年初に千葉県松戸市の劇団からトラックが盗難された。目立つグラフィックが入っていたこともあって、すぐに足取りが特定され、犯人は逮捕された。
外国人の仕業だったことから、「やっぱり」と思った方も少なくないだろう。海外では日本のトラックが人気で、密輸して販売すれば儲けになることから、ハイエースなどとともに盗難されているケースが増えている。
第2世代の日産GT-Rなど、旧車やチューニングカーも盗難されて海外でバラ売りされていた、なんて事件もあった。海外に渡ってしまえば、盗品でも堂々と販売されていることが多く、しかもそれは取り返すことはほぼ不可能だ。
しかも、外国人の仕業だと決めることなんてできない。クルマの盗難件数自体は減少傾向にあるものの、高級車特にレクサスやランクルなどは日本人が窃盗しているケースが多い。
山林から勝手に木を切り出して運んでしまう、盗伐が話題になったことも記憶に新しい。日本人のなかにも、モラルや法令遵守の意識の低い人は増えてしまっているのである。
そして農業用トラクタも近年、盗難の被害が多いモノのひとつとなっている。10年前ほどから話題になることはあったが、特に一昨年あたりから盗難件数が増加しているのだ。今回は農家にとって死活問題ともなり得る、農業用トラクタなどの盗難事情とその背景について迫っていく。
文/高根英幸
写真/AdobeStock(トップ画像=Yoshinori Okada@AdobeStock)、農林水産省、埼玉県警
■前年同月比で2倍にも上る農業用機械の盗難事情
2021年では1月から4月までの4カ月間で栃木、茨城、群馬の3県で65件も盗難事件があった。これは前年同期の2倍にもなる。背景としてはコロナで仕事がなくなった者が盗難して海外に密輸している可能性が高い。国内で使われていたら、足がつくからだ。
日本の農業用機械が高品質で、高い信頼性と耐久性を誇っていることから、盗まれて海外へと持ち出されて転売されているのだろう。前述のトラックも同様で(海外の工場で組み立てられている車両もあるが)、海外で活躍する日本のトラックはさまざまなシーンで見かけるのだ。
日本製のトラックや農業用機械は高品質だが、アジアの他メーカーの製品と比べるとやはり価格は高価になる。
しかし盗品であれば、仕入れはタダ(もちろん流通の過程で金銭は払っているのだろうが)だから、格安で販売しても儲かる。しかも中古品なので安く売っても怪しまれない(そもそも仕入れルートなど気にしない人もいるだろうが)。こうした背景があるから、盗品ビジネスはなくならない。
コンテナに積み込んでしまえば、あとは海外に持ち出すだけ(税関のチェックもX線検査だけだ)だから、盗品を海外で売りさばくルートがある窃盗団にとっては簡単なのだろう。新たな密輸防止の手段を考えることが必要な段階に来ている。
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