■強烈なインパクトを放つデザインで2016年にデビュー
C-HRとカローラクロスは、基本的に同じプラットフォームを使う。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値も、両車ともに2640mmで等しい。パワーユニットは、ハイブリッドシステムは共通で、ノーマルエンジンは、C-HRが1.2Lターボ、カローラクロスは1.8Lを搭載する。
もともとC-HRは、2014年のパリモーターショーに「トヨタC-HRコンセプト」の名称でプロトタイプを出展した。この時点では3ドアボディだったが、2015年のフランクフルトモーターショーには、5ドアモデルに変更して出展されている。2016年にはジュネーブモーターショーで、市販モデルが披露され、日本での発売は2016年12月であった。
C-HRで注目すべきは、各モーターショーに出展されたプロトタイプが、ほとんどデザインを変えずに市販されたことだ。一般的に個性的なプロトタイプは、市販の段階で外観を大きく変えるが、C-HRは個性を弱めなかった。
そのために2016年12月の発売時点では、C-HRは強いインパクトを放っていた。ボディ形状はSUVに含まれるが、既存のカテゴリーに当てはまらない斬新なクルマと受け取られた。
■デビュー当時は今の9倍も売れていた!!
このように注目度の強い新型車が登場すると、好みに合うユーザーは、購買意欲を一気に高める。C-HRも発売直後の2017年1~6月には、1カ月平均で1万3217台を登録した。小型/普通車の登録台数ランキングでは、プリウスとノートに次いで3位に入り、アクアやフリードを上回った。
直近の2021年におけるC-HRの登録台数は、前述のとおり1カ月平均で1508台だから、2017年の前半には今の9倍も売られていた。そこで当時のC-HRの販売が好調で、その後に急落した理由について、改めて考えてみたい。
C-HRが発売直後に売れゆきを急増させた一番の理由は、外観を趣味性の強い個性的なデザインに仕上げたからだ。インパクトの強いクルマは、ユーザーの気持ちとしてスグに手に入れたい。鮮度の高い時に味わいたい気持ちもあるから、今使っている愛車の車検期間が十分に残っていても乗り替える。
軽自動車やコンパクトカーのような実用的な車種は、損失を抑えるために愛車の車検満了を待って乗り替えるが、趣味性の強いクルマは購入タイミングが異なる。その結果、発売直後の売れゆきが急増した。かつて豊富に用意されていたクーペにも、発売直後に売れゆきを伸ばす車種が多かった。
■ニュルブルクリンク24時間レースを走り切った走行安定性
C-HRが好調に売られたふたつ目の理由として、2016年の発売時点から、トヨタの全店で扱ったことも挙げられる。2016年当時のトヨタは、全国に4800店舗以上を構えており、今よりも約200店舗多かった。この販売網で一斉に売られたから、登録台数も急増した。
商品力については、C-HRは走行安定性が優れていた。プラットフォームは2015年に発売された現行プリウスと基本的に同じだが、後輪の接地不足が解消され、SUVながらも安定性を向上させた。開発者は「C-HRはプリウスの登場から約1年を経過して発売されたので、プラットフォームや走りの熟成も進んでいる」と述べた。
全長は4400mm以下だが、ホイールベースは2640mmと長く、カーブを曲がる時などに慣性による悪影響も受けにくい。全高は大半のグレードが1550mmに収まる。このボディ各部の数値も走りの向上に役立った。走行安定性を高めながら、乗り心地の粗さを抑えたことも、C-HRのメリットであった。
サスペンションは、2WD、4WDともに、前輪はストラット、後輪はダブルウィッシュボーンの4輪独立懸架だ。発売時点では、ショックアブソーバーにザックス製を使い、欧州車の運転感覚を連想させた。
開発者に経緯を尋ねると、以下のように返答された。「ザックス製はグローバルに採用されている。このブランドを選んだ理由は、サプライヤーの立地条件や供給体制によるところが大きいが、結果的に優れた足回りに仕上がった」。
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