実はクルマの盗難と同じくらい深刻! 農業用トラクタ盗難の現実とその背景

■どうすれば車両盗難からトラクタやクルマを守れるか

 盗難から車両を守るためには、これまでとは防犯の意識レベルを変える必要がある。そもそも善人説に則って物事を考え定めるのは、もう通用しない時代なのだ。

 外国人も日本に住んでいたら日本の法律やルールを守らなければいけない、というのは十分承知しているが、宗教や民俗的な違いから、犯罪に対する意識が日本人とはそもそも違うことも知っておくべきだろう。

 それに農業用トラクタの盗難では外国人の犯人もいるだろうが、それだけとは限らない。海外にクルマを輸出しているのは外国人だけではないし、前述のようにレクサスやランクルの盗難では日本人が逮捕されている。

 犯人たちは下見に来るから、地方ではよそ者が来ると警戒するので大丈夫、と思われているかも知れない。しかし最近はGoogleのストリートビューで目星を付けて下見を減らしている窃盗グループもいるらしい。クルマで走行しながら動画で周辺を記録して下見としている窃盗団もいるだろう。

 今までは大丈夫だったから、という考え(そもそも危機意識がなかったりする)で、キーを付けっ放しで放置したり、明日も使うからと周囲から丸見えの状態で置いておくのでは、盗んで下さいと言っているようなものなのだ。

屋根は付いているが屋外に置かれたトラクタ。外から見えない場所に置いておくのも大事だ(moonrise@AdobeStock)
屋根は付いているが屋外に置かれたトラクタ。外から見えない場所に置いておくのも大事だ(moonrise@AdobeStock)

 農業機械を製造販売するメーカーも盗難対策を施すようになってきたし、クルマのセキュリティ装置を後付けする業者がトラクタにセキュリティ装置を取り付けるケースも増えてきた。それでも車体をまるごとユニックで吊り上げ、トラックに積み込んでしまう方法に対しては、始動不能にすることでは盗難は防げない。

 キースイッチを壊してエンジンを無理やり始動させるケースもある。そんな方法で盗んだら、元に戻すのが大変だと思われるかも知れないが、それは我々の常識がそう考えさせるだけで、キーなんかなくても何か別のスイッチを適当に付けるだけで機能すれば、構わないと思う人々だっているのだ。

■具体的な防犯手段は、「やりすぎ」くらいが丁度いい?

 農業だけではなく、建設業も同様の被害に遭っている。重機の盗難は海外への輸出だけでなく、それを使ってATMを破壊して現金を盗むという手段に使われているケースも少なくないようだ。

 海外の農業や土木の現場の感覚と、日本の現場の感覚が違う以上、こういう犯罪はなかなかなくならない。少なくとも、鍵を付けっ放しで止めておく、人目につく場所に放置するといった、犯罪を誘発するような行為は、これからは慎まなければならないのだ。

工事現場に置きっぱなしの重機も盗まれやすい(pvl@AdobeStock)
工事現場に置きっぱなしの重機も盗まれやすい(pvl@AdobeStock)

 倉庫や納屋に格納して施錠しても、盗難に遭うケースもある。車輪が回らないように固定する鋼鉄製のバーなども販売されているが、前述のとおり持ち上げて運んでしまうのであれば、あまり抑止力にはならない。

 コンクリートの床にアンカーを打ち、頑丈な鎖と鍵をいくつも掛けてつなぎ止めておくくらいの固定法をとってもいい。大音量の鳴るセキュリティを付ける、防犯カメラをあちこちに設置するなどといった、警戒している姿勢をアピールすることも抑止力としては効果がある。

 農業用トラクタに関しては、農機具共済に加入して盗難時には補償を受けることも損害をカバーすることも防衛手段だが、繁忙期に盗まれてしまったらトラクタの補償だけもらっても損害はカバーし切れない。

 嫌な世の中になったものだと嘆いても仕方ない。監視社会へと移行していることもあり、こうした犯罪も徐々に減っていくかも知れないが、高度化していく可能性もある。自分のモノは自分で守らなければならない時代になったことを意識しなければいけないのだ。

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