■リーマンショックや不祥事が続き……立て直しへモータースポーツはリストラの憂き目に
ご存じのとおり、おふたりとも素晴らしい活躍や成果を残す。木全さんが率いるWRCは1996年あたりから優勝争いの常連になり、1998年にシリーズチャンピオン奪取! 篠塚さんも1997年にパリダカで優勝した。
1990年代中盤の三菱自動車の輝き方はハンパなかったと思う。ラリーアートのブランドイメージも世界規模になり、三菱自動車以上の存在だったかもしれません。
絶好調だった三菱自動車ながら、相次ぐ不祥事に続くリーマンショックでガタガタになってしまう。破綻してもおかしくなった経営を立て直したのが、三菱商事から送り込まれた益子前社長だった。
経営手腕に優れ、低空飛行ながら三菱自動車を存続させた功績は非常に大きいと思う。その時のリストラ対象にモータースポーツが入っており、当然ながらラリーアートも含まれる。
トヨタや日産、ホンダはリーマンショックが落ち着くとモータースポーツに戻ったけれど、益子前社長は極端に嫌った。
そればかりか三菱自動車社内にモータースポーツ復活論やランエボを復活させる動きが出始めたと感じるや、2018年にラリーアートそのものを潰し、三菱自動車のWebサイトからモータースポーツの歴史をすべて消させた。「嫌い」というより「憎い」に近かったと思う。
■TASで『VISION RALLIART CONCEPT』発表! だけど不満もちょっとある
業績を見るとモータースポーツから撤退した2010年以降、世界規模で右肩下がりになってしまう。考えていただきたい。自動車という商品は「夢」や「楽しさ」を載せていないと魅力が出ないです。
益子前社長はそういうクルマを買う人の気持ちが理解できなかったようだ。興味深いことに日本では2010年にラリーアートの活動を止めたけれど、世界規模でラリーアートのブランドが残る。
タイのラリーを見ると三菱自動車に乗っている人は皆さん、ラリーアートのステッカー貼ってあるし、ニュージーランドのラリーで走っているミラージュもラリーアートを名乗ってました。実際、ラリーアート復活のワールドプレミアはタイの三菱自動車でしたから。
逆に考えたら、なんで潰したのかまったく理解できない。上手に使っていたらよかったのに、と思います。
そして今年の東京オートサロンで日本も『VISION RALLIART CONCEPT』を発表したのだった。大いにめでたいことながら、ラリーアート好きの自動車評論家は少しばかり納得できない。
ここまで読んでいただければわかるとおり、ラリーアートのDNAはラリー。グラベルから雪道、舗装路まですべての道のチャンピオンを狙うべく生まれた。なのに展示車両を見ると、古くさいローダウンSUVです。
■「もう少し待っててください」本格的な復活に期待!
レクサスだって車高上げたワイルドなSUVをオートサロンで展示していたのに! 思わずラリーアートの申し子と言っていい増岡さん(パリダカで2年連続総合優勝)に文句言っちゃいました。
よりによってローダウンSUVはないでしょう、と。すると増岡さん、「もう少し待っててください。そのあたりはよ~くわかってますから。これから頑張っていきます!」
加藤新体制のもと、三菱自動車の業績は改善に向かっている。株価も上昇し、2022年度決算から株主配当だって復活する可能性が大きくなってきた。こうなるとモータースポーツへのカムバックだってハードルがなくなります。
三菱自動車のブランドイメージ再構築への道が見えてきたと思う。暖かくなる頃には何らかの動きも出てくるだろう。
三菱自動車の本格的な復活に期待したい。
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