ニッポンのスポーツカーの最高到達点と外車スポーツカーを超えられない壁

■海外では新興ブランドによるスーパースポーツの販売が成功を収めている

VWグループとリマック・グループが合弁会社を設立。その株式45%ぶんをVWがグループ企業のポルシェに譲渡。リマックが新会社の株式の55%を取得し、新社名はブガッティ・リマックとなった。そのリマックが開発したのが1914psのネヴェーラ(左下)
VWグループとリマック・グループが合弁会社を設立。その株式45%ぶんをVWがグループ企業のポルシェに譲渡。リマックが新会社の株式の55%を取得し、新社名はブガッティ・リマックとなった。そのリマックが開発したのが1914psのネヴェーラ(左下)
2021年7月に発表されたアストンマーティンヴァルハラ。ヴァルハラは、ヴァルキリー、ヴァルキリーAMRプロに続く第3のミドシップハイパーカーでレッドブル・アドバンスト・テクノロジー社との共同開発したもので、750psの4L、V8ツインターボエンジンにフロントとリアに2基のモーターを搭載し、システム出力950psのパワーを得ている。0221年7月から生産開始し、2022年の販売を予定している
2021年7月に発表されたアストンマーティンヴァルハラ。ヴァルハラは、ヴァルキリー、ヴァルキリーAMRプロに続く第3のミドシップハイパーカーでレッドブル・アドバンスト・テクノロジー社との共同開発したもので、750psの4L、V8ツインターボエンジンにフロントとリアに2基のモーターを搭載し、システム出力950psのパワーを得ている。0221年7月から生産開始し、2022年の販売を予定している

 方やヨーロッパやアメリカ、そして中国でも、様々な高性能モデルが次々に発表されている。もちろん幻となるブランドやモデルも多いがその一方で、パガーニやケーニグセグのように一つのビジネスとして成立する新興ブランドもある。

 ブガッティ&リマックのようなダイナミックなコラボレーションも実現するし、そもそもフェラーリやランボルギーニ、マクラーレン、ポルシェといった有名ブランドが競って驚くべき高性能車を企画、開発し市販に移している。

 さらにはアストンマーティンのような老舗ブランドが、ミドシップスーパーカーブランドへ変貌するというチャレンジもある。日本とはずいぶんと違った“現実”があるではないか。一体なぜか? それが文化の違いというものなのか?

 注意深い読者なら、すでに勘付いておられることだろう。スーパーカーやハイパーカーに代表される高性能車は、あくまでも“小さな会社”から発表されている、と。ポルシェやフェラーリを小さな会社と呼ぶには抵抗があるかもしれないけれども、数百万台規模の大メーカーからすれば、たとえグループ会社であったとしても、独立した小さな組織に過ぎない。

 大メーカーには、開発する技術は十分にあっても市販化にあたっての障壁があまりにも多すぎるのだ。そう考えると欧米のジェネラルブランドが過去に企画したスーパーカーもまた幻に終わっている場合が多い。

 かのフェルディナント・ピエヒをもってしても、16気筒エンジンをミドにおいた超高級高性能車という自らのアイデアを実現するために、ブガッティという別のブランドを買って用意しなければならなかった。VWバッジではダメなのだ。

F・ピエヒVW会長の肝いりで計画されたVWのスーパーカー、W12ナルド。2001年の東京モーターショーで世界初公開。600ps/63.3kgmを発生する6L、W12気筒エンジンを搭載し、イタリアのナルドサーキットにて10の世界記録を打ち立てた。結局、市販化されることなく、W12エンジンはフェートンに採用されることになる
F・ピエヒVW会長の肝いりで計画されたVWのスーパーカー、W12ナルド。2001年の東京モーターショーで世界初公開。600ps/63.3kgmを発生する6L、W12気筒エンジンを搭載し、イタリアのナルドサーキットにて10の世界記録を打ち立てた。結局、市販化されることなく、W12エンジンはフェートンに採用されることになる

■大メーカーにはスーパースポーツの生産、販売は簡単にはできない理由

 要するに大メーカーだからこそ容易にはできない。理由は簡単だと筆者が書いた所以だ。この手のスーパーカービジネスは小さな会社にこそ最も適しており、ジェネラルブランドには難しいということを再確認してみたいと思う。

 最初に挙げる理由は、ブランドで売る商売であるからだ。カスタマーはクルマと同時に物語を手に入れるために大枚を叩く。物語とは歴史であり、伝統だ。それを買うためには合理的ではない、むしろ感情的に大きな理由が必要で、それがブランド力というものだ。

 VWバッジに3億円は払えないけれど、ブガッティなら払っていいという感覚で、だからこそ新興ブランドは難しく、筆者がパガーニやケーニグセグを評価する理由もそこにある。童夢もジオットも、そうなるチャンスはあったのだが。

 次に、一つのモデルに懸ける熱量の違いがある。新興ブランドにとってはそれが生命線であり、成功したブランドにとっても手間隙惜しまず数少ないチャンスをモノにするためのトップ以下一丸となっての尽力が必要で、ジェネラルブランドには決定的に欠けている、というか、そういう組織ではないからこそ、フルラインナップがあって全て成功しなくても成立するからこそ、数百万台規模のジェネラルなブランドなのだ。

 関連して、そのクルマの面倒を一生見るという情熱の違いである。手間暇かけたモデルである。種類だって少ない。それに一度囲い込んだカスタマーをそう易々とは他に奪われたくはない。少なくとも顧客としてずっとつなぎ止めておくためには、どんなに古くなっても面倒をみるという情熱がトップ以下に必要だ。成功したブランドが軒並み、クラシックカービジネスに積極的なことは言うまでもない。

 その裏腹として、クルマのクォリティや耐久性を求めるレベルの違いがある。実を言うと、生産量の少ないモデルは、耐久性などに劣る場合が多い。だからこそ面倒を見続ける必要がある。それがさらにブランドロイヤリティを高め、新たなビジネスを生むと言う構図だ。

 今、メルセデス・ベンツがハイパーカーの最後の仕上げに苦労しているのもそこだろうし、トヨタがGRハイパーカーを一旦諦めた理由もそのあたりだろう。フェラーリやランボルギーニのシリーズモデルがトヨタやメルセデス・ベンツの保証する耐久性能や機能をクォリファイしているとは思えない。

 そのほかにも、例えばサービスやメンテナンスひとつにとっても、数少ないクルマでもそのバッジをつけている限り全世界の正規ディーラーで面倒をみる必要がある。

 となればその準備費用、マニュアルを用意するだけでも莫大な費用がかかる。日産がGT-Rの販売をパフォーマンスセンターに絞るというのも肯けよう。かくして、ジェネラルブランドにはこの手の少量生産モデルを世に送り出す前に立ち塞がる障壁が多いというわけだった。

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2021年9月14日に発表されたGT-R、2022年モデル。写真は100台限定抽選販売のGT-R Premium edition T-spec。次期GT-Rは2023年早々にも登場すると言われているが……
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