■「内燃機関への賛辞」の主役がウルスに任されている!?
では残る1モデルは何だろうか。これもやはりウルスだ。ウラカンペルフォルマンテやアヴェンタドールSVJのウルス版というべき高性能限定バージョンを追加する可能性は大いにあると思うが、どうか。
希望的観測をすれば、彼らが常に言及する「ヘリテージとの整合性」をそれこそウルスにも適用し、12気筒を積んでいた過去のSUV、LM002に倣ってベンテイガ用W12ツインターボを積んだスペシャルモデルに期待したいところ。
ウラカン最終とは違って、ウルスはまだモデルライフ半ば、派手な仕様が出てきてもおかしくない。
これぞウルスにおける「内燃機関への賛辞」となるではないか!
■「ランボルギーニは内燃機関に乗っとけ!」と言える3つの理由と内燃機関への賛辞
というわけでラインナップの全電動化を前に、最後の最後までピュアな内燃機関モデルにこだわり、クルマ好きを盛り上げてくれそうなランボルギーニだが、彼らの作る「ピュアなエンジンカー」はエキサイティングな経験に満ちていると知っているだけに、それが「今年で最後」となるのは惜しいかぎり。
できるならば今のうちに、否、全ラインナップがPHEVとなってからでも社会が許すかぎり、クラシックモデルでもいい、一度はランボ製ピュア内燃機関モデルを試してみて欲しいと思う。
ウルスのV8ツインターボはグループ共有エンジンとはいえ最も過激であり、乗ればよくあるV8のイメージとはまるで違ってクルマ好きを虜にするエンジンフィールと力強さに満ちている。2.5トンの車重をまるで感じさせない加速性能の凄まじさに初体験では思わず身がすくんだ。
それでいて普段の扱いはたやすく、ごく低速の走行も無難にこなす。そのオールマイティさも魅力だ。
自動車史においておそらくは最後になるであろうV10自然吸気も味わっておくべきエンジンだ。ピエヒの愛した5気筒エンジン最後の縁者。サウンドは独特で、V8ともV12ともまるで異なっている。
暴力的ではないが、中回転域から力強く回り、パワースペック以上のファストフィールをウラカンにもたらした。
そして問答無用の12気筒だ。シアンには実はモーターがすでに付いているのだが、バッテリー駆動ではなくスーパーキャパシタを動力源とするもので、あくまでもシフトアップ時のトルク落ちをカバーしつつ加速をアシストするものだった。
高速域では完全に自然吸気エンジン頼りとなるシアン (そして新型カウンタックも然り) の走りもまたV12 NAらしさに満ちていた。
■スーパーカーの乗り手も世代交代する
おそらく次世代のPHEVとなっても12気筒エンジンの素晴らしさを味わうことはできるだろう。けれどもバッテリー搭載による重量増は避けられない。
ヴィンケルマンCEOは「パワーウェイトレシオ(PWR)」信者だから、おそらく、システム総合出力を大幅に上げることでPWRを史上最強に「引き下げ」てくるに違いない。絶対性能でアヴェンタドール、否、シアンさえ上回ってくるはずだ。
それでも重量増によって失われる物理的な魅力はあるだろう。
それは、あたかも12気筒エンジン「のみ」を背負って自由自在に走っている、もっと言えば12気筒エンジンそのものにまたがって走っているような感覚、CFRPモノコックボディを得たアヴェンタドールに初めて試乗した時に感じた12気筒エンジンの精密な回転フィールとそれにシンクロする一体感と躍動感にあふれる走りだ。
アヴェンタドール後継モデルの走りは、おそらくミニブガッティのようなフィールになるのではないか。それはそれでスーパーカーらしい。けれどもすでにエンジンそのものを味わうようなものではない可能性が高い。
なぜならスーパーカー界はいち早く、環境騒音問題とカスタマーモティベーションの両方の理由からエンジンを捨てる可能性があるからだ。
バッテリーを積むとはいえ、エンジンがメインの原動力であり続ける次世代モデル群にあっても、プラグインハイブリッド化は事実上、エンジンを捨てる第一歩となることは間違いないと思う。未来への扉が開くというわけだ。
そしてそれは、スーパーカーの乗り手における世代交代をも意味する。
つまり、V8、V10、V12という3つのピュアエンジン車が揃い踏みする現行ラインナップこそ、20世紀からのクルマ好きに最も響くスーパーカーたちというわけだった。
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