最高のメーカースローガンとその象徴 BMW・3シリーズセダン
ドイツ語のFreude am Fahren。「駆け抜ける歓び」と訳されるこの言葉は、BMWを象徴するスローガンだ。このスローガンを忠実に守り、シンボルとして作り続けられているのが、3シリーズである。
トヨタにもクラウンというシンボリックな存在はあるが、メーカーとの一体感は、世代を追うごとに小さくなっているようと感じる。ファン層も少しずつ変化し、クラウンが時代とともに変わっていく姿を目の当たりにしてきた。
3シリーズももちろん、時代の変化に対応し、自身を変えてきたが、根幹にある駆け抜ける喜びは今も持ち続けていると思う。伝統を重んじ、歴史に裏打ちされた確固たる自信をもって販売できるクルマがあるということは、営業マンとしての幸せを感じる瞬間だろう。
BMWのこだわりを最も強く感じるのは、2005年に登場した5代目3シリーズ、E90型だ。自然吸気の直列6気筒エンジンを搭載する最終モデルで、作り上げたエンジニアの想いもひとしおだと思う。
利益を出すためにモノを売るのが営業マンだが、販売するものを通して、作り手と使い手を結びたいという気持ちも持っている。この気持ちを通わせる架け橋になれたとき、売り手として、そこはかとない充足感を得られるのだ。
世代が変わり、名前が変わり、人気車や歴史のあるクルマが数多く消えていくトヨタラインナップと比較して、BMWの姿勢は創業当初から一貫しているように感じる。
良いクルマを作るという点では、日本メーカーも欧州メーカーに負けないクルマづくりができていると思うが、想いのこもったクルマを作るという面では、まだまだ及ばない部分も多い。
3シリーズのように、メーカーの伝統の重さや、ファンの期待を背負ったクルマの販売を続けることが、当時は一つのゴールだと思っていた。
「(他社の)このクルマを作るなら(売るなら)、我々ならどうするだろうか」と常に考えながら製造・販売することは、各メーカーを強く大きくする方法ではないかと筆者は考える。
もしも、商談中にライバル車の話をして、「あのクルマいいですよね、私も売りたいですよ」などと切り返す営業マンがいたら、日本車の未来を明るくするために、その場でじっくりとクルマ談義をしてもらいたい。
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