヤリスハイブリッド。高効率の新型エンジンと積極的なモーター走行を組み合わせ世界でも屈指の低燃費を達成。さらに走りにも磨きをかけている
36.0km/Lと国内最高の低燃費となるヤリスハイブリッド。高効率の新型エンジンと積極的なモーター走行を組み合わせ世界でも屈指の低燃費を達成。さらに走りにも磨きをかけている


■WLTCモード燃費 国産車TOP10
●1位:トヨタヤリスハイブリッドX:WLTCモード燃費:36.0km/L、1.5L、直3+モーター
●2位:トヨタアクアB:WLTCモード燃費:35.8km/L、1.5L、直3+モーター
●3位:トヨタプリウスE: WLTCモード燃費:32.1km/L、1.8L、直4+モーター
※A、Aプレミアム、Sは30.8km/L
●4位:トヨタヤリスクロスハイブリッドX:WLTCモード燃費:30.8km/L、1.5L、直3+モーター
●5位:トヨタカローラスポーツハイブリッドG:WLTCモード燃費:30.0km/L、1.8L、直4+モーター
●6位:日産ノートe-POWER F:WLTCモード燃費:29.5km/L、1.2L、直3+モーター
●7位:ホンダフィット e:HEV ベーシック:WLTCモード燃費:29.4km/L、1.5L、直3+モーター
●8位:トヨタカローラセダン/ツーリングハイブリッド・S、G-X:WLTCモード燃費:29.0km/L、1.8L、直4+モーター
●9位:ホンダインサイトLX:WLTCモード燃費:28.4km/L、1.5L、直4+モーター
●10位:トヨタカムリX:WLTCモード燃費:27.1km/L、2.5L、直4+モーター

 まずはWLTCモード燃費ランキングTOP10の表を見てほしい。TOP10の内、7台がトヨタのハイブリッド車だ。WLTCモード燃費NO.1はヤリスハイブリッドの36.0km/L。

 7位のフィットは29.4km/Lと、同じコンパクトカーのハイブリッドなのに6.6km/Lもの大差をつけられてしまった。

 先々代へと戻ったようなデザインのテイストが、目新しさを求める消費者には響かなかったという好みの問題もあるだろう。

 しかしハイブリッド専用車となったノートがそれ以上に売れていないのは、実質的な価格の高さと29.5km/L、燃費性能で負けていることが大きい。

 つまり、燃費性能の高いハイブリッドでもトヨタと、それ以外では明らかに燃費性能のレベルが異なるのである。

 シリーズハイブリッドの弱点は高速巡航時の燃費が伸びないことだ。エンジンにとって程良い負荷の状態が続けられるのがシリーズハイブリッドの利点だが、高速道路での巡航は空気抵抗が大きくモーターの負荷は郊外を走行するよりも大きくなるためエンジンの燃費の目玉を超えて発電することになるからだ。

 ホンダの2モーターハイブリッドe:HEVは、高速巡航時にはエンジンの駆動力で走行するが、それでも固定ギアでは、速度や勾配の変化によるエンジン回転や負荷の変化を吸収しにくい。中程度の負荷ではエンジン走行を行ない、回生充電でバッテリーに電力を蓄え、加速時にはモーターでアシストする。

 トヨタTHSのように、エンジンの駆動力を分割し走行しながら発電することも構造上は可能だが、ギア比が固定では負荷が小さい時ではEV走行のほうが効率が良く、高負荷になった時にモーターでアシストしようとしても、そのぶん、発電によってエンジンの負荷が高まれば、実際の燃費には貢献しにくいだろう。

 クルマの人気に直結するカタログ燃費がWLTCになって、高速燃費が重視されるようになったことが、大きく影響している。

 アイドリングストップの効果が薄くなり、中~高負荷の走行が増えたからだ。これによって実燃費との乖離も減少し、ユーザーにとってはクルマ選びで燃費を比較しやすい環境が整えられてきた。

 従来はJC08モードのカタログ燃費であり、燃費スペシャルと呼ばれるほど実際には使い道のないグレードを設定してカタログ燃費を追求したために、表面上は燃費性能の差が目立ちにくかった。

 それに乗用車の燃費が全体的に向上していくことで、少しくらいの燃費性能の差は許容範囲として、その他の満足度を重視するユーザーも増えた。けれどもさすがに2割以上も差が付けば、よほど他の部分に魅力がなければ、燃費性能に優れたクルマを選ぶのはユーザーなら当然の行動だ。

次ページは : ■ヤリスHVが好燃費を叩き出せるワケ

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