■ターボ技術の進化により衰退
2000年初期までは、国産スポーツカーのエンジン出力は、最高280psであった(ノーマルでもそれ以上が出ていたスポーツカーもあったが)。
メーカーの自主規制という影響もあるが、FF車の場合だと高くても200ps程度、FRでも250ps程度が、シャシー性能(主にタイヤ性能が影響大)のバランスと、丁度良い塩梅で釣り合っていたように思う。
だがその後、技術の進化によって、シャシー性能が飛躍的に向上する。特にスポーツモデルでは、幅広のハイグリップタイヤを標準装着するようになってから、コーナリングスピードが上がり、エンジンに対して、更なるパワーアップが求められるようになった。
だが、エンジンパワーを上げるには、エンジンに取り込む空気の量を増やすほかにない。そのためには、エンジンの排気量を上げるか、過給機などを付けるか、の2択となるが、大排気量エンジンは、本体重量やレイアウト、環境面で時代にそぐわない。
さらに、かつては「環境に悪い」とされていたターボ技術が、「ダウンサイジング過給」というコンセプトで2000年代中盤より見直され、環境(燃費)対応のキーテクノロジーとして復活することに。
センシング技術の進化もあり、緻密なエンジン制御ができるようになったことで、低中回転でのパワーアップと、環境性能共に、大きく改善した。
その結果、排気量はそのままで、ハイパワー化はターボで実現する方向へと、多くの自動車メーカーが向きを変えたのだ。そして今や、シビックタイプR(FK8)のVTECターボのように、今や2リッタークラスのターボエンジンでも、300psを余裕で超えるエンジンもある。
高回転型NAエンジンは現代求められる環境性能にそぐわず、パワーアップはターボ化で解決できてしまったため、不要なのだ。
現存する大排気量スポーツエンジンは、フェアレディZ(Z34)用の3.7L エンジン(VQ37VHR、最高出力336ps/最大トルク365Nm、レッドゾーン7500rpm。なおNISMO仕様は355ps/374Nm)。
レクサスRC350の3.5L(2GR-FKS、318ps/380Nm、レッドゾーン6750rpm)。
RC F/LC500の5.0L V8(2UR-GSE、477ps/540Nm、7200rpm)などだ。
いずれも高額車に搭載されていることからも分かる通り、大排気量NAエンジンは、非常に贅沢なエンジンである。
■かつてのVTECのようなNAエンジンはもう見られない
スポーツカーを売るうえで、もっとも大切なのが、分かりやすいパフォーマンスだ。購入者が実際に試すことがないにしても、0-400m加速や、サーキットのタイムアタックなどは、ポテンシャルの高いスポーツカーを所有する、大きな動機となる。
GT-RやシビックタイプRが、ニュルブルクリンクでタイムアタックに挑むのは、スポーツカーにとって絶好のアピールチャンスであるからだ。
かつては、新車開発でニュルブルクリンクのサーキットを利用する目的は、ラップタイムの速さよりも、車体やパーツの耐久性を確認する場であったはずだが、いつの間にか、タイムを競う場所になってしまった。
そうなると、今後もモアパワーは避けられず、クルマの軽量化、環境性能、なども加味すれば、ダウンサイジングターボエンジンは、必須のアイテムとなり続けるだろう。かつてのVTECのような強烈なNAエンジンの復権は、残念ながら期待できない。
可能性があるとすれば、NA高回転型の水素燃焼エンジンだ。実現できたならば、どんなに楽しいだろうか。できることなら、生きているうちにそのようなクルマが登場してくれることを期待している。
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