■カンバン方式やジャストインタイムの弊害か?
トヨタの工場といえば、カンバン方式やジャストインタイム(JIT)という手法が有名だ。トヨタ生産方式の2本柱がJITと自働化であり、そのツールがカンバンである。
簡単に言えば、過剰な生産を行わず、過剰な在庫も持たない。必要なものを、必要な時に、必要なだけ供給することで、ムリ・ムダ・ムラな状態を発生させないというものだ。生産量に対する在庫量が適切に管理される。
部品在庫を持たないことや、綿密なシステム管理が、今回のサイバー攻撃による工場稼働停止を生み出したという見方もあるが、稼働停止の直接的な原因とは結び付かないと筆者は思う。
東日本大震災以降、トヨタの工場における部品在庫の数は増えたと聞く。部品供給がカツカツの状態で作る徹底的な効率化が本来の姿だが、それだけでは有事の際に対応が出来ないと判断したのだろう。一部のサプライヤーから供給が止まっても、数週間は動けるだけの体力を持っているのが、今のトヨタ生産の本質だ。
したがって、今回の小島プレス工業へのサイバー攻撃では、工場を全面停止させるほどの威力は無かったのではないかと考える。しかしながら、不安定な世界情勢を鑑み、日本の工業全体への警鐘を鳴らすために、全面停止という措置を取ったのではないだろうか。
大企業の本体が狙われなくても、下請けや孫請けが攻撃を受け、製造が止まるケースはトヨタ以外にも考えられる。こうした状況が、他の業種、会社に起こらないよう、「気を付けないとダメだぞ」と、意識させたようにも感じるのだ。今回の衝撃的なニュースに、ふんどしを締め直した企業も多いだろう。
大手メーカー以外でも、どこがサイバー攻撃を受けてもおかしくないこのご時世。攻撃を受ける前提で、問題をカバーできる体制をしっかりと作り、企業活動・経済活動への影響を最小限にとどめたいものだ。
【画像ギャラリー】小島プレス工業へのサイバー攻撃の影響を画像でチェック(4枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方