BMWが「色が変わる夢の車」発表!! 新型iX Flowの革新技術と実用化への課題

カラーチェンジ技術「E ink」とはどのような技術なのか

寒い日にはボディカラーを黒色にして日差しを吸収することで、クルマ自体を温め車内の冷暖房に使うエネルギーを減らすことに繋がる
寒い日にはボディカラーを黒色にして日差しを吸収することで、クルマ自体を温め車内の冷暖房に使うエネルギーを減らすことに繋がる

 このカラーチェンジに使われる技術は、「E ink」だ。電子ペーパーに使われる電気泳動式電子インク技術を応用したもので、ボディ表面のラッピングには、人の髪の太さに相当する直系の何百ものマイクロカプセルが含まれている。

 そのマイクロカプセルの内部の透明な液体に、マイナスに帯電した白色顔料とプラスに帯電した黒色顔料の2種類の電気泳動式粒子が含まれていて、それぞれが上下に集約されている。

 プラスとマイナスがそれぞれ反対の電極へ吸着する原理を利用し、電界に電気を通すと、白色顔料か黒色顔料のいずれかが上部に移動することで、ボディカラーは、「白」か「黒」に変化するというわけ。車両の表面を良く見ると、表面に複雑な幾何学模様が描かれているように見えるが、これらは通電のための回路なのだ。

 シンプルに言えば、ボディ表面に電子ペーパーを張り付けたということだが、フラットな電子ペーパーの機体と異なり、ボディは複雑な形状を持つ。精密に電子ペーパーを張り付ける技術やレーザーカットによる高い切断技術、電源の接続回路などには高い技術を要する。その美しい仕上がりが、魔法のように見事なカラーチェンジを実現しているのだ。

 1台で2つの色を変えられることは画期的で面白みがあるが、同時にエネルギー効率を高めるための技術的なアプローチでもある。あなたは、夏の炎天下に黒いクルマを駐車していて、車内が暑くて大変だったこと、または夏場は白い服装のほうが快適だった経験はないだろうか。

 まさに白と黒の色替えには、その効果を狙ったもので、暑い日は外装を白色にすることで、強い日差しや高い外気温による車内の温度上昇を抑え、逆に、寒い日は、黒色で日差しを吸収することでクルマ自体を温めることを狙っている。つまり、適切な色を選ぶことで、車内の冷暖房に使うエネルギーを減らすことに繋がるのだ。

 その結果、EVの電池を温存し、航続距離を伸ばすことにもなる。この遊び心あふれる技術は、今後のEVが抱えるエネルギーの効率化にも重要な意味を持つといえる。ちなみにE-inkのカラーチェンジの際は、色を変える瞬間のみに電気を使うので、バッテリーへの影響は極めて限定的だ。

愛車のカラーチェンジ技術は実用可能か? 実用化にあたっての課題とは

 現時点では最もシンプルな白と黒に限定されているが、E-inkでは白と黒に赤色もしくは黄色を加えた3色のものに加え、既にカラータイプも実用化されている。カラーは、プリンターのように「マゼンタ」「シアン」「イエロー」の3色で様々な色を作り出す。白には白色顔料が必要なので、別途、「ホワイト」が含まれた4色で構成されている。

 この電子ペーパーを使えば、愛車の色をカメレオンのように変化させることも可能なのだが、問題点もある。それは価格と解像度だ。ボディ全体を覆うには大量の電子ペーパーが必要なうえ、表面の風合いはラッピングのようになり、表面には電気を流す回路も必要となるため、均一な表面とはらない。

 またカラーとなれば、微粒子の集合体なため、解像度や色彩で表面の質感は変化するだろう。さらに傷をつけた際の修復についても色々大変そうだ。

 確立された技術を応用したカラーチェンジだが、クルマへの応用となると、現時点では、まだまだ課題も多い。しかし、用途を絞り込めば、ボディ表面に広告などを表示できるようにもなるため、ビジネスニーズなども期待できそう。

 ただBMWの提案は、非常に面白く夢のあるものだ。気分に合わせて愛車の色を変えたり、天気に合わせて愛車のエネルギー効率を高めたりできたら、凄く楽しいはずだ。このカラーチェンジ技術を、BMWがどうアレンジしていくかも注目したい。

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