最近、クルマを運転していると、自転車に遭遇する機会が増えたと感じないだろうか? そして、その時に「このチャリンコ、じゃま!」と憤ることもあるに違いない。ただしそういった思いをしているのは自転車側も同じで、両者相容れない部分が少なからずあるのだろう。
そこで今回は、クルマも乗るけど自転車も乗ることも多いクルマライターが、日頃感じていることを”自転車目線”でレポート。自転車に乗らない人にはわからないその心情とは? クルマも自転車も道路交通法ではお仲間なので、お互いを思いやって安全を心がけたいところだが……。
文/フォッケウルフ
写真/フォッケウルフ
■昨今、道路に自転車が増えている理由とは?
新型コロナウイルスの感染拡大は、社会のシステムや人々の生活に多大な影響を及ぼし、世の中にさまざまな変化をもたらした。そのひとつとして、感染リスクが避けられる可能性が高いという理由から、(特に都市部において)通勤手段を公共交通機関から自転車に切り替えた人が多かったことが挙げられる。
さらに、ロードバイクやクロスバイクといった趣味性の高い自転車がポピュラーになって、自転車が実用品ではなく嗜好品となったことも、道路に自転車が増えた要因と言えるだろう。事実、自転車販売市場は2020年度に2100億円超という過去最高を更新するなど好調に推移。自動車業界は若年層におけるクルマ人気の低下や、カーシェアの普及、部品供給が滞って生産台数に歯止めがかかっているなど、もっぱら苦戦を強いられているというのに……。
以前なら、主な自転車の使われ方というのは、近所での買い物や子どもの送り迎え、通勤通学時の自宅と最寄駅の往復といった短距離が主流で、クルマの交通量が比較的少ない道を走ることがほとんどだった。しかし、会社まで一気に自転車で通うとなると、必然的に交通量が多い大通りを走ることになる。しかも自転車は道路交通法上「車両」に位置付けられているので、原則として歩道と車道の区別があるところでは車道を通行するのがルールとなる。
ただいかに自転車が増えたとはいえ、車道を走っている台数はクルマのほうが圧倒的に多く、そこは”クルマ優先の場所”といった空気に支配されているのが実情だ。そのような道路状況下では、クルマを運転するドライバーのなかには、自転車に対して「あのチャリ、くっそジャマだなぁ」などという悪意のこもった思いを持つ人がでてくることになる。
■クルマと自転車との残念な行き違い
かくいう筆者も自転車乗り(クルマも所有)だが、自転車が邪魔者扱いされることにまったく異論はない。本来、自転車には、
①車道が原則、歩道は例外
②車道は左側を通行
③歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
④以下の安全ルールを守る
・飲酒運転は禁止
・ふたり乗りは禁止
・並進は禁止
・夜間はライトを点灯
・交差点での一時停止と安全確認
・信号を守る
⑤子どもはヘルメットを着用
といった「自転車安全利用五則」というものが設けられており、多くの自転車乗りがこれを厳守している。
しかし、なかには「歩道を我が物顔で走る」、「車道を堂々と逆走する」、「軽車両なのに歩行者と勘違いしている」などなど、マナーの悪い自転車乗りが一定数存在して問題となっているのは事実。なおかつ、自転車が関わる交通事故発生状況が増加傾向にあることを踏まえると、嫌われてもしょうがないか……と思うこともある。
とはいえ、先述した原則がある以上、たとえ邪魔者扱いされても自転車は車両としてクルマと共存せねばならない。特に車道を走ることが多いロードバイク乗りは、先述した自転車安全利用五則を守るべく、身体をはって車道を走ることの正当性をアピールしている。
それなのに、いまだ自転車が車道を走る乗り物であることを認識していない(または許さない)ドライバーの皆さんからは、煽られたり、クラクションを鳴らされたり、あからさまな幅寄せされたりと、残念な扱いを受けることも少なくない。だからこそ、道路における圧倒的強者であるクルマに乗るドライバーには、もう少し温かい目で自転車乗りを見ていただきたいと切に願うのだ。
ロードバイクはクルマやバイクほど速くはないが、30km/hくらいは普通に出せるため、ドライバーからすると一般的な自転車より速くて、抜こうにも抜きづらい厄介な存在である。自転車側からすれば、そんなことは重々承知している。
しかし、法律で定められているから車道を走っているわけだし、(全員がそうだとは言わないが)歩車分離の信号は車両側が青になってから進むし、一時停止もしっかり止まるなど、クルマと同じルールを厳守している。やむを得ず歩道を走る場合でも、歩行者の皆さんに対してかなり気を使っている。