単体の販売台数ではヤリス超えの登録車トップ! なぜルーミーはここまで人気車となったのか!?

■販売好調の要因は!? ルーミーの気になる長所と短所

 売れ行きがほとんど下がらない背景には、ルーミーの機能がある。全長は3700mm(カスタムは3705mm)で全幅も1670mmに収まり、最小回転半径も4.6~4.7mだ。混雑した街中や駐車場でも運転しやすい。

 そのいっぽうで全高は1700mmを上まわって車内は広い。後席の頭上と足元には十分な空間があり、後席を格納すると、大容量の荷室になるから自転車なども積める。

 後席側のドアはスライド式だから乗り降りもしやすい。この合理的な造りと、150~200万円という求めやすい価格帯により、ルーミーは好調に売られている。

ルーミーのベースモデルであるダイハツ トール。スーパーハイトワゴンブームに危機感を抱いたトヨタ/ダイハツが開発したモデルだ
ルーミーのベースモデルであるダイハツ トール。スーパーハイトワゴンブームに危機感を抱いたトヨタ/ダイハツが開発したモデルだ

 そしてルーミーの外観と機能は、絶好調に売られているホンダ N-BOX、スズキ スペーシア、ダイハツ タントといった軽自動車のスーパーハイトワゴンに似ている。これもルーミーが人気を得た理由で、開発の目的も、軽自動車のスーパーハイトワゴンに対抗することだった。

 2014年には先代(初代)スズキ ハスラーの登場もあってスズキの軽自動車が売れ行きを伸ばし、ダイハツと激しい販売合戦になった。同年には国内で新車として売られたクルマの41%が軽自動車になり(2021年は37%)、コンパクトカーからN-BOX、スペーシア、タントに乗り替えるユーザーも増えた。

 そこでトヨタの判断により、ダイハツが軽自動車造りのノウハウを活用して開発したのが、軽自動車のスーパーハイトワゴンに似たルーミー&タンク(ダイハツブランドはトール/スバルブランドはジャスティ)であった。

 開発の開始時期は軽自動車の販売が急増した2014年だが、急いで投入しないと、軽自動車のスーパーハイトワゴンが売れ行きをさらに伸ばしてしまう。そこで約2年という短期間で開発を終えて、2016年に発売した。

 そのためにDNGAの考え方に基づく新しいプラットフォームは間に合わず、直列3気筒1Lエンジンを含めて、パッソ&ブーンのメカニズムをベースに開発された。

 ただしルーミーは、パッソ&ブーンに比べて全高が約200mm高く、車両重量も約200kg重い。短期間で開発された影響もあり、動力性能、走行安定性、操舵感、乗り心地、ノイズなど、さまざまな性能に不満が生じた。後席も居住空間は広いが、座り心地は柔軟性が乏しく、足を前側に投げ出す座り方になりやすい。

 それでも販売が好調なのは、前述の運転のしやすさ、自転車などの積載性など、実用的な魅力が備わるからだ。価格帯もヤリスの1.5Lノーマルエンジンを搭載するグレードと同等で、軽自動車のスーパーハイトワゴンと比べても、15~20万円の上乗せに収まる。ルーミーは買い得度も強く、人気の要因になった。

■購入する時のポイントは? ライバルと比較してのルーミーの強みと課題

 前述のとおり走行性能は今の水準では低いが、街中を時速50km前後で走るなら、乗り心地の硬さを除くと気になるところは少ない。後席の座り心地の不満も、チャイルドシートを装着する使い方なら払拭される。

 それよりも軽自動車のスーパーハイトワゴンではなく、コンパクトカーになることのメリットが際立つ。自宅周辺に坂道が多い場合など、900kg前後の車両重量に660ccエンジンを搭載する軽自動車のスーパーハイトワゴンに比べれば、ルーミーはパワー不足を感じにくい。

 また今の軽自動車は安全性を向上させて、小型車と遜色はなくなったが、それでも小型車のほうが安心できるユーザーは多い。

トヨタ ルーミー車内(Gグレード)。走行性能は高いとは言えず乗り心地も多少不満は残るが、街中を走る分には気にならない
トヨタ ルーミー車内(Gグレード)。走行性能は高いとは言えず乗り心地も多少不満は残るが、街中を走る分には気にならない

 都市部における販売店の数も影響した。タントを扱うダイハツ、スペーシアを売るスズキの販売店は、軽自動車の普及率が低い都市部には少ない。N-BOXのホンダは都市部の出店も多く販売も好調だが、店舗数は約2200箇所だ。トヨタは2倍以上の4600箇所だから、ルーミーは全国のどこでも購入しやすい。

 つまりルーミーは、絶大な人気を誇る軽自動車のスーパーハイトワゴンを何らかの理由で選びにくいユーザーにとって、購入しやすい小型車になっている。しかも今の日産やホンダには、200万円以下で購入できるコンパクトなスーパーハイトワゴンがないから、需要がルーミーに集まった。

 唯一のライバル車はスズキ ソリオで、2021年には4万4713台を登録している。スズキの小型車では最多販売車種だが、前述のとおりスズキの店舗数は都市部では少ない。ブランドイメージも軽自動車が強い。そのためにソリオの売れ行きは、ルーミーの33%に留まった。

 それでもルーミーを買う時は、販売店の試乗車を使って、ソリオと乗り比べたい。ルーミーの欠点とされる走行性能、乗り心地、後席の座り心地などは、設計の新しいソリオのほうが優れているからだ。

ルーミーのライバル車といえるスズキ ソリオ。スズキには軽自動車のイメージが強いため小型車のソリオの売れ行きはルーミーほどではない
ルーミーのライバル車といえるスズキ ソリオ。スズキには軽自動車のイメージが強いため小型車のソリオの売れ行きはルーミーほどではない

 ソリオは車両重量も1000kg前後に収まり、ルーミーに比べて80kg前後は軽い。マイルドハイブリッドも採用され、ソリオは動力性能に余裕のある1.2Lエンジンを搭載しながら、燃費性能も少し優れている。

 このようにソリオには有利な機能が多いが、ルーミーでは、荷室の床を反転させると汚れを落としやすい素材が貼られている。タイヤの汚れた自転車を積んだ後の手入れもしやすい。収納設備も含めて、ルーミーは実用性の高さが特徴だ。

 価格は機能や装備と照合すると、両車ともに同程度になる。ライバル同士とあって、互いに買い得度を分析しながら価格を決めており、大きな差は付かない。

 ルーミーのグレード選を選ぶ時、価格の安さを重視するなら、標準ボディのG(174万3500円)を推奨する。前述の通り価格はヤリス1.5Gと同等で、LEDヘッドランプや両側スライドドアの電動機能などを標準装着する。

 しかし予算に余裕があるなら、カスタムG(191万4000円)を選びたい。標準ボディのGに比べると、エアロパーツ、アルミホイール、電動パーキングブレーキ、車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を抑えるアダプティブドライビングビームなどを加えた。

 これらを価格に換算すると、少なくとも22万円に達するが、標準ボディのGと比べた時のカスタムGの価格上昇は17万500円に抑えた。カスタムGは買い得グレードとあって、販売面ではルーミー全体の40%近くを占めている。

 なお販売店によると「ルーミーの納期は約2カ月」とのこと。今は全般的に納期が長いから、2カ月なら短い部類に入る。それでも商談は早めに始めたい。

【画像ギャラリー】発売から5年でとうとう実質トップの売り上げに!! 2021年に13万台以上を販売したトヨタ ルーミー(11枚)画像ギャラリー

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